三田祭論文
東京都御蔵島でのエコツーリズム
高橋孝平・中村仁・山田浩央
「離島」という言葉を聞いて、どのようなイメージを持つかは人それぞれである。「ロビンソン・クルーソー」や「十五少年漂流記」などの小説に描かれるような無人島をイメージする人もいるだろう。ドラマ「Dr.コトー診療所」に出てくるような人情味あふれる人々がいて、医療設備などは整っていない場所とイメージする人もいるだろう。それらのイメージはどれも間違っていない。ひとくくりに「離島」と言ってもさまざまな島がある。日本の最南端にある沖ノ鳥島は、島自体が岩と言っても過言でないほど小さい。静岡県の初島では、島の約半分がレジャーランドのようになっている。鹿児島県屋久島には、世界自然遺産に登録された広大な自然が残っている。
離島はその特殊な環境や要因ゆえに、自然や民俗、産業といった角度からの数々の研究がある。離島に関する諸研究の系譜を、宮内(2006)、宮内(2007)および宮内(2009)の一連の研究はまとめている。その中でも観光業に対する研究は、1970年代のいわゆる離島ブームの時期に端を発している。白坂(1972)および根岸(1979)は当時、観光客が押し寄せていた伊豆諸島や静岡県初島を取り上げ、観光化に伴う地域コミュニティなどの変化を述べている。1990年代以降、観光客が増加した沖縄県の各島や、屋久島に関する研究が盛んに行われている。しかし、研究対象が観光地として有名ないくつかの離島に偏っているのが現状である。
御蔵島(みくらしま)は観光客が全体的に減少傾向にある伊豆諸島にありながら、近年急速に観光客数が増加した離島である。御蔵島の研究は、西海(2002)のような生物学的観点や石井(1991)のような民俗学的観点からのものが多い。本稿は御蔵島の観光を取り上げる。御蔵島は、観光資源である自然環境を目的に、エコツーリズムを実施している。小笠原諸島でも御蔵島と同じく、東京都の管理下でエコツーリズムが施行されており、一木、朱宮(2007)はこの考察を行っている。本稿ではエコツーリズムを中心として現状をまとめた上で、御蔵島のエコツーリズムについて「ルールの明文化」、「ガイド育成と立場向上」、「ソーシャルキャピタルの蓄積」の3つを改善点として示す。
この結論を導くために、まず1節で御蔵島の地理上の位置や人口などの基礎情報、歴史、御蔵島を取り巻く特徴的な自然環境について記述する。2節では一般的な離島観光の歴史を顧み、同時に観光形態の1つであるエコツーリズムに必要な要素を示す。3節では御蔵島での観光の変遷と、エコツーリズムとして行われているイルカウォッチング、山ガイドツアーのシステムや特徴を説明する。4節では、2節と3節での論考を用いて考察を行い、改善点を提示する。
目次
はじめに
1 東京都御蔵島の現状
1-1 御蔵島の基礎情報
1-2 御蔵島の歴史
1-3 御蔵島の自然環境
2 離島の観光形態
2-1 離島観光の歴史
2-2 エコツーリズムと離島観光
3 御蔵島と観光
3-1御蔵島観光の変遷
3-2 御蔵島でのエコツーリズム
4御蔵島でのエコツーリズムの課題
4-1 ルールを巡る課題
4-2 ガイドの育成と立場向上
4-3 ソーシャルキャピタルの蓄積
おわりに
参考文献
補論
参考文献
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- Google マップ
(2010年10月12日)
- Wearing, Stephen, Simone Grabowski, Paul Chatterton and Jess Ponting, "Participatory planning for eco-trekking on a potential World Heritage site: the communities of the Kokoda Track," Pacific Economic Bulletin, The Australian National University, vol. 24, Chapter 3, 2009, pp.101-117.
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島じまん2010にて
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桟橋に接岸するかめりあ丸
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山ガイドツアー終えての記念写真
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海ガイドへの聞き取り調査
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イェ~イ!(聞き取りの後、外に出て)
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御蔵島から見た三宅島の遠景
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