三田祭論文
三田祭論文

慶應義塾大学経済学部
大平 哲研究会
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サテライトオフィス誘致による熱海市の活性化

平山理沙・山口耀広・渡邊渓

厚生労働省が毎年発表している人口動態調査によると、日本の人口は2009年から7年続けて減少し、2016年5月時点で1億2,694万人となった。一方、東京都をはじめとする首都圏の人口は増加しており、とくに東京都の人口は、日本の人口の10分の1以上にあたる1,300万人をこえた。東京都の人口増加のペースは年々あがっている反面、地方では人口の流出に伴う人口減少がおきている。中でも静岡県熱海市は、65歳以上の高齢者の割合が38%をこえており、東京一極集中による若者の流出は深刻である。

熱海市は、静岡県の最東部に位置しており、東海道・山陽新幹線の停車駅がある熱海駅は東京駅まで新幹線で50分ほどの距離である。江戸時代には徳川家康が湯治に訪れた記録が残っているように、古くから温泉観光地として馴染みのある地域である。バブル期には別荘用リゾートマンションの建設がブームとなり、熱海市には多数のリゾートマンションが建ち並んだ。海岸には人工の砂浜である熱海サンビーチをつくり、観光地としても大成した。しかしバブルが崩壊するとリゾートマンションは次々と売りに出され、人が住んでいない空き不動産が生まれた。観光客の減少を懸念した熱海市は2007年に観光基本戦略を発表し、観光まちづくりをすすめた。その結果、2012年以降熱海市の観光客は増加しており、徐々に回復している。対して1980年に50,000人を超えていた人口は、2010年には40,000人を下回り、1991年に3,000人以上いた従業員数も2006年には約2,200人となった。人口減少、特に労働力となる若者の流出はつづいている。

総務省によると、地方の労働人口の減少をカバーするためにテレワークの導入が効果的である。テレワークとはあらかじめ定めた勤務場所から離れた場所で仕事をすることを意味し、テレワークをおこなうオフィスをサテライトオフィスという。2011年の国土交通省の調査では、テレワークを採用することによって勤務者が感じるメリットとして、仕事の生産性や効率性が向上する、通勤に関する負担が少ない、ストレスがなくなり心にゆとりが持てることをあげる人の割合が高いことがわかった。

日本テレワーク協会(2010)によると、高知県では県庁の業務を外部誘致する際にテレワークを導入することで、県庁から離れた人々の参加を可能にし、地域の雇用も創出した。スピンクス(1998)によると、富士ゼロックスは1993年に本社業務の分散をするために西葛西、新百合ケ丘にサテライトオフィスを開設し、従業員の個性をいかして創造力を高め、会社組織の活性化をはかることを目指した。松岡他(2009)によると、軽井沢は個人がテレワークをおこなう場として需要があり、自然環境に恵まれたリゾート地である軽井沢でおこなうテレワークは地域への貢献が期待されている。このようにリゾートオフィスを地域活性と結びつける研究は注目されており、総務省は2015年から地方創生のための取り組みとして、全国15地域でテレワーク推進のための地域実証事業をおこなっている。しかしリゾート地であり、東京へのアクセスもよい熱海市において、サテライトオフィスを活用することが熱海市の活性化につながることを示す論文はいまだない。

そこで本稿では、熱海市の既存のリゾートマンションにサテライトオフィスを誘致することが、企業と熱海市の双方に利点をもたらし、熱海市の活性化につながることを示す。1節では、熱海市の概要を述べ、特長と抱える問題について記述する。2節ではテレワークという働き方に着目し、具体例をあげながら勤務者にあたえうるメリットとデメリットを明らかにする。3節ではサテライトオフィスの中のリゾートオフィスに焦点をあて、勤務者のワークライフバランスの面から考察する。4節では、サテライトオフィスの誘致は熱海市の問題を解決することに加え、導入する企業にとってもメリットがあることを示し、熱海市へのサテライトオフィスの誘致を提案する。

論文のフロー図

目次
はじめに
1 熱海市について
 1-1 熱海市の概要
 1-2 熱海市が抱える問題
2 テレワークについて
 2-1 テレワークとは
 2-2 テレワーク導入の目的と特徴
 2-3 テレワーク推進の事例
3 サテライトオフィスについて
 3-1 サテライトオフィス誘致に適した立地条件
 3-2 サテライトオフィス導入の実例
 3-3 リゾートオフィスとは
4 熱海市へのリゾートオフィス誘致
 4-1 企業へのメリット
 4-2 熱海市へのメリット
おわりに
参考文献

参考文献
ウェブサイト内の資料については、記載されているURLでのリンクを2016年11月16日時点で確認しました。その後、URL が変更されている可能性があります。

論文全文(ゼミ関係者のみダウンロード可)

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