延近研究会 卒業論文概要
(第18期生)

慶應義塾大学経済学部  延近研究会卒業生の卒業論文の概要と主要参考文献です。
卒業論文とともに提出された本人作成の概要を
原文のまま掲載しています。

荒木 智哉

テーマ

「貧困と一次産品貿易〜タンザニアのコーヒー流通を通じて〜」

概要

世界からいまだになくならない貧困。本論文では、貧困の問題を「一次産品貿易」という視点を通じて考えていく。
まずは一次産品貿易全般を包括的に見ていくことで、その実態を把握し、問題点を理解する。
次いで具体的にタンザニアのコーヒー生産を取り上げ、そこで行われた構造調整政策(自由化)がコーヒー農家を苦境に追い込んだことを解明する。
そしてそこでの議論を踏まえ、一次産品貿易(本論文ではコーヒー)が貧困解消に寄与できるような政策を考えていく。
主要参考文献 辻村英之,『コーヒーと南北問題』,日本経済評論社,2004年
オックスファム・インターナショナル,『貧富・公正貿易・NGO−WTOに挑む国際NGOオックスファムの戦略−』,新評論,2006年
平島成望他,『一次産品入門』,アジア経済研究所,1990年

市川 隼人

テーマ

投機的取引抑制と金融危機の防止策

概要

投機的取引が原因で世界中の一般市民が被害を被っているという問題意識を出発点として、何故ここまで投機的が拡大したのかを80年代以降の金融の自由化国際化の歴史的経緯を辿って分析する、そして、分析の上で、こ日の様な金融危機、投機的取引を抑制する為の手だてを考察した。
主要参考文献 『現代日本経済論』 井村喜代子 有斐閣
『BIS規制の嘘』 東谷暁 PHP研究所
『トービン税入門』 ブリュノ・ジュタン 社会評論社 

岩崎 優

テーマ

日本における社会的責任投資と機関投資家の関係

概要

社会の持続的発展のために、社会的責任投資(Social Responsibility Investment=SRI)の必要性が高まっているが、欧米と比較し日本のSRIは投資家の認知度も低く、その規模も圧倒的に小さい。
本論文では欧米と日本の比較を通じ、日本のSRIの発展が相対的に遅れをとる理由、今後のSRIの普及に必要な要素等を、多額の資金を運用する機関投資家との関係を中心に考察する。
主要参考文献 井村喜代子『現代日本経済論』 有斐閣  2005年
谷本寛治『SRIと新しい企業・金融』 東洋経済新報社 2007年
安達英一郎 金井司『CSR経営とSRI』 金融財政事情研究会 2004年

柏木 佑介

テーマ

日本におけるワークシェアリングの可能性

概要

雇用調整の新たな手段として注目を集めているワークシェアリングについて日本の雇用の現状、日本型雇用慣行の変化を追って今日の日本でどのような形が望ましいかを検討する。戦後の新自由主義的な規制緩和によってもたらされた雇用の処遇格差とそれに対抗する成功例としてオランダの多様就業型ワークシェアリングの意義に着目し、現状の日本の政労使のそれぞれの立場を踏まえて導入の可能性について吟味してみたい。
主要参考文献 熊沢誠 『リストラとワークシェアリング』  岩波書店2003年4月18日
脇坂明 『日本型ワークシェアリング』  PHP研究所2002年5月29日
根本孝 『ワークシェアリング『オランダウェイ』に学ぶ日本型雇用革命』  ビジネス社2002年2月1日

栗山 和也

テーマ

日本の年金 〜低年金者対策の必要性〜

概要

 近年、経済的に国民年金保険料を払うことが出来ない者、また低所得者を中心に意図的に保険料を支払わない者が増加し、無年金者は118万人いると言われている。またこの傾向は今後も続くと考えられ、将来的な低年金者の増加が懸念されている。
 本論文では低年金者が増加傾向にある要因を探るとともに実態を把握し、低年金者への対策の必要性を論じた上で、その対策としてどのような選択肢が存在するのかを検証したい。
主要参考文献 井村喜代子,『日本経済―混沌のただ中で』,勁草書房,2005
伊東光晴,『日本経済を問う―誤った理論は誤った政策を導く』,岩波書店,2006
西沢和彦,『年金制度は誰のものか』,日本経済新聞出版社,2008

佐治 逸郎

テーマ

日本のODA 〜歴史分析を通じて近年の官民協調体制のありかたを考察する〜

概要

日本のODAの歴史分析を通じて日本型経済協力の特徴を分析し、民間企業が途上国開発の分野で果たしてきた役割を明らかにする。その際、日本の援助開始をアメリカの冷戦戦略の中で捉えることやひも付き援助など道義的でない部分に注目する。こうした歴史分析のうえで近年のODA官民協調体制の現状を把握し、今後の発展について、ODAのあるべき姿に対する自分なりの意見とともに論じる。
主要参考文献 渡辺利夫/三浦有史 『ODA 政府開発援助 日本に何ができるか』中公新書2003年
草野厚 『日本はなぜ地球の裏側まで援助するのか』朝日新書 2007年
C.K. Prahalad 『ネクスト・マーケット』英治出版 2005年

木 勇輝

テーマ

大学の資産運用と今後

概要

今回の金融危機によって多くの私立大学の資産運用による損失が報じられた。大学とは本来、学生に学習・研究を提供する公共性の高い団体であるにも関わらず、このような事態に発展してしまった。本論文では、私立大学の資産運用を中心としてその実態を調査し、なぜ大学は従来よりもリスクを伴う金融商品に手を出したのか、その背景について大学を取り巻く環境変化、国からの大学に対する補助金の観点から考察する。
主要参考文献 ・草原克豪 『日本の大学制度―歴史と展望』 草原克豪 弘文堂 2008年
・守屋俊春 『大学経営論 大学が倒産する時代の経営と会計』  東洋出版 2009年
・日本私立大学連盟 『私立大学マネジメント』  東信堂 2009年

塚田 翔子

テーマ

住民にとって住みやすいまちづくりとは―コンパクトシティの可能性―

概要

郊外へスプロールした街、駅前に広がるシャッター通り、ニュータウンのオールドタウン化…いまの日本は住みやすい街とは程遠い。このような街を、住みやすい街、魅力溢れる街、そして持続可能な街へと変えうる政策として、近年日本でも頻繁に取り上げられているのが、コンパクトシティ政策である。本論文では、コンパクトシティの日本における可能性について論じていく。
主要参考文献 井村喜代子『現代日本経済論』有斐閣、2005年
海道清信『コンパクトシティ―持続可能な社会の都市像を求めて―』学芸出版、2001年
G.B.ダンツィク、T.L.サアティ『コンパクトシティ』日科技連出版社、1974年

那須 創

テーマ

食料自給率低下によって日本が抱える危機とその対策

概要

日本の食料自給率の低さに注目し、自給率が低下することによって発生する危機、弊害を提示する。
また、その根拠を現在、将来における世界の食糧事情を背景に考える。
また年代ごとに日本が自給率を低下させてきた原因を考察して日本が自給率向上のために解決すべき問題を探す。
その後、提示された問題から日本がとっている対応策やまだ実践されていないが検討されている対応策を示す。
以上を以って日本は自給率を向上させる必要性があることを訴える。
主要参考文献 井村喜代子 『現代日本経済論〔新版〕』 有斐閣 2000年
浜田和幸 『食糧争奪戦争』 学習研究社 2009年
島崎冶道『食料自給率100%を目ざさない国に未来はない』 集英社 2009年

藤原 知秀

テーマ

日本水産業の現状と展望

概要

今日、日本において水産業は年々その規模を縮小させ、高齢化の進行も著しいなど、紛れもなく衰退産業のひとつに数えられている。
本論分ではそんな水産業の現状を実際の数値を用いながら分析、考察する。また、今日に至るまでの水産政策の動向、そして国際的な数量規制等それを取り巻く環境の変化を取り上げ、業界の抱える問題を浮き彫りにし、同時に今後業界が存続していくに当たって進むべき方向性を模索する。
主要参考文献 漁業経済学会『漁業経済研究の成果と展望』成山堂書店、2005年
日高 健『都市と漁村 ―新しい交流ビジネス―』成山堂書店、2007年
山下 東子『魚の経済学』日本評論社、2009年

松田 昌幸

テーマ

非正規雇用の活用と輸出依存的成長について

概要

 リーマン・ショックを契機として、非正規雇用者の解雇・雇い止めが増加し、多くの職を失った非正規雇用者たちが路上へと放り出されたことがメディアで大きく取り上げられた。しかし、非正規雇用の活用は輸出拡大に大きく貢献したのも事実であり、非正規雇用者の正規雇用化については賛否両論ある。
 私は従来の日本の成長モデルを分析することで、この二項対立に終止符を打ち、日本のこれからのあるべき姿について提言したい。
主要参考文献 井村喜代子著,『現代日本経済論』,有斐閣,2000
井村喜代子著,『日本経済―混沌のただ中で』,勁草書房,2005
山家悠紀夫著,『暮らしに思いを馳せる経済学―景気と暮らしの両方を考える』,新日本出版社,2008

湯澤 莉紗子

テーマ

日本の貧困と生活保護

概要

日本には困窮する全ての国民に対して、最低限の生活を保障する生活保護という制度があるが、貧困で苦しんでいる人々は近年増加傾向にある。
これらの問題は、一つの政策を打ち出しただけでは解決できない。そのため、最後のセーフティーネットである生活保護を正常に機能させることが早急に取り組むべき課題であると考えた。本論文では、日本の貧困の実態を把握した上で、生活保護を正常に機能させるための施策を考える。
主要参考文献 『現代の貧困-ワーキングプア/ホームレス/生活保護』2007年 岩田正美 ちくま新書
『格差・貧困と生活保護』2007年 杉村宏 明石書店
『貧困連鎖−拡大する格差とアンダークラスの出現』2009年 橋本健二 大和書房
『反貧困‐「すべり台社会」からの脱出』2008年 湯浅誠 岩波新書

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