三田祭論文
三田祭論文

慶應義塾大学経済学部
大平 哲研究会
メールはこちらへ

子どもがなぜ働くのか

石原直哉・田中靖子・中村祐太

子どもが働いている光景を想像できるだろうか。テレビの中で踊ったり歌ったりしている子どもではなく、茶畑で茶摘みを1日中しているような子どもを、である。子どもが大人のように働くことを児童労働という。日本では児童労働は目に付かないために意識しにくいが、途上国では今でも路地で物を売っている子どもを目にすることがある。子どもが働く場所は路地だけにとどまらず、鉱山で大人と一緒に働いたり、農場で1日中働いたりしている。こうした労働は昔から行われてきた伝統的なものもあれば、近年のグローバル化が進行したことによってもたらされたものもある。たとえば、外国に行きやすくなったために、途上国から子どもを日本に連れてきて違法に性産業で働かせていることもある。大企業の下請け企業で子どもが雇われることもある。このように児童労働は多種多様な形態をしている。

子どもが働く理由も様々である。食べていくことさえ難しい、極度の貧困であるときに子どもが働くこともあれば、親からの自立のために児童労働が推奨され、子どもが働くこともある。低コストであり、従順であるために、子どもが働く現場も喜んで受け入れる。

こうした児童労働をなくしていくために、法の整備や貧困の削減がよく取り上げられている。しかし、こうした取り組みだけで児童労働はなくならない。児童労働の要因は貧困だけにとどまらず、親の価値観といったものも含まれることがある。その場の状況に合わせて柔軟に対処法を変えていくことが求められるのである。

本稿では、今でも途上国を中心として問題となっているこうした児童労働の問題について取り上げる。結論として、児童労働の要因は経済的要因のみならず人々の考え方といった慣習にもあることを示し、児童労働をなくすために、どのような取り組みが行われているのかをまとめる。1節では児童労働の概要について述べる。児童労働の定義は国ごとに異なるため、児童労働問題に取り組んでいる国際機関International Labour Organization (ILO)の定める定義を紹介する。2節では児童労働の供給側の要因は貧困だけではなく、慣習にもあることを先行研究から示す。児童労働の要因は供給側のみにあるのではなく、需要側にも要因がある。3節で取り上げる需要側の要因も、児童が低コストであるといった経済的な理由だけではなく、児童にとって望ましいからといった慣習が要因となっていることを先行研究から示す。現在、世界では法律によって児童労働をなくそうとする取り組みがある。最も多いものが子どもの雇用を制限するものである。しかし、こうした取り組みだけでは児童労働はなくならない。ただ単に雇用を禁止するだけでは、賃金を得るために劣悪な環境でも働く子どもがでてくる。児童労働を根絶するには2節、3節で述べている要因をなくす必要がある。4節では児童労働の根本的な解決のためにどのような取り組みが行われているのかを述べる。
論文のフロー図

目次
はじめに
1 児童労働について
2 児童労働の供給要因
 2-1 貧困と児童労働
 2-2 慣習と児童労働
3 児童労働の需要要因
 3-1 経済的理由と児童労働
 3-2 慣習と児童労働
4 児童労働問題根絶に向けた取り組み
4-1 供給側要因への取り組み
4-2 需要側要因への取り組み
おわりに
参考文献

参考文献

論文全文(ゼミ関係者のみダウンロード可)

三田祭ページに戻る