三田祭論文
地域における親子の防災教育
大塚悠介・鈴木奨之・鈴木啓仁・山岡奈々瀬
4つのプレートの上に位置する日本列島は常に地震災害の危機にあり、地震だけではなく火山噴火、河川の氾濫、土砂崩れなど世界的にみても自然災害の多い国である。なかでも記憶に新しいのは、2011年の東日本大震災である。岩手・宮城・福島の3県を中心に東日本全域に大きな被害をもたらし、地震や津波などによる死者数は15,000人を超えた。また、東海地方を震源とする地震や首都直下型地震が近い将来に起きると頻繁にニュースで取りあげられている。備えあれば、憂いなしの言葉にもあるとおり被害を最小限にするために、普段から災害への備えをしておくことが非常に重要となる。しかし、超高齢社会の中、いくら準備しても、有事の際に自分の力で避難できない人々が増えてきている。避難できない人々が見過ごされてしまうと、救えたはずの命が失われてしまうことがある。また、近所に住む人に関心がなく、隣に住んでいる人を知らない人がいる。家族内においても、子どもが普段どのような生活をしているのか知らない、子どもとの会話が少ない保護者がいる。この現状から、現代社会は、地域においても家族内においても人とのつながりが希薄になりがちといえる。したがって、いざというときに助け合える人と人とのつながりをつくることが、大きな災害への備えとなる。
希薄になりつつある地域のつながりを再生し、災害による被害を最小限にしようと活動している団体がある。墨田区一寺言問地区で活動を展開している、一寺言問を防災のまちにする会、通称、一言会である。木造建築が多く、袋小路がいたるところにある一寺言問地区では、一言会は、避難時に子どもや中学生が一番力になると考えている。そのため、一言会はとりわけ防災教育に力をいれており、イザ!カエルキャラバン!in寺島という子ども向け防災イベントを2009年から継続しておこなっている。イザ!カエルキャラバン!in寺島の目的は、参加者の防災知識を増やし、防災意識を向上させることである。また、子どもの保護者に防災教育の効果が広がることも目的の1つである。イザ!カエルキャラバン!in寺島に参加している子どもの防災意識は向上しているが、イベントに参加しない保護者の防災意識をいかに向上させるかが課題であると言える。
金井、片田(2008)の岩手県釜石市における津波防災教育の事例や谷口、原、新保、高野、加賀谷(2001)の札幌市で実施した交通・環境教育の事例のように、子どもへの教育が保護者に波及することでおこる保護者の意識向上に焦点を当てた論文は多くある。また、豊沢、唐沢、福和(2010)のように、子どもから保護者への伝達をうながす要因に着目した論文もある。しかし、子どもの親への伝達に注目し、具体的に防災イベントの改善方法を示す論文はない。
そこで、本稿では、子どもから保護者への伝達をうながす要因を分析し、その伝達要因を刺激する工夫を防災イベントに加えることで、イザ!カエルキャラバン!に参加しない保護者の防災意識を向上することができることを述べる。これを示すために、1節で一言会の活動とりわけイザ!カエルキャラバン!に焦点を当て、その概要と課題について記述する。2節では、子どもから保護者への伝達を利用した防災教育についてまとめ、伝達をうながす要因を整理する。2節で示した要因をもとに、3節では子どもから保護者への伝達をうながすイザ!カエルキャラバン!のアクティビティを提言する。
目次
はじめに
1 イザ!カエルキャラバン!in寺島について
1-1 一寺言問地区の概要
1-2 イザ!カエルキャラバン!の概要
1-3 イザ!カエルキャラバン!in寺島の成果と課題
2 子から親への伝達を利用した防災教育
2-1 防災教育とは
2-2 子から親への伝達を利用した教育
2-3 子から親への伝達をうながす要因
3 イザ!カエルキャラバン!による保護者の防災意識の向上
3-1 防災と身近な話題を結びつける工夫
3-2 保護者への効力感を大きくする工夫
3-3 恐怖感情を大きくする工夫
おわりに
参考文献
参考文献
ウェブサイト内の資料については、記載されているURLでのリンクを2014年11月19日時点で確認しました。その後、URL が変更されている可能性があります。
三田祭論文作成にあたり、ご協力いただいた井原萌美さん、武部紗季さん、畠山周平さん、松下慶祐さん、横井聡さん、ありがとうございました。
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墨田区にてフィールドワーク
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一言会の方に聞き取り
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フィールドノート作成中
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イザ!カエルキャラバン!のお手伝いをしました
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家具転倒防止ゲーム
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ジャッキアップゲーム
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論文全文(ゼミ関係者のみダウンロード可)
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