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定住自立圏構想から考える地域活性化 -宮崎県北部を例に-
佐藤孝輔・土江貴大・日隈順也
宮崎県ときくとどのようなイメージをもつだろうか。東国原英夫前知事を真っ先に思い浮かべるかもしれない。マンゴーや地鶏といった特産品や口蹄疫問題を連想する人もいるだろう。どれも宮崎県に対して間違ったイメージではない。かつての宮崎県は日本有数の南国リゾート地として名高く、新婚旅行先として人気があり、ハワイやグアムといった海外の観光地の人気が高まるまではあこがれの場所であった。今でも青島や日南など南国の雰囲気を漂わせた観光名所が多く、海岸線とフェニックスの木が数十キロメートルもつづく国道220号を車で走っていると、南国ムードを味わうことができる。しかし、これらは 県南部に集中している傾向がある。
宮崎県北部は九州第2位の面積を誇る延岡市を中心に門川町や高千穂町など、おもに中山間地域で構成されており、県南部とは雰囲気が異なる。宮崎県北部は旭化成の企業城下町である延岡市や細島港がある日向市のように工業面で栄えてきた地域だが、現在は地方衰退の波に逆らえず、景気の悪化によって税収が減り財政が厳しい状況にある。実際に宮崎県北部をとりまく厳しい現状については宮崎県県民政策部(2011)や佐藤、土江、日隈(2011)がまとめている。本稿ではこのような状況を改善するための「定住自立圏構想」という広域連携の取り組みに注目する。
定住自立圏構想は中心市と周辺市町村の連携によって圏域内の活性化を促す政策である。総務省(2008)は中心市と周辺市町村が役割分担し連携することによって圏域内で住みやすい地域をつくりあげることを定住自立圏構想の目的としている。類似した政策には市町村合併や広域行政がある。しかし、山田(2006)が考察しているように、市町村合併にはデメリットがあり破綻した例が多い。同様に広域行政のデメリットについては横道(2010)が述べており、市町村の自主性を重んじた定住自立圏構想が推進された背景がわかる。定住自立圏構想の具体的な取り組みは、生活機能の強化、結びつきやネットワークの強化、圏域マネジメント能力の強化の3分野から構成されていることが宮崎県延岡市(2011)からわかる。
定住自立圏構想は市町村合併や広域行政と比べると、2008年から始まった新しい政策であるため、どのような効果をもつのかを考察した研究や資料は少ない。本稿では、定住自立圏構想によって産業面や観光面、社会資本が変化することで宮崎県北部が活性化することを述べる。この結論を導くために、1節で宮崎県北部の現状を紹介する。2節では定住自立圏構想の評価や効果について記述する。3節では1節と2節の論考を宮崎県北部にあてはめて考察をおこない、当該地域での効果を説明する。
目次
はじめに
1 宮崎県北部について
2 定住自立圏構想の概要
2-1 定住自立圏構想とは
2-2 市町村合併・広域行政との比較
3 定住自立圏構想による宮崎県北部の変化
3-1 産業および観光の変化
3-2 社会資本の変化
3-3 住民のくらしの変化
おわりに
参考文献
参考文献
- 大分県・宮崎県『東九州地域医療産業拠点構想 -東九州メディカルバレー構想- 』、2010年 (2011年11月2日)
- 金沢市 ウェブサイト 「広域行政について」 (2011年11月2日)
- 北広島市ウェブサイト 「市町村合併のメリット・デメリット│北広島市」 (2011年11月2日)
- 九州地方市町村白地図イラスト (2011年11月2日)
- 国土交通省道路局『道路統計年報2010年版』全国道路利用者会、2011年
- 財団法人 碓氷峠交流記念財団『平成22年度 事業報告書』財団法人 碓氷峠交流記念財団、2011年 (2011年11月2日)
- 佐藤孝輔、土江貴大、日隈順也「宮崎県フィールドノーツ」慶應義塾大学経済学部大平哲研究会フィールドノートシリーズ2011-tj01、2011年
- 鈴鹿市ウェブサイト 「市町村合併のメリット・デメリット論」 (2011年11月2日)
- 製造業・流通関連業・民間研究所『宮崎県企業立地ガイド』宮崎県商工観光労働部 企業立地推進局、2010年
- 総務省「定住自立圏構想推進要綱」総務省、2008年
- 総務省 自治行政局 自治体クラウド推進本部「資料2 自治体クラウドの全国展開に向けた参考事例」総務省、2011年 (2011年11月2日)
- 総務省ウェブサイト「総務省│地域力の創造・地方の再生│定住自立圏構想」 (2011年11月10日)
- 総務省ウェブサイト「広域行政・市町村合併」 (2011年11月10日)
- 外枦保大介「延岡市における企業城下町的体質の変容 -地方自治体の産業政策の転機を事例として-」『経済地理学年報』、第53巻第3号、pp.265-281、2007年
- 筑西広域市町村圏事務組合 ウェブサイト 「インフォメーション ふるさと市町村圏っ てなに?」 (2011年11月2日)
- 統計局ウェブサイト「統計局ホームページ 統計でみる市区町村のすがた2011」 (2011年11月16日)
- 統計局ウェブサイト「統計局ホームページ 統計でみる都道府県のすがた2011」 (2011年11月2日)
- 戸所隆『地域主権への市町村合併 ―大都市化・分都市化時代の国土戦略―』古今書院、2004年
- 中西啓之『町村合併 まちの将来は住民が決める』自治体研究社、1998年
- 沼田市・白沢村・利根村合併協議会 ウェブサイト 「合併のメリット・デメリット」 (2011年11月2日)
- 延岡市ウェブサイト 「延岡市の紹介」(2011年11月2日)
- 延岡市ウェブサイト「定住自立圏構想 延岡市 -Nobeoka City-」 (2011年11月10日)
- 延岡市ウェブサイト「自治体クラウド開発実証事業」 (2011年11月2日)
- 畑本裕介「限界集落論の批判的検討 ~地域振興から社会福祉へ 山口県徳地地域の高齢者生活調査を中心に」『山梨県立大学人間福祉学部紀要』、第5号、pp.1-15、2010年
- 日之影町ウェブサイト 「統計情報」(2011年11月2日)
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- 宮崎県ウェブサイト「市町村合併情報コーナー」 (2011年11月10日)
- 宮崎県県民制作部『みやざきこんスマガイド』宮崎県県民制作部、2011年
- 宮崎日日新聞2011年3月30日朝刊『延岡「外部の視点必要」定住自立圏で調査報告』
- 宮崎日日新聞2011年4月21日朝刊「高千穂町有林を整備 旭化成、県などと協定」
- 宮崎県延岡市『宮崎県北定住自立圏共生ビジョン』宮崎県延岡市、2011年
- 宮崎県延岡市 メディカルタウン推進室『延岡市メディカルタウン構想 メディカル産業と健康長寿の花開くまち』宮崎県延岡市、2011年、
- 森田優巳「北勢線の廃止・存続にみる地域交通政策の課題」『桜花学園大学人文学部研究紀要』、第5号、pp.65-77、2003年
- 山田明「市町村合併「破綻」の検証」『人間文化研究』、第5号、pp.27-36、2006年
- 山梨県東部広域連合 ウェブサイト 「山梨県東部広域連合・消防広域化の具体の調整結果について」 (2011年11月2日)
- 横道清孝「日本における新しい広域行政政策」『アップ・ツー・デートな自治関係の動きに関する資料』政策研究大学院大学比較地方自治研究センター、第6巻、pp.1-17、2010年
- 渡邊勉「地域に対する肯定観の規定因―愛着度、住みやすさ、地域イメージに関する分析―」『地域ブランド研究』、第2号、pp.99-130、2006年
- NEXCO 西日本『東九州道の整備効果(2)』、NEXCO西日本、2004年、 (2011年11月16日)
天狗 旭化成の煙突 なぜか未だにある東国原 物産館にてお世話になりました チキン南蛮発祥の店 県庁で聞き取り
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