延近研究会 卒業論文概要
(第19期生)

慶應義塾大学経済学部  延近研究会卒業生の卒業論文の概要と主要参考文献です。
卒業論文とともに提出された本人作成の概要を
原文のまま掲載しています。

一柳 達哉

テーマ

戸別所得補償制度にみる日本農政の問題点

概要

平均的な日本の農業の姿は海外に比して一戸当たりの耕作規模が小さく、
生産効率が悪いという低収益産業である。
この論文の目的は日本農業の振興という視点から2010年、民主党政権下で施行された戸別所得補償制度を評価し、
この制度が日本の戦後農業史の中にどのように位置づけられるかを確認するとともに、
これまで日本農業振興を阻害してきたものの正体を明らかにして日本農業の発展の為に
必要な施策を明らかにすることにある。
主要参考文献 井村喜代子,『現代日本経済論』,有斐閣,2005
北出俊昭,『食料・農業の崩壊と再生』,筑波書房,2009
暉峻衆三 他,『日本資本主義と農業保護政策』,御茶ノ水書房,1990
村田泰夫,『個別所得補償制度の衝撃』,農林統計協会,2010

岡崎 雄太

テーマ

日本における所得格差と貧困の拡大‐最適な政府規模とは‐

概要

昨今の日本では、米・英にならった「小泉路線」と呼ばれる市場第一主義によって、所得格差及び貧困が拡大したと言える。
私はこの格差と貧困の拡大に問題意識を抱き、本論文では貧困をなくした国である北欧スウェーデンの政府規模の大きさに触れ、その政策を参考にすることで、日本政府にとっての最適な政府規模を模索し、結果として日本の格差を是正することはできないのか、ということを考察していく。
主要参考文献 竹崎孜 『貧困にあえぐ国ニッポンと貧困をなくした国スウェーデン』(あけび書房 2008年)
井堀利宏 『「小さな政府」の落とし穴−痛みなき財政路線は危険だ−』(日本経済新聞出版社 2007年)
牧野富夫・村上英吾「格差と貧困がわかる20講」(明石書店 2008年)

小泉 和邦

テーマ

日本の「経済と環境の両立への道」

概要

日本の環境政策は積極的に行われているとは言い難い。本論文では、その根本的原因を、「環境対策は企業の競争力を削ぐ」という産業界の認識、また「経済成長のため企業の負担軽減を最優先する」という政府の戦後一貫した姿勢にあると捉え、それらを批判すると同時に、「環境政策に積極的に取り組むことこそが日本経済に活況化をもたらす」ことを説明する。また、経済成長と温室効果ガス排出削減の両立に向けて、導入されるべき制度の設計図を示し、日本の「経済と環境の両立への道」を考察する。
主要参考文献 諸富徹・浅岡美穂, 『低炭素経済への道』, 岩波新書, 2010
門脇重道, 『技術発達のメカニズムと地球環境の及ぼす影響』, 山海堂, 1992
森谷正規, 『温室効果ガス25%削減は実現できる』, 東洋経済新報社, 2010

橋 一八

テーマ

所得格差と教育格差の相互促進的進展とその影響

概要

現代の日本では,格差が拡大していると言われ,ひとつの社会問題となっている。
私はこの格差の中でも,所得格差と教育格差について,それぞれを分析した。
また,所得格差と教育格差は相互が促進関係にあるとして,それがどのようなメカニズムを持って,影響しあうのかを明らかにする。
さらに所得格差と教育格差が相互促進的に進展していくことによって,貧困層を固定化してしまい,一度,貧困層に陥るとそこから抜け出せないことについて説明する。
主要参考文献 井村喜代子,『現代日本経済論』,有斐閣,2000
橘木俊詔,『日本の経済格差』,岩波新書,1998
苅谷剛,『学力と階層』,朝日新聞出版,2008

高橋 雅典

テーマ

日本電気機械産業における国内生産基盤空洞化の可能性

概要

 現在の円高趨勢・日本の市場規模縮小・新興国の躍進という状況下においては、日本の主要産業である電気機械産業は、生産基盤の海外移転による空洞化の危険に晒されていると言えよう。もし、大規模な空洞化が進行してしまえば、多くの雇用と設備投資が失われてしまうことになり、日本経済に甚大な被害をもたらすこととなる。そのため、本論文では、日本の電気機械産業において国内生産基盤の空洞化が現在起こりつつあるのか、もしくは、近い将来にその危険があるのかを検証し、これからの日本がどのような道を進むべきか提言する。
主要参考文献 井村喜代子 『現代日本経済論』 有斐閣 2000年
        『日本経済‐混沌のただ中で』 有斐閣 2005年
伊丹敬之 『空洞化はまだ起きていない』 NTT出版 2004年
丸山恵也,他『日本の製造業を分析する』 唯学書房 2010年

谷本 暁俊

テーマ

金融工学を過信した投機のもたらした現実

概要

著しく金融工学が発達するなかで、さまざまな金融商品が開発され、またその理論を駆使した収益目的の投機取引が拡大した結果、世界はサブプライム問題に端を発する世界的金融危機に飲み込まれた。そこでは誰もが金融工学の理論を盲目的に過信し、マネーゲームに熱狂していた。ところが実際には、金融工学の理論は誰が考えてもマネーゲームに用いるには、非常に危うい条件の上で成り立っている。今後、金融工学は正しい利用のもとで実社会において有用なる目的で利用され、発展させられるべきであり、これまでのような投機目的での利用に終止符を打つ必要がある。
主要参考文献 井村喜代子、『世界的金融危機の構図』、勁草書房、2010年
土方薫、『リスクをヘッジできない本当の理由』、日本経済新聞出版社、2009年
中空麻奈、『早わかりサブプライム不況』、朝日新書、2009年

寺岡 修平

テーマ

Google検索エンジン市場独占問題

概要

インターネットで情報を得ようとするとき、まず考え付くのがGoogleをはじめとした検索エンジンであろう。今やインターネットを利用する上で無くてはならないものとなっている。
しかし、現在この検索エンジン市場においてGoogleが世界的にシェアを伸ばし、独占といっても過言でない状況にある。ドイツをはじめとするヨーロッパ諸国では90%近いシェアを握っており、日本においても2010年7月にYahoo!JPANとの提携が発表され、国内シェア9割を実質的に握ることとなる。そこで本論文では、Googleの検索システムが持つ問題点、市場独占によって生じる弊害を把握し、分析することを目的としている。
主要参考文献 竹内一正、『グーグルが日本を破壊する』、PHP研究所、2008年
アレクサンダー・ハラヴェ、訳:田畑暁生、『ネット検索革命』、青土社、2009年
牧野二郎、『Google〜開かれた検索システムのために〜』、岩波書店、2010年

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