延近研究会 卒業論文概要
(第22期生)

慶應義塾大学経済学部  延近研究会卒業生の卒業論文の概要と主要参考文献です。
卒業論文とともに提出された本人作成の概要を
原文のまま掲載しています。

池田 夏樹

テーマ

国内製造業空洞化の現状と展望―「経済の弱化なき空洞化」を目指して―

概要

日本の製造業における「空洞化」は年々進行しており、容易には解消されない。今後も付きまとう現象だとすれば、「経済の弱化なき空洞化」を目指して前向きにとらえる努力が必要だ。本論文では、「空洞化」について、その実態と,経済に与える効果を確認し、また、その問題に至った経緯に着目し、日本における展望と課題,そして採るべき施策の方向性を検討していく。
主要参考文献 井村喜代子『現代日本経済論―戦後復興,「経済大国」,90年代大不況』新版,有斐閣,2000年
延近充『薄氷の帝国アメリカ―戦後資本主義世界体制とその危機の構造』御茶の水書房,2012年
深尾京司・袁堂軍「日本の対外直接投資と空洞化」独立行政法人経済産業研究所『RIETI Discussion Papers』2001年

石間 裕基

テーマ

銀行と平成不況

概要

世界に類を見ない経済成長を遂げ経済大国となった日本だが、その産業の発展の基礎は、銀行が担っていた。
銀行は、日本の金融の特徴である間接金融で産業の発展に寄与してきた。一方、バブル経済期には不動産融資を拡大させ、バブル崩壊とともに膨大な不良債権を抱え、深刻な金融不況の一因を作った。このように銀行は、日本経済において重要な役割を果たしてきた。
本論文では、日本経済の発展で銀行が果たした役割を歴史的に追っていき、銀行が担った平成不況の一員を探っていく。
主要参考文献 井村喜代子、『現代日本経済論〔新版〕戦後復興、「経済大国」、90年代大不況』、有斐閣、1993年
井村喜代子、『日本経済−混沌のただ中で』、勁草書房、2005年
相沢幸悦、『戦後世界と日本資本主義B 戦後日本資本主義と平成金融“恐慌”』、大月書店、2010年

小川 聡

テーマ

日本・中国・韓国の輸出競争力強化

概要

日本,中国,韓国の3ヶ国において,それぞれの国がどのような経緯で輸出のための競争力をつけたかを分析し,どのような国とどのような製品で貿易をしたのか,またなぜその製品が輸出競争力となったのかを分析する.この際に注目する時点は三カ国が国際的な競争力をつけ,貿易黒字国になり,貿易収支の黒字が一年だけではなく複数年にわたって安定して続くようになるまでとする.更に三カ国を比較検討することで,国家が輸出競争力をつけていく際のプロセスについてその原因となるものを考察し,日本の貿易についての現状にも触れてゆく.
主要参考文献 井村喜代子『現代日本経済論』 有斐閣 (2005)
佐野孝治『韓国経済へのベトナム戦争の影響 』三田学会雑誌84巻4号pp203-230 (1992)
大橋英夫  『シリーズ現代中国経済5 経済の国際化』 名古屋大学出版会 (2003)

風間 啓

テーマ

日本企業における株主の意義の変質

概要

近年増加する「もの言う株主」の騒動から株主というものに興味を抱き、今回の研究に着手した。
論文の流れとしては大きく2つに分け、前半では戦後の株式相互持合いを中心とした日本企業の株式所有構造に着目して論じる。後半では金融自由化・国際化以後の外国人投資家が急増した株式所有構造に着目し、それまでとの違いが企業経営にどのような変化をもたらしたのかを明らかにする。
主要参考文献 『現代日本経済論〔新版〕戦後復興、「経済大国」、90年代大不況』井村喜代子 2000年 有斐閣
『薄氷の帝国アメリカ 戦後資本主義世界体制とその危機の構造』延近充 2012年 御茶の水書房
『最新版 法人資本主義の構造』奥村宏 2005年 岩波書店

小林 祐輝

テーマ

日本金融市場の展望〜日米の金融自由化・国際化の歴史からの考察〜

概要

これまで日本政府は金融自由化・国際化を推進し,金融市場は急速に拡大してきたが,1990年代以降の長期停滞を見れば,金融市場の拡大が実体経済の成長につながってこなかったと言える。金融市場が実体経済と複雑に絡み合う現在で,なぜ日本の金融市場は実体経済の成長につながらなかったのか,金融市場の拡大を実体経済の成長につなげてきたアメリカの金融自由化・国際化と比較することでその理由を考察する。そして、日本金融市場の未来を推察した。
主要参考文献 延近充 『薄氷の帝国アメリカ―戦後資本主義世界体制とその危機と構造―』 御茶の水書房 2012
井村喜代子 『現代日本経済論〔新版〕―戦後復興、「経済大国」、90年代大不況―』 有斐閣 1993
公益財団法人 日本証券経済研究所 『図説アメリカの証券市場2013年版』 2013

小松 拓司

テーマ

中小製造業の抱える問題の現状と展望

概要

中小製造業の抱える問題、主に大企業の海外進出に伴う影響・独占支配下での不平等取引・金融機関の貸し渋りの現状と原因について、歴史的経緯を見て分析していく。具体的には1960年代から始まった合理化投資・85年のプラザ合意による急激な円高とその後の日本の対応・90年代初めのバブル崩壊が、どのような影響を与えたのか分析し、これを踏まえて中小企業の展望を述べていく。
主要参考文献 井村喜代子『現代日本経済論』 有斐閣 2000年
中小商工業研究所『現代日本の中小商工業』 新日本出版社 1999年 
西田卓馬『製造業と経済の発展』 白桃書房 2005年

先名 功樹

テーマ

日中関係の歴史展開とこれからのあるべき姿

概要

中国は1979年に改革開放を開始し、外資導入を通じて驚異的な経済発展を遂げ、現在ではアメリカに次ぐ世界第2位の経済大国となっている。この経済発展は外資、特に日本を抜きにしてはあり得なかった。日本は円借款をはじめとした多くの経済協力を展開し、中国の経済発展に貢献した。しかし、最近では政治的な問題が多く発生し、日中関係は悪化の一方である。だが、お互いの経済発展のためには良好な日中関係は欠かせなく、今こそ健全な関係を築きあげ、日中両国で世界経済を引っ張っていくべきだと考える。
主要参考文献 南亮進・牧野文夫、『中国経済入門』、日本評論社、2012
服部健治・丸川知雄、『日中関係史1972-2012 U経済』、東京大学出版会、2012
丸川知雄、『現代中国経済』、有斐閣、2013

田代 麻美

テーマ

アメリカ学資ローン市場における貧困ビジネスの実態

概要

日本をはじめとする先進国は工業化を推し進めることで豊かな暮らしを実現したが、その過程で資源を消費し、環境に負荷をかけてきた。
本論文は、地球規模に拡大した環境「貧困ビジネス」という言葉がここ数年でメディアで取り上げられるようになった。しかし、それは日本に限った話でなく世界一の大国アメリカでも議論を呼ぶ問題となっている。本論文では、数ある貧困ビジネスの中でも学資ローン市場における貧困ビジネスを取り上げ、学資ローン市場において何が起こっているのか、そしてそれがどのような背景で生み出されたのかを明らかにする。破壊の原因は本当に先進国と途上国で共通のものであるのか、ということに始まり、被害規模の大小に関わらず、世界で起きている公害なども含めた環境破壊の多くは、先進国や先進国企業の責任であるということを明らかにしようとしたものである。
主要参考文献 大塚秀之 『格差国家アメリカ―広がる貧困、つのる不平等―』 大月書店 (20007)
堤未果 『ルポ貧困大国アメリカ』 岩波新書 (2008)
延近充 『薄氷の帝国アメリカ―戦後資本主義世界体制とその危機の構造』 御茶の水書房 (2012)

中野 雄太

テーマ

「シェール革命」は「革命」と言えるのか?

概要

石油からシェールガスへの主要なエネルギーの大転換のことをメディアは「シェール革命」の名称で報道しているが、はたして「シェール革命」は「革命」と言えるのかについて考察する。革命に至った経緯と革命が人々の社会・文化・経済に与えた影響ついて、産業革命と情報通信革命を代表例として論じ、「シェール革命」と比較する。最後に、「シェール革命」が産業革命と情報通信革命に匹敵する革命ではないことを明らかにした上で批判的に論じる。
主要参考文献 井村喜代子 『現代日本経済論』(有斐閣, 2005年)
延近充 『薄氷の帝国 アメリカ』(御茶の水書房, 2012年)
長谷川貴彦 『産業革命』』(山川出版社, 2012年)

松苗 隼平

テーマ

再生可能エネルギーについて―転換の意義・課題・方策―

概要

本論文の課題は、再生可能エネルギーへの転換が持つ意義、転換へ向けての課題、そしてその課題を克服するための方策を明らかにすることである。そのためにまず、従来のエネルギー政策の在り方とそれが引き起こした諸問題を明らかにし、再生可能エネルギーへの転換が持つ意義を主張する。そして、従来のエネルギー政策を踏まえた上で、再生可能エネルギー普及に向けた課題を明らかにし、その課題克服のための方策を考察し、提案していく。
主要参考文献 井村喜代子『現代日本経済論[新版]―戦後復興、「経済大国」、90年代大不況―』有斐閣 1993年8月
遠州尋美『低炭素社会への選択―原子力から再生可能エネルギーへ―』法律文化社 2010年1月
千葉恒久『再生可能エネルギーが社会を変える―市民が起こしたドイツのエネルギー革命―』現代人文社 2013年2月
西脇文男『再生可能エネルギーがわかる』日経文庫 2012年1月

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