三田祭論文
三田祭論文

慶應義塾大学経済学部
大平 哲研究会
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一畑電車沿線地域における観光の持続可能性

稲石果音、澤田慶一、澁谷武尊、進藤海羽、西村友里

あなたが求める観光はどのようなものだろうか。人気観光地を巡る観光、移動手段を楽しむ観光、行き先を決めない自由な旅など、それぞれの好みにあったスタイルがあるだろう。2000年代以降、観光の形態は大きく変化した。観光庁(2019)によると、主要な観光形態は団体旅行から個人旅行へ変化し、有名観光地を短時間で巡る旅行から、時間をかけて地域を楽しむ旅行への移り変わりも顕著になった。たとえば、北海道、東京、京都、沖縄といった主要観光地ではなく、そこから離れた一地域を訪れ、その地域ならではの自然や人との交流を楽しむ旅行だ。自分の意志にもとづいて、地域の文化や食材、自然などの魅力をゆっくりと楽しむスローツーリズムも、新しい観光形態のひとつである。

島根県には、短時間で巡る観光ではなく、ゆったりと観光するのに適した魅力的な資源がある。そのひとつが、橙色の車体が特徴の一畑電車である。この路線は松江城にほど近い松江しんじ湖温泉駅と、出雲大社に近い出雲大社前駅を結んでいるものの、その間の沿線地域の観光客誘致にはつながっていないことが課題である。一畑電車沿線には、宍道湖や素朴な田園風景などの自然風景、一畑電車駅員との距離の近さなど、都会にはない魅力があまた存在する。沿線地域の持続的な観光を実現するためには、こうした自然風景や、地元住民との身近な交流を通じて、沿線地域全体の周遊に活かす必要がある。

観光の持続可能性を高めるにはリピーターの獲得が有効だ。先行研究での議論を整理すると、リピーター獲得のための要素は3つに整理できる。1つ目は、安達、塩谷(2008)、佐藤、岡本(2011)他があげた、人との交流である。2つ目は、石田他(2015)、廣内(2018)他があげた、おもてなしの向上である。3つ目は、岡山他(2017)、伊豆田他(2018)他があげた、地域ならではの街や自然風景である。スローツーリズムとは、前述したように自分のペースで、地域の人々との交流や地元の食材、自然などの魅力を楽しむ観光形態であるため、リピーター獲得のための3要素を満たすことができる。またスローツーリズムの特徴は、自然風景や住民との交流を身近に感じられる一畑電車沿線と親和性がある。リピーターの獲得について論じているものは多くあるが、それらの要素に対してスローツーリズムを解決策として提示し、それを地域に実際に適応させたものはない。

本稿では、持続性を高めるための3つの要素に対してスローツーリズムが解決策になることを述べ、地域連携DMOの山陰まんなか観光局に一畑電車沿線地域へのスローツーリズム導入を提言する。結論として、一畑電車沿線地域はスローツーリズムによってリピーターを獲得し、観光の持続性が高まることを示す。1節で一畑電車沿線地域の基本情報と観光の課題を取りあげる。2節では、持続的な観光のための3つのリピーター醸成要素や、スローツーリズムの概要について述べる。3節では、人との交流・おもてなし・街や自然風景の3要素の具体的な事例をそれぞれ紹介し、分析する。4節では、3節で分析した各事例を一畑電車沿線地域に当てはめ、山陰まんなか観光局に対して、一畑電車沿線地域におけるスローツーリズムを提言する。
本稿の執筆中、山陰まんなか観光局と定期的にZOOM会議をおこない、お話をうかがいました。その過程で、私たちのスローツーリズム研究にも興味を示してくださいました。現在山陰まんなか観光局では、地元の自然や文化をゆっくり楽しむ体験型プランやコースルートなどが展開されています。
論文のフロー図

目次
はじめに
1 一畑電車沿線地域について
 1-1 一畑電車沿線地域について
 1-2 一畑電車沿線地域の課題
2 スローツーリズムによるリピーター獲得について
 2-1 リピーターによる持続的な観光について
 2-2 スローツーリズムの概要
3 スローツーリズムにおけるリピーター要因の事例研究
 3-1 人との交流の事例
 3-2 おもてなしの事例
 3-3 街や自然風景の事例
4 一畑電車沿線でスローツーリズムをするには
 4-1 一畑電車沿線における人との交流機会の増加
 4-2 一畑電車沿線地域におけるおもてなしの向上
 4-3 一畑電車沿線地域における街や自然風景の活用
おわりに
参考文献

参考文献
ウェブサイト内の資料については、記載されているURLでのリンクを2021年11月17日時点で確認しました。その後、URL が変更されている可能性があります。

三田祭論文作成にあたり、ご協力いただいた 今泉真央子さん、亀井柾貴さん、胡桃澤樹さん、坂田真優さん、橋本栞さんありがとうございました。

本ゼミでの写真です リモートでのサブゼミの様子です
日比谷しまね館に行きました(男性陣は撮影係です) 初の対面サブゼミをしました
東京で出雲そばを食べました 放課後にゆるく話し合ってます

論文全文(ゼミ関係者のみダウンロード可)

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