三田祭論文
芸術祭による地域活性化
川鍋雄大・小松周平・千田直幸・松浦諒人
長野県の北部に位置する大町市は、温泉や湖、四季折々の景観など自然に恵まれ、北アルプス登山の拠点として、また黒部アルペンルートの長野県側の玄関口として多くの観光客でにぎわっている。しかし、全国の地方都市が頭を抱え悩んでいる過疎化・少子高齢化問題に大町市も直面し、打開策を模索している。こうした背景のもと、大町市は2017年6月4日から7月30日にかけ北アルプス国際芸術祭を開催した。この芸術祭は、自然と文化が共生する日本人のライフスタイルを新たに提案するとともに、文化の風薫る地方創成のモデルケースとなること、定住人口が増加することを目指して大町市が開催した。北アルプス国際芸術祭実行委員会事務局(2017)による速報版のデータでは来場者数25万6,450人と公表しており、にぎわいをみせたことが覗える。
芸術祭による地域の活性化をねらった動きは多く、新潟県十日町市・津南町で開催した大地の芸術祭や香川県・岡山県での瀬戸内国際芸術祭、千葉県市原市でのいちはら×アートミックスなどが代表例である。国土交通省が2017年に発表した観光立国推進基本計画では、観光資源の活用による地域の特性を活かした魅力ある観光地域の作成において、アーティストや観光客を国内外から呼び込む国際的な芸術祭の活用を提言している。国際芸術祭は、大きな集客効果と経済効果を併せ持つ地域活性化の手段となる。平野(2011)によると芸術祭は経済効果のみならず、人との交流を通じた地域住民の精神的な活性化にも大きく寄与している。
大地の芸術祭では棚田や豪雪地帯を活かした独特の風景、瀬戸内国際芸術祭ではのどかな瀬戸内海の風景など、地域資源を利用した現代アートによって芸術祭の開催地域には多数の来場者が訪れている。2つの芸術祭にはIターン、Uターンする若者が増えている地区もある。大町市は過疎化・少子高齢化対策への有効な手段としてこのような効果に期待を寄せている。
鷲見(2012)や澤村(2014)は大地の芸術祭が蓄積に寄与したソーシャル・キャピタルについてまとめており、中島(2012)は瀬戸内国際芸術祭後の聞き取り調査から住民の心境の変化を分析している。これらの論文で述べている芸術祭の効果について北アルプス国際芸術祭においても同様の効果をみることができたであろうが、北アルプス国際芸術祭を事例としてソーシャル・キャピタルや地域住民の心境の変化を論じた文献はまだない。
本稿では、北アルプス国際芸術祭の開催地域のなかでも八坂地区に注目し、芸術祭の社会効果を考察する。1節では国際芸術祭のなかでも多数の観光客を呼び寄せた大地の芸術祭、瀬戸内国際芸術祭の2つの事例について開催概要とその社会効果を述べる。2節では北アルプス国際芸術祭の開催概要とねらいについて整理し、俯瞰的な視点から芸術祭の効果を示す。3節では八坂地区の概要、北アルプス国際芸術祭における八坂地区の取り組みを紹介し、取り組みに伴う社会的効果について聞き取り調査の資料をもとに考察した上で、最後に国際芸術祭とソーシャル・キャピタルの関係について述べる。以上をもとに、北アルプス国際芸術祭が地域住民、観光客に大町市の魅力を再発見させ、地域活性化の手段として有効なものであったことを示す。
目次
はじめに
1 国際芸術祭について
1-1 国際芸術祭について
1-2 国内の2つの成功事例
1-3 国際芸術祭の社会効果
2 北アルプス国際芸術祭
2-1 長野県大町市の概要
2-2 北アルプス国際芸術祭の概要
2-3 北アルプス国際芸術祭のねらい
2-4 俯瞰的な視点から見た北アルプス国際芸術祭の効果
3 八坂地区から見た北アルプス国際芸術祭の効果
3-1 八坂地区の概要
3-2 八坂地区の取り組み
3-3 八坂地区における北アルプス国際芸術祭の社会効果
3-4 国際芸術祭とソーシャル・キャピタルについて
おわりに
参考文献
参考文献
ウェブサイト内の資料については、記載されているURLでのリンクを2016年11月16日時点で確認しました。その後、URL が変更されている可能性があります。
三田祭論文作成にあたり、ご協力いただいた入江勇樹さん、加藤英一郎さんありがとうございました。
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芸術祭ボランティアに参加しました
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実はとても重たい竹を運ぶ様子
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竹をハンマーで割る様子
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完成した作品
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長野経済研究所での聞き取り
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フィールドノート作成中
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大町市八坂支所での聞き取り
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美味しいお蕎麦をご馳走になりました
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論文全文(ゼミ関係者のみダウンロード可)
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