延近研究会 卒業論文概要
(第16期生)

慶應義塾大学経済学部  延近研究会卒業生の卒業論文の概要と主要参考文献です。
卒業論文とともに提出された本人作成の概要を
原文のまま掲載しています。

足立 光

テーマ

日本の労働市場における団塊世代の定年退職

概要

団塊世代の定年退職によって日本の労働市場がどのような影響を受けるかを考察する。団塊世代の就業構造を把握した上で,退職による企業・労働者それぞれの問題の有無を検討する。企業に関しては技術継承問題について,労働者については定年退職後の再雇用について考察した上で,それぞれの問題は存在するのか,また存在した場合,それは解決が困難なのか,それとも解決可能なのかを分析する。また、企業がどのような対策を行おうとしているのか,行政は今後どのような対応が必要かを考えていく。
主要参考文献 樋口美雄『団塊の世代の定年と日本経済』,日本評論社,2005
原田泰『2007年団塊定年!』,日本経済新聞社,2006
井村喜代子『現代日本経済論 新版』,有斐閣,2000
井村喜代子『日本経済―混沌のただ中で』,勁草書房,2005

稲葉 章朗

テーマ

日本製造業の現状とこれから

概要

日本で空洞化が叫ばれている。空洞化問題は最近の事ではない。1980年代後半にもあり、プラザ合意以降の円高基調の定着、貿易摩擦の激化などを背景に日本企業の生産拠点の海外展開が活発化した。バブル期の内需拡大もあり議論は沈静化した。1990年代後半からの産業空洞化は要因が異なっている。円高というより中国要因である。中国台頭による工場流出である。中国のWTO加盟以後、中国への直接投資が増加し中国進出が続いている。日本国内は長期不況が続き失業率も5%台で高止まりしており、産業空洞化への不安が高い。
主要参考文献 井村喜代子 『現代日本経済論』 有斐閣 2000年1月
関 満博 『現場発 ニッポン空洞化を超えて』 日経ビジネス人文庫 2003年5月
伊丹敬之 『空洞化はまだ起きていない』  NTT出版 2004年6月

小澤 慶

テーマ

日本における「ニート」の分析

概要

不安定雇用層が社会問題となる中,自己責任原則の繁茂と新自由主義的政策の推進により,労働供給側の問題へと原因を還元しようとする言説・研究の多い「ニート」に対して特に焦点を当て,正確に「ニート」の現状を把握することを目的として,量的・質的に分析する.また,「ニート」に代表される不安定雇用層に対し,「独占資本主義論」を援用しつつ,その発生原因を分析し、「ニート」は資本主義体制に普遍的な矛盾のひとつの発現形であることを論じる.
主要参考文献 本田由紀 内藤朝雄 後藤和智『「ニート」って言うな!』光文社新書,2006年
常盤政治・井村喜代子・北原勇・飯田裕康「経済原論」有斐閣,1993年
井村喜代子「現代日本経済論」有斐閣,1993年

倉谷 雅人

テーマ

電子マネーの質的変化

概要

わが国の電子マネーは、普及するまでにかなりの時間を要したが、急激に発展している。この発展は、商業的には一つの商用サービスの拡張ととらえることが出来るが、これを貨幣の面から眺めると、様々な問題を内包している。特に最近では汎用性の増加などの質的変化が生じており、これらを貨幣進化の上でどう捉えるかは重要な問題である。この最近の電子マネーの質的変化を考察し、それを踏まえて今後の検討課題を考えていく。
主要参考文献 片岡義弘 『プリペイドカード方の手引き』 シーメディア 2002年
竹内一正 『電子マネーのすべてがわかる本』 ぱる出版 2007年
J・ヒックス 『貨幣論』 東洋経済新報社 1972年

品川 翔

テーマ

日本における外国人労働者受け入れ問題

概要

近年、わが国では少子高齢化によって引き起こされると予想される労働力不足への懸念を背景とした、外国人労働者の受け入れ拡大に関する議論が活発化してきている。
そこで外国人労働者の受け入れに対する日本政府・および日本企業の主張を様々な角度から分析・検討し、80年代後半の好況と90年代大不況が日本の労働市場にもたらした影響を踏まえながら、外国人労働者の受け入れの是非について示してく。
主要参考文献 井口 泰 『外国人労働者新時代』 ちくま新書 2001年
高梨 昌 『外国人労働者問題と人口減少社会の雇用戦力』 財団法人社会経済生産性本部 生産性労働情報センター 2005年
井村 喜代子 『現代日本経済論』 有斐社 1993年

高野 智久

テーマ

シュンペーターにおける資本主義論

概要

構造改革が目標とするところの「イノベーション」という言葉を発した経済学者シュンペーターは、「資本主義はその成熟を以て崩壊す」、と述べていた。
彼の論じた資本主義の発展論と崩壊論を、資本主義を批判的にとらえるマルクス経済学,独占資本主議論における資本主義の発展と崩壊と比較し、その上で現在の日本に目をむけ、問題点を考察する。
主要参考文献 J・A・シュンペーター 八木紀一郎訳「資本主義は生きのびるか」2001年名古屋大学出版会
井村喜代子「日本経済混沌のただ中で」2005年 けい草書房
常盤政治 井村喜代子 北原勇 飯田裕康「経済原論」1980年 有斐閣

中川 和洋

テーマ

夕張問題に見る地方財政システム

概要

近年,北海道夕張市が財政破綻から財政再建団体に指定され,債権のための住民の負担などがクローズアップされた。本論文では,北海道夕張市の財政再建団体への指定という,地方格差の一面とも言える事例を,第1章にて田中角栄氏による「日本列島改造論」,第2章にて中曽根康弘氏による「民活政策」,第3章にて小泉純一郎氏による「聖域なき構造改革」という視点から分析する。
この際に,分析視角としては,田中角栄氏による日本列島構造論を基にした政策で,地方で公共事業を行うことで経済成長を目指すという形が作り出され,中曽根康弘氏の政策でそのひずみが倍化され,小泉純一郎氏の構造改革で,その構造が変革されるかに思われたが,その変革が完全ではなかったために今回の自治体破綻の引き金となったのではないだろうか。本論分ではこのような分析視角にたち,さらには今後の地方財政システムのあり方についても考える。
主要参考文献 井村喜代子著,『現代日本経済論』,有斐閣,2000年
井村喜代子著,『日本経済―混沌のただ中で』,勁草書房,2005年
上村敏之・田中宏樹編著,『「小泉改革」とは何だったのか〜政策イノベーションへの次なる指針』,日本評論社,2006年
吉川洋著,『構造改革と日本経済』,岩波書店,2003年
田中角栄著,『日本列島改造論』,日刊工業新聞社,1972年

野口 由佳

テーマ

東京の都市「無」計画について

概要

戦後からバブル期(1980〜1990年)を経て現代に至るまでの東京の都市再生の歴史をたどり,特に戦後復興していく時に明確な都市計画はあったのかということを検証すると共に,その都市計画による効果と,一方で都市の「無」計画の問題について述べていく。その後で,東京の都市再生に欠かせない役割を果たす中央区について細かくみていく。さいごに今後の都市計画のあり方について述べていくという構成である。
主要参考文献 井村喜代子著,勁草書房出版,『日本経済 −混沌のただ中で−』
石澤卓志著,東洋経済新報社,『ウォーターフロントの再生』
大崎本一著,鹿島出版会,『東京の都市計画』

花田 秀則

テーマ

広告ビジネスとインターネット

概要

近年インターネット広告が、広告費・シェアともに大きな伸びを見せている。一方でテレビの影響力が低下し、広告効果にかげりが見えてきたのではないかという意見がある。そこで、インターネット広告がここまで顕著な伸びを示している強みは何なのか、さらに新しくインターネットに登場した動画サービスがテレビの影響力を奪っているのかを考え、今後のインターネット広告を考察する。
主要参考文献 井村喜代子『現代日本経済論』有斐閣,2000
菅谷実・中村清『映像コンテンツ産業論』丸善株式会社,2002
神田敏晶『YouTube革命』ソフトバンク新書,2006

藤居 正太

テーマ

不良債権と90年代不況

概要

まず序章では,井村喜代子氏,吉川洋氏の著作から不良債権と90年代不況を総括し,第一章では不良債権を定義し,その発生源探っていきたい.そして不良債権がどのような実態を表し、結果的に10年間という長い期間を要さなければならなかった原因・問題点を第二章で分析し、第三章で不良債権が収束する過程を捉えたい。最後に不良債権問題を通して浮き彫りになった90年代不況の課題を今後の日本経済にどう活かしていくべきかを述べたい.
主要参考文献 井村喜代子,『日本経済―混沌のただ中で』勁草書房2005年
吉川洋,『転換期の日本経済』岩波書店1999年
野口悠紀雄,『日本経済改造論 いかにして未来を切り開くか』東洋経済新報社2005年

三品 萌子

テーマ

不二家問題から同族経営を考える

概要

不二家の起こした、洋菓子に消費期限切れの原料使用という不祥事の原因が、不二家が行っていた同族経営だったかについて検討する。序章、一章で会社における、株式の「所有」と会社の企業活動の意思「決定」、会社の「支配」の仕組みと、会社内での取締役会の機能を明らかにし、二章では同族経営の実態と弊害について述べる。それらを準備とした上で、不二家の歴史と、それぞれの時代の経営者トップ、株式の所有構造を詳しく分析し、同族経営の実態に迫る。
主要参考文献 北原勇 『現代資本主義における所有と決定』 岩波書店 1984年
森田克徳 『争覇の経営戦略 製菓産業史』 慶応義塾大学出版会株式会社 2000年
ロバート・A・G・モンクス 『コーポレート・ガバナンス』 生産性出版 1999年

山下 真由子

テーマ

金融的グローバリゼーション時代の日本のベンチャー

概要

この論文では、日本にベンチャーが起こりにくい要因を、多くのベンチャー企業を生み出しているアメリカの産業構造、金融システム、政府の政策・各種規制などを日本のそれと比較することにより追及し、どこにこれほどベンチャーを育てる要因があったのかを考察していく。現代の日本経済が独占資本主義段階にあり、新たに大規模な市場を開拓できる新生産物・新産業の開発か、既存の生産設備の廃棄を迫る革新的生産方法の開発かがないかぎり経済成長は困難な状況の中で、日本の経済成長を支えるのはベンチャーであるとの観点から、創造的破壊の必要性を説く。また、近年の日本・アメリカにおけるベンチャーの特徴として、金融・IT産業が多くを占める実態から、この産業を重点的に分析していく。
主要参考文献 井村喜代子『現代日本経済論』 有斐閣,2005年
萩原伸次郎『現代アメリカ経済―アメリカン・グローバリゼーションの構造』  日本評論社,2005年
北城 恪太郎『ニッポン「起業」学』  日本実業出版社,2005年

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