三田祭論文
三田祭論文

慶應義塾大学経済学部
大平 哲研究会
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福島県郡山市における住民参加型の子育てと農業の両立支援

赤塚亮介・小山由梨佳・長谷川莉萌・湯屋裕行

2011年3月11日に発生した東日本大震災は、日本国内において戦後最悪の自然災害の1つとなった。マグニチュード9.0を観測した巨大地震は、東北地方に莫大な被害をもたらした。東北地方のなかでも、福島県は地震や津波によって多数の死者、行方不明者を出し、住宅や生産設備の損壊、流失、浸水、そして原発事故に伴い生じた放射線物質による汚染被害など未曾有の被害を受けた。震災後、こうした被害の影響から、福島県の人口は減少の一途を辿っている。福島県の中央部に位置し、県内で一番の人口を擁する郡山市では震災以後人口が急激に減少し、2015年11月の人口は震災直前から約9,000人下回り、約330,000人となっている。なかでも幼い子を育てる20、30代の女性の人口は、2005年の45,285人から2015年には37,801人と大きく減少している。

郡山市における若年女性の人口減少の抑制のためには、女性にとって住みよい環境を考えなければならない。国立社会保障・人口問題研究所(2012b)によると、独身女性の約65%が出産後も働きたいと考えている。しかし、現状は女性が希望するように出産後も就業を継続することや再就職が困難な状況にある。そのため子育てと両立できる職場環境を整えていくことは、郡山市の若年女性の人口減少の抑制に大いに貢献する。

女性の社会進出が経済に果たす役割は大きい。経済産業省経済産業政策局経済社会政策室(2014)は、女性の就労促進は世帯収入を増加させ、経済成長につながると示している。また、農業においても女性の存在感は高まりつつある。農林水産省は女性の農業参画を促すために、2013年に農業女子プロジェクトを立ち上げた。同プロジェクトでは女性による消費者目線を活かした商品やサービスが登場している。日本政策投資銀行北陸支店(2013)は製造業において女性ならではの視点や感性が活きる可能性を示している。農産物の加工・販売でも同様だろう。しかし、全国農業会議所、農山漁村女性・生活活動支援協会(2013)は農業に従事する女性は季節や天候によって就業時間が不確定になることや、仕事と子育ての両立に苦悩していることを指摘している。

女性の子育てにおける負担を軽減するための支援の1つに住民参加型の子育て支援がある。本稿は山下(2011)による住民参加型の子育て支援の分析を郡山市に適用する。山下(2011)は住民参加型の子育て支援組織を4つに分類し、そのすべての支援組織が保護者のニーズや状況に応じて活動を変化させていく柔軟性を持つと述べている。くわえて本稿では向井、鵜木(2012)の指摘する行政との連携の重要性も示す。向井、鵜木(2012)は埼玉県新座市を例として行政地域組織と連携し地域の特色を活かした事業をおこなうべきだと述べている。郡山市の子育て支援でも地域の特色を見極めて、母ちゃんズのような住民組織と連携していくべきである。この2つの分析を通して、郡山市において行政による農業従事者への住民参加型子育ての制度が、人口減少の抑制に有効であるとの結論を示す。

この結論を示すために1節では郡山市が抱える人口減少問題、とりわけ若年女性の減少に焦点をあて、若年女性の人口減少を抑制するためには女性が子育てと仕事を両立でき、活躍できる環境づくりが有効であることを示す。2節では農業が女性の力を発揮できる職業であることと、農業では子育てとの両立が難しいことを示す。3節では女性が子育と仕事を両立するために住民参加型の子育て支援をすることが有効であることを示す。4節では女性が農業と子育てを両立できる環境づくりに向けて、郡山市が住民参加型の子育て支援制度を整えることを提言する。

論文のフロー図

目次
はじめに
1 郡山市について
 1-1 郡山市の概要
 1-2 郡山市の人口減少
2 女性と農業について
 2-1 女性の農業進出を促進する要因
 2-2 女性の農業進出を阻害する要因
3 住民参加型の子育てについて
4 郡山市で女性が農業と子育てを両立するために
 4-1 郡山市における支援の現状
 4-2 郡山市における住民参加型の子育てへの提言
おわりに
参考文献

参考文献
ウェブサイト内の資料については、記載されているURLでのリンクを2015年11月19日時点で確認しました。その後、URL が変更されている可能性があります。

三田祭論文作成にあたり、ご協力いただいた金久保智哉さん、金子令奈さん、鈴木啓仁さん、藤平真熙さん、吉田有希さんありがとうございました。

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