三田祭論文
三田祭論文

慶應義塾大学経済学部
大平 哲研究会
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認知と共感を通じた倫理的消費の増加

塚越優衣、長峯凌

倫理的消費の時代がやってきた。経済社会の複雑化に伴い、消費者は価格と機能のみを求め、生産の現場に無関心になっている。この状況に問題を感じ、生産者の置かれている環境に配慮した消費をしようという考えのもと生まれたのが倫理的消費である。消費者庁(2017)は、持続可能な生産・消費形態の確保の手段として倫理的消費の必要性を主張しており、国民に広く実践されるべき行動だと述べている。

倫理的消費は認知によって増加する。泉水(2019)は、倫理的消費は計画的行動理論から研究されることが多く、行動に対する態度、主観的規範、実行可能性評価の3要因を高めることが倫理的消費につながると結論づけている。行動に対し積極的な態度をとるには、自分たちの取り組みが問題解決につながると認知することが有効である。主観的規範の意識を強くさせるには、生産者の状況を認知させる消費者教育が重要である。実行可能性評価を高めるには、旬野菜の時期や地域野菜が購入可能であることの認知が有効である。

倫理的消費を増加させるには認知だけでなく生産者への共感も重要である。玉置(2015)は、消費者が社会的な困窮者や貢献者に対して共感することによって、倫理的消費の意欲が増加すると述べている。また、有賀(2019)は社会的なつながりによる共感が、国内の被災地の生産物への購買意欲を高めることを示している。

泉水(2019)、玉置(2015)、有賀(2019)の分析を応用して、体験型民泊の効果を分析する。

本稿では体験型民泊によって、生産に関する認知と生産者への共感が達成されることを示す。農業体験を通じて体験者が農産物を生産する手間やその過程の知識を獲得できる。加えて、自身が体験することで、他者の立場に対する深い理解が生まれ生産者への共感が生まれる。この認知と共感が倫理的消費につながる。

本稿では倫理的消費の増加を目指し、生産に関する認知と生産者への共感が重要であることを先行研究から説明し計画的行動理論で裏付ける。そのうえで消費者が認知と共感を達成する手段として、体験型民泊が有効であることを示す。この結論を導くために1節では倫理的消費の概要、認知と共感の重要性について説明する。2節では体験型民泊によって達成される認知と共感について述べる。3節では認知と共感がもたらす倫理的消費の増加について説明する。

論文のフロー図

目次
はじめに
1 倫理的消費について
 1-1 倫理的消費の概要
 1-2 計画的行動理論を用いた倫理的消費の行動要因
 1-3 倫理的消費における認知・共感の重要性
2 体験型民泊における認知と共感
 2-1 体験型民泊における認知
 2-2 体験型民泊における共感
3 体験型民泊による効果
 3-1 倫理的消費の増加
 3-2 体験型民泊のリピート
おわりに
参考文献

参考文献
ウェブサイト内の資料については、記載されているURLでのリンクを2022年1月13日時点で確認しました。その後、URL が変更されている可能性があります。

三田祭論文作成にあたり、ご協力いただいた浅井海斗さん、内田歌凜さん、北澄拓也さん、 木村誠之さん、長沼杏奈さんありがとうございました。

zoomのサブゼミの様子 焼き芋を食べてます
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農家の方に聞き取り 火おこしの様子

論文全文(ゼミ関係者のみダウンロード可)

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