三田祭論文
三田祭論文

慶應義塾大学経済学部
大平 哲研究会
メールはこちらへ

今井町における着地型観光を通じた町並み保存

稲垣美香・川端詩織・松波弘樹・満木孝弘

奈良と聞いて何を思い浮かべるだろうか。奈良の大仏や奈良公園の鹿、また飛鳥の遺跡をイメージする人が多いかもしれない。せんとくんを思い浮かべる人もいるだろう。しかし奈良の魅力はそれだけにとどまらない。奈良には歴史的な町並みを残しながらも、今も変わらず住民が生活をしている町がある。そこに一歩足を踏みいれると江戸時代にタイムスリップしたかのような感覚になる。それが今井町(いまいちょう)だ。今井町は奈良県北西部に位置する橿原市に属し、南北310メートル、東西600メートルの小さな町である。伝統的建造物群全体が意匠的に優秀であるとして国の重要伝統的建造物群保存地区(以下、重伝建地区)に指定されており、江戸時代の商人が工夫を凝らした町家が町全体に広がっている。

重伝建制度が設けられたのは1975年のことで、当初の目的は今井町の町並み保存であった。しかし高村(2010)は、今井町では観光地化により生活が脅かされることを危惧する住民の反対があったため、重伝建地区の指定が1993年になってしまったと述べている。このことから、歴史的にも町並み保存に対して住民の意見の不一致があったとわかる。櫻井、藤田、青木(2006)は、歴史的な町並みが残る他の多くの地区と同様に、今井町でも少子高齢化による町並み保存の担い手不足が問題だと指摘する。また統計局(2012)は、1998年から2012年までの全国の人口が0.08%増加しているのに対し今井町では人口が約10%減少していると示しており、将来人口減少が深刻化することが予想できる。よって住民の意見の不一致、少子高齢化、人口減少による将来の町並み保存の担い手不足が今井町の問題と言える。本稿では将来の担い手不足を解消するために着地型観光に着目する。

着地型観光は、観光客を受け入れる地域が主体となって企画・運営する観光形態である。これは地域住民の帰属意識を創出し、また外部の人々と住民が関わることで閉塞感を取り除く効果がある。尾家、金井(2008)は、着地型観光によって地域の魅力を発信することができ、外部の人々が将来定住する可能性があると述べている。

今井町は文化財に指定されている町家で人々が生活しているため、住民の意見を反映しやすい着地型観光が適している。現在今井町では着地型観光をおこなっているが、観光客数の伸び悩みと住民間での観光に対する熱意の差があるため、その効果は不十分である。よって本稿では、現在の着地型観光の改善策として、外部への宣伝と住民の熱意を引き出す方法のどちらが着地型観光の効果を高めるか考察する。そして、住民の熱意を引き出す方法が効果をより高め、町並み保存の担い手不足を解消できることを示す。

この結論を導くために、1節で今井町の歴史と現状を紹介する。2節では着地型観光の効果について例をあげながら記述する。3節では1節と2節の論考を今井町にあてはめて考察し、結論を示す。
論文のフロー図

目次
はじめに
1 今井町について
 1-1 歴史
 1-2 今井町と町家
 1-3今井町の抱える問題点
2 着地型観光について
 2-1概要
 2-2事例
3 今井町と着地型観光
 3-1 現状
 3-2 改善策と効果
 3-3 効果の検証
おわりに

参考文献

安田さんと 今井庵
今井町の夕景色 今井町並み交流センター
若林さん宅にて 保存整備事務所にて

論文全文(ゼミ関係者のみダウンロード可)

三田祭ページに戻る