三田祭論文
三田祭論文

慶應義塾大学経済学部
大平 哲研究会
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絶対的貧困と現在の貧困支援

イミニョン・任俊赫

絶対的貧困と聞くと経済的に貧しい状況を思い浮かべる人が多いだろう。貧困と言う言葉は経済的に貧しい状況をあらわす言葉として長い間多くの人々につかわれており、貧困支援では物資援助が多くおこなわれてきた。しかし、貧困という言葉は、経済的な要素だけを含むわけではない。Ray(1998)によると、貧困とは経済的要素だけではなく、人間が健康に生きる権利、教育を受ける権利、適切な栄養を摂取する権利を奪われることによって、やる気、希望、未来に対する楽しさがなくなる。人が将来を考えることができない状況に陥り、自助努力を喪失することは、絶対的貧困につながる。

貧困支援では、衣食住のような目に見えることだけではなく、貧困層の心理的な意味での貧困にも注目するようになっている。貧困者が将来に向けて自助努力をすることが貧困からの脱却につながると考え、その努力を促すための心理的な支援を考えるようになっている。将来に向けた自助努力を促すためには、時間を通じた意思決定と社会とのつながりが重要である。人は夢を持ち将来を重要に思うこと、社会に貢献したいという気持ちから社会とのつながりを持つことで、将来に向けて努力をすることになる。そこから教育を受けることや貯蓄をすることや仕事を探すこと、将来のために我慢することなど、未来に対する投資につながり、自ら貧困から抜け出すことができる。

貧困支援において、被支援者の自助努力を促すことが重要であることを示した論文は多くある。小浜(2013)によると、自助努力とは自国の経済開発を自らの力で実現したいという国民の強い意思である。意思は意欲的な行動の動機となるため、自助努力支援は意欲的な行動を促す。また秋月(2008)は、援助の効果を高める手段の一つにオーナーシップ、すなわち主体性をあげている。しかし、自助努力についてミクロ経済学で個人の行動まで整理された文献はない。

そこで本稿では、現在の貧困支援では、被支援者の将来に向けた自助努力を促すために、夢をもつこと、社会とのつながりを自覚させることを重視していることを結論とする。1節では絶対的貧困に対する貧困支援は、被支援者の将来に向けた自助努力の促進に注目していることを示す。2節では2期間モデルを用いて、将来の消費を増やすために教育を受けることや貯蓄をすることが重要であることを示し、例として、Planet Finance Japan(現Positive Planet Japan)の金融教育を紹介する。3節では2期間における対人関係モデルを用いて、支援者自身が支援を受ける貧困者と信頼関係をもつこと、そして貧困者が社会とのつながりを意識して、社会の中での自分として責任感をもつことが重要であることを示し、ユニカセ、ACC・希望の活動を紹介する。

論文のフロー図

目次
はじめに
1 絶対的貧困と現在の貧困支援
2 夢をもつこと
 2-1 時間を通じた意思決定と貧困
 2-2 現在の貧困支援の例
3 社会とのつながり
 3-1 社会とのつながりと貧困
 3-2 社会とのつながりとしての心理社会支援
 3-3 現在の貧困支援の例
おわりに
参考文献

参考文献
ウェブサイト内の資料については、記載されているURLでのリンクを2016年11月15日時点で確認しました。その後、URL が変更されている可能性があります。

三田祭論文作成にあたり、ご協力いただいた関聡恵さん、竹村彩音さん、湯屋裕行さんありがとうございました。

はじめてのフィールドワーク直前 ACC・希望の松永さんと山本さんと聞き取り終了後
聞き取りをしたACC・希望のバザーに参加 三田キャンパスでユニカセの中村さんに聞き取りしました
品川のカフェでユニカセの話を聞きにOG菅澤さんと会いました プラネットファイナンス松浦さんに聞き取りを1人でしました

論文全文(ゼミ関係者のみダウンロード可)

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