延近研究会 卒業論文概要
(第23期生)

慶應義塾大学経済学部  延近研究会卒業生の卒業論文の概要と主要参考文献です。
卒業論文とともに提出された本人作成の概要を
原文のまま掲載しています。

稲垣 遥河

テーマ

国際金融システムの現状と金融取引規制の可能性

概要

戦後から続くアメリカのドル基軸通貨特権を利用した経常赤字のファイナンス構造は、時代を経るにつれ規模を拡大し、現在ではアメリカだけでなく世界経済がそのドル循環構造に依存している。だがこの構造はリーマンショックから端を発する今回の危機を見ればわかるように、極めて不安定なものである。こうした構造に頼ることなくアメリカの経済的繁栄を維持することが、世界経済のためには必要なのではないか。
主要参考文献 延近充、『薄氷の帝国 アメリカ―戦後資本主義世界体制とその危機の構造―』、御茶ノ水書房、2012
井村喜代子、『世界的金融危機の構図』、勁草書房、2010
ジョセフ・E・スティグリッツ、『フリーフォール―グローバル経済はどこまで落ちるのか―』、徳間書店、2010

宇佐美 峻

テーマ

労働力人口減少の実態と対策

概要

今後、深刻化していく日本の労働力人口減少問題。この問題は、税収の減少を通じた社会保障サービスの低下、現役世代の社会保障費の増加、地方の過疎化など様々な影響を私たちに与える可能性がある。この問題を解決するために、現在活用できていない「女性」「高齢者」が働きやすい環境を整え、労働参加率を引き上げることが必要である。また、それでも不足する分に関しては、「外国人」を限定的に受け入れることも検討していく必要がある。
主要参考文献 ・樋口美雄『少子高齢時代の雇用問題』社会経済生産性本部生産性労働情報センター:2000年
・清家篤『エイジフリー社会を生きる』NTT出版株式会社:2006年
・橘木俊詔『現代女性の労働・結婚・子育て』日本経済新聞出版社:2009年

長田 健司

テーマ

アメリカにおける帝国主義の形成過程

概要

アメリカという弱小新興国が如何にして生き延び、帝国主義を形成するに至ったかを整理し、その過程を分析する。そしてアメリカという国家の性質を論じることで、ゼミで学んできた戦後資本主義体制の中枢国としてのアメリカへの理解を深める。
主要参考文献 延近充『薄氷の帝国アメリカ――戦後資本主義世界体制とその危機の構造』御茶ノ水書房2012年
山本幹雄『アメリカ帝国の興隆』ミネルヴァ書房 1970年
中嶋啓雄『モンロー・ドクトリンとアメリカ外交の基盤』ミネルヴァ書房2002年

高木 淳太

テーマ

TPP交渉と日米関係

概要

TPP交渉は、日米両国合わせたGDPが交渉参加国のGDP合計の9割を占める、事実上の日米交渉である。TPP交渉の中で日本とアメリカがお互い異なる事情を抱えながら、どう交渉してきたのか、論文ではTPP交渉を通じての「日米関係」を考察している。
前半で両国がTPP交渉に参加した背景を述べ、後半でTPP参加による日本への影響、そして日本市場でアメリカが狙っている保険、医療について述べている。そして今後、TPP交渉妥結に向けて日本がアメリカとどう交渉していくべきなのか、自らの見解を示している。
主要参考文献 『薄氷の帝国アメリカ』 延近充 御茶の水書房 2012年
『TPPと日本の選択「投資立国」化と「歴史的円高」の中で考える』 三島徳三 筑波書房 2012年
『TPPと日米関係』田中祐二 内山明 晃洋書房 2012年

仲谷 侑起

テーマ

震災と経済

概要

2011年3月11日14時46分、東北地方太平洋沖に大きな揺れが襲った。本論文では、巨大複合災害である東日本大震災の今までに無い複合災害という性質を明らかにしていく。その上で、直近の都市型震災である阪神淡路大震災と比較しながら、東日本大震災の影響を経済的な観点から考察し、加えて首都直下地震が起こった場合の経済的な被害の推測について見ることにする。そして終章では、現代資本主義において地震大国としての日本が抱える問題、原子力発電のこれからについても探っていく。
主要参考文献 佐竹健治編 『東日本大震災の科学』 東京大学出版会、2012
井村喜代子 『現代日本経済論〔新版〕―戦後復興、「経済大国」、90年代大不況―』 有斐閣 1993
馬奈木俊介 『災害の経済学』 中央経済社、2013

長門 拓郎

テーマ

1970年代の日本の「躍進」から学ぶべきこと

概要

 本論文の構成は以下の通りである。まず第1章にて1970年代に起きた二つのショック,ニクソンショックと石油ショックが起こった経緯をまとめ,さらにそれらを原因とする1974・75年代不況についてもまとめる。 次の第2章においては,日本がこの危機を乗り切り,例外的に「躍進」していくことになったカギを,3つの柱「減量経営」「高性能な技術開発」「集中豪雨的輸出」に分類して論じていく。 第3章では,ここまでで踏まえた「躍進」がもたらした負の影響について明らかにした。この章で取り扱った負の影響は,輸出依存型体質の定着と,原子力発電に関する問題「効率化を求めすぎて失ったもの」と,大きく二つのトピックをとりあげた。しかし,この二つ以外にも負の影響をもたらしたものは存在する。
主要参考文献 井村喜代子,『現代日本経済論[新版]』,有斐閣,2001年
延近充,『薄氷の帝国 アメリカ』,御茶の水書房,2012年
橋本寿朗他,『現代日本経済[新版]』,有斐閣アルマ,2012年

藤原 薫

テーマ

東京一極集中はどのように形成されたのか

概要

第二次世界大戦後,経済成長を遂げ,経済大国となった日本。しかし国内では地域間での経済の格差が広がっており、特に経済成長の中心となる東京圏には政治・経済・人口など様々な要素が集中する「一極集中化」がおきている。なぜ日本においてだけ首都に一極集中するという現象がおきているのか。第二次世界大戦後の国土計画の変遷と影響や、三大都市圏の比較から東京一極集中に至った経緯を明らかにする。
主要参考文献 井村喜代子,『現代日本経済論−戦後復興,「経済大国」,90年代大不況−{新版}』有斐閣,1993
竹内淳彦ほか,『日本経済地理読本』,東洋経済新報社,2014
川上征雄『国土計画の変遷−効率と衡平の計画思想−』鹿島出版会,2008

發田 惇

テーマ

銀行系大手証券会社の設立過程と課題

概要

 戦後からバブル崩壊までの日本の証券界は、「野村・大和・日興・山一」の四大証券が大きなシェアを争っていた。 しかし、1997年以降、四大証券会社を中心とした業界地図は大きく塗り替えられることとなった。 現在は、「野村證券・大和証券・SMBC日興証券・三菱UFJモルガン・スタンレー証券・みずほ証券」の5つの大手証券会社が5大証券と称されて、日本の証券界を席巻している。本論文では2000年代に入り台頭してきた銀行系大手証券会社設立過程と現在銀行系大手証券会社が抱える課題について考察する。
主要参考文献 奥村宏『徹底検証 日本の三大銀行』七つ森書館,2009
公益財団法人 日本経済証券研究所『日本の証券市場』2014
北村洋基『岐路に立つ日本経済』大槻書店,2010

牧野 高之

テーマ

農地集積の経過と展望

概要

国内農家の多くが零細経営であるという現状が存在する。日本農業の成長産業化には、担い手への農地集積による農業の大規模経営化が不可欠である。現在農地の所有や権利移動に関する法規制が緩和され、大規模農家へと農地が集積する条件はある程度整い、その傾向は確かにみられるが、その速度は極めて緩慢であるが、大規模農家が中心となるという政策目標にはほど遠い。本論文では農地集積を阻害した要因について、零細経営の始まりである戦後農地改革にまで遡り、高度経済成長が農地集積へともたらした影響を中心に論ずる。
主要参考文献 井村喜代子,『現代日本経済論―戦後復興,「経済大国」,90年代不況―(新版)』,有斐閣2000年.
速水佑次郎・神門善久,『農業経済論(新版)』,岩波書店,2002年.
有本寛・中嶋晋作『農地の流動化と集積をめぐる論点と展望』,農業経済研究,第82巻,第1号,2010年.

松本 啓秀

テーマ

民間医療保険の問題点

概要

2010年3月、オバマ大統領は医療改革法に署名し、アメリカではじめて国民皆保険制度の導入が決定した。しかし、議会予算局の見積もりでは、2019年時点で2200万人が無保険者として取り残される。そこで、アメリカの医療保険制度の構造を歴史的展開や経済的背景から理解し、国民皆保険である日本の医療保険と比較しながら、なぜ多数の無保険者をつくり出してしまうのかを明らかにする。
主要参考文献 天野拓,『オバマの医療改革』,勁草書房,2013
延近充,『薄氷の帝国アメリカ』,御茶の水書房,2012
堀田一吉,『民間医療保険の戦略と課題』,勁草書房,2006

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