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(※注 以下、順位、タイトル、ニュース記事、解説の順で並んでいます)
第1位
能力給は公務員も当然
 政府は二七日午前の行政改革推進本部(本部長・森喜朗首相)で公務員制度改革の大枠を決定した。@ポストと勤続年数で自動的に給与が決まる現行の職務給制度を廃止し、能力や業績を反映した新たな給与制度を導入する
(日本経済新聞3月27日夕刊)
 
 公務員のポストや給料は、依然年功序列である。この人事・給与体系では、公務員は、職務上大きな失態がない限り着々と出世できるとともに、特別目立つような業績を上げたからといって出世するわけでないから目立った業績を上げようともしない、前例主義、事なかれ主義に堕してしまっていた。これでは、国民のためになる行政を一生懸命しようというやる気が起きないどころか、国民のためにならない行政でも世論や政治家から特に強く批判されないなら前例を変えないで、国民のためにならない行政がずっと続けられてしまう結果になる。
 能力給は、民間企業でもずいぶん浸透している。国民のための行政を行うことが当然である公務員にも、能力給は導入されて当然である。公務員には、競って国民のためになる仕事をしてもらいたい。その動機づけとして、能力給は重要である。これが定着すれば、我々にとって行政は今よりもずっとよくなるに違いない。
 
第2位
国民のための行政へ、重要な一歩
 情報公開法が施行されて最初の開庁日となる二日。中央官庁が立ち並ぶ東京・霞が関では、各省庁が朝から対応する窓口を開いて開示請求に備えた。窓口が閑散とし、拍子抜けの省庁もあったが、外務省などでは開示を求める人が列をつくった。納税者である国民が税金の使い道を監視し、行政の透明化を進めるための"切り札"ともされる同法。
(東京新聞ホームページ4月2日)
 
 これまでは、行政機関が持っている重要な情報を、国民が簡単に知ることができなかった。これでは、本当に国民のための行政が行われているかどうか、国民自身の目でチェックすることができなかった。
 今年度から施行された情報公開法によって、国民からの文書や資料の請求に対して、行政機関は原則として開示しなければならなくなった。これによって、行政機関の情報や行動を国民が直接チェックできるようになった。さらに重要なことは、この法律が施行されてもなお情報を開示できないという回答した場合は、(本当に国家機密に属する場合以外)その行政機関が開示できないようなやましいことをしている、と断言できることである。隠す必要がなければ、堂々と情報を開示できるはずである。開示できないようなやましいことをしていると、国民から開示請求が出されると「開示できない」と回答するしかなく、その回答は「やましいことをしている」ことを意味し、結局やましいことが間接的にばれてしまう。だから、この法律によって、行政機関にやましいことを止めさせる「脅し道具」を、我々は手に入れたのである。
 
第3位
日本企業がコンゴ紛争を助長?!
 (国連専門家委員会の)報告書は、米国やドイツ企業が鉱物資源を同国東部の反政府勢力支配地域から大量に買い付けていると指摘。さらに、名指しは避けながらも日本によるとみられる木材輸入にも言及している。先進各国が紛争終結に向けた外交努力を活発化させる一方で、紛争を助長していたとも受け取れる内容になっており、波紋を広げそうだ。
(日本経済新聞4月14日夕刊)
 
 周辺五カ国が介入し「アフリカの大戦」とも呼ばれるコンゴ紛争にからんで、日本企業が反政府勢力から木材を買って、そのお金が反政府勢力の武器を買う資金源になって、紛争激化を助長している、と国連専門家委員会の報告書が指摘した。
 報告書の内容を受けて、国連として制裁措置などを含めて具体的にどのように行動するかはまだ決まっていない。日本も、報告書で(暗に)指摘されている以上、報告書に書かれている行為が事実ならばその行為を止めるか、事実でなければ反論するか、いずれにせよ毅然とした態度を示す必要がある。
 我々は戦争を激化させるために木材を買っているわけではない。しかし、これが事実なら、我々が何気なく買った木材に支払ったお金が、戦争を促していることになり、もはや無視できない。国連による真相究明が待たれる。
 
第4位
誰のために外交をするのか、外務省
 国連安全保障理事会の非常任理事国改選に向けた日本の動きが遅れている。(中略)外務省内では立候補自体への慎重論と積極論が交錯している。慎重論の背景にあるのは、すでに政府が決定した小和田恒・日本国際問題研究所理事長の国際司法裁判所裁判官選挙への出馬問題だ。(中略)慎重派は小和田氏の落選だけは避けたいとして「非常任理事国への立候補は先送りしても」との立場。
(日本経済新聞4月11日朝刊)
 
 国連外交は、日本が国際貢献するために重要である。日本は、国連の運営のための拠出金をアメリカに次いで多く支払っていて、安保理常任理事国になろうと運動している。2003年からの2年間非常任理事国になることは、将来常任理事国になるための足がかりになるであろう。国際司法裁判所で日本人外交官が活躍することも、重要な国際貢献である。
 それなのに、外交官の名誉を守るために非常任理事国への立候補すら取りやめてしまうならば、外務省は誰のために外交をしているのか全く理解できない。外務省は、言うまでもなく日本国民のためになる外交をすべきである。非常任理事国や裁判官に当選するためには、日本に投票してくれる世界各国の支持が不可欠である。当選できないということは、それだけ日本が世界から支持されていないことを意味する。我々にとって望ましいのは、落選という不名誉を外交努力で克服することであって、立候補をやめて隠そうとすることではない。我々は、我々が国際貢献するための足場を築くべく外務省が最大限努力するよう求めるべきである。
 
第5位
発言に見る学者の正しい姿勢
 須田審議委員は、「為替レートを目標にする政策には反対だ」と述べた。日銀法を決めるときも、日銀は物価の安定と為替という2つの目標を置くことは良くないという議論があったとし、「為替レートを目標にする政策は、邪道だと思っている」と語った。ただ、現状の為替水準については、「学者のときから、現状がどうか、先々どうなるか言うべきではないと教えられてきた。これからも、その考えを持っていきたい」と述べた。
(ロイター/ヤフーニュース4月2日)
 
 この4月に就任した須田美矢子日銀審議委員は、前学習院大学教授で国際金融の優れた学者の一人である。読者の皆さんも、日銀の金融政策を決める審議委員の一人として、今後の発言は注目して頂きたい。
 為替レートの動きは、金融機関で外貨を扱う人や商社で貿易取引に携わる人だけでなく、国際化した日本のビジネスに大きな影響を与える意味で、重要であることは言うまでもない。為替レートの先行きは、我々にとってとても気になることだから、専門家につい聞いてみたくなる。為替レートの予測を商売にしている人はいざ知らず、予測を商売にしているわけではない学者が、予測を尋ねられていとも簡単に答えてしまうというのは、無責任なことである。答える学者も学者だが、予測を聞く方も聞く方である。
 為替水準を尋ねられても、それに安易に答えなかったところに、学者としての良心を感じる。読者の皆さんも、為替レートに限らず、予測を商売にしていない学者が安易に予測を答えてしまう場合、それは無責任だと受け止めて頂きたい。また、予測を商売にしていない学者に、安易に予測を尋ねない方が良いことも肝に銘じて頂きたい。
 
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