延近研究会 卒業論文概要
(第9期生)

慶應義塾大学経済学部  延近研究会卒業生の卒業論文の概要と主要参考文献です。
卒業論文とともに提出された本人作成の概要を
原文のまま掲載しています。

大久保 友美子

テーマ

電子商取引の今後―拠点を生かした―

概要

ここ最近,電子商取引という言葉をよく耳にする。この電子商取引の中でも,私達が身近に感じられることのできる,企業対消費者の取引を扱う。この時注目したのが物流である。インターネットで商品を注文することができたとしても,実際その商品はネットでは運べない。この電子商取引が盛んになって必要不可欠なものは物流である。この時,日本ならではの物流として私はコンビニエンスストアを挙げたい。このコンビニエンスストアという拠点を生かして,日本の電子商取引はどうなるかを日本に先駆けるアメリカを考えながら調べた。

主要参考文献 インターネットビジネス研究会『インターネットビジネス白書 2001』(ソフトバンクパブリッシング,2000年)
ディビット・コーシアー『エレックトロニックコマース』(アスキー,1997年)
宮下正房・中田信哉『物流の知識』(日本経済新聞社,1996年)
郵政省 『平成12年度版 通信白書 』(ぎょうせい,2000年)

勝美 貴裕

テーマ

日本における分配の平等性 〜不平等化メカニズムに関する一考察〜

概要

本論文では機会の平等性を分析視角にして,不平等化の原因を探った。資本主義社会では,所得や富などの格差が生まれること自体は必然である。しかし同時に,高所得者・高資産家が再生産される現実がある。この原因は教育や遺産にあるのだが,両者は生まれ育った家庭が金銭的に裕福か,否かに左右される側面を持つ。従って,生まれる家庭を個人が選べない以上,そこには生まれながらの不平等性が存在する。この不平等性への解決策,今後を述べて,結びとした。
主要参考文献 石川経夫編『日本の所得と富の分配』東京大学出版会 1994年
橘木俊詔 『日本の経済格差』岩波新書 1998年
海野道郎他編 『日本の階層システム』東京大学出版会 2000年

河邉 邦宏

テーマ

日本的雇用慣行のもつ意味―その成立と変化について

概要

第二次世界大戦後,高度経済成長を遂げてきた日本経済の中で機能してきた日本的雇用慣行がどのようなもので,戦後,日本経済が成長していく中でどのように成立し,機能していったのかということと,その日本的雇用慣行に変化が起こりつつある現在,その変化をもたらす要因にはどのようなものがあるのかということについて分析し,論じました。
主要参考文献 井村喜代子『現代日本経済論』有斐閣 1997年
小池和男 『日本の雇用システム』東洋経済新報社 1994年
小野旭 『変化する日本的雇用慣行』日本労働研究機構 1997年

重岡 洋樹

テーマ

現代日本の雇用システムにおける「派遣労働」の役割

概要

昨今の長期不況を背景に,様々な形態で存在する非正規雇用が労働市場において果たす役割は今後更に大きくなる可能性がある。そこで,近年増加が著しい非正規雇用の一形態である「派遣労働」をテーマに取り上げた。派遣労働は,正規雇用者の代替や人件費削減を目的として利用されていると考えられる。そして戦後日本のこれまでの非正規雇用の役割を踏まえた上で,労働市場のなかで派遣労働が果たす役割について検討した。
主要参考文献 戸木田嘉久『「構造的失業」時代の日本資本主義』新日本出版社,1997年
八代尚宏『雇用改革の時代』中公新書,1999年
横井芳弘・角田邦重・脇田滋編『新現代労働法入門』法律文化社,2000年

高橋 正志

テーマ

米国移動体通信市場分析―米国移動電話普及とデジタル化の遅れを探る―

概要

IT革命の牽引役であるアメリカが携帯電話のデジタル化で遅れをとっている。そこで,アメリカ移動体通信の市場競争がいかに促進されているのかを分析する。移動体通信市場の競争促進政策・また競争の現状を比較する。具体的には,周波数政策と業務区分がデジタル化とどのように関係していたかを,日米で比較する。 また,今後のアメリカの移動体通信市場がかかるデジタル化を迎えて,いかなる方向性を歩むかについて展望する。
主要参考文献 福家秀紀『情報通信産業の構造と規制緩和』NTT出版,2000年
菅谷実『アメリカの電気通信政策』日本評論社,1989年

立石 雅士

テーマ

国営企業の民営化とその後 〜電気通信産業における考察〜

概要

日本の電気通信産業は,1985年,1995年からの制度改革によって競争的市場構造へと大きく変わろうとしている。しかし,まだ十分な競争が行われているわけではない。そこには,まだ多くの問題が存在する。そのような問題点の根源を解説するとともに,独占資本主義論との整合性を検証する。そして,これからの電気通信産業を占う上で,欠かすことのできないグローバル化やインターネットの普及,携帯電話の拡大について指摘する。
主要参考文献 福家秀紀『情報通信産業の構造と規制緩和』NTT出版,2000年
北原勇 『独占資本主義の理論』有斐閣,1999年
浅井澄子『電気通信事業の経済分析』日本評論社,1999年

中根 幸恵

テーマ

銀行再編がもたらすもの

概要

バブル経済の崩壊から不良債権の発生,公的資金投入後もなかなかその処理は進まない。 結果,倒産,合併,経営統合によって都市銀行は,4大グループと言われるまでに再編された。旧財閥の垣根を越えた,大合併もある。なぜ,このような,既存の常識では考えられないような大再編が行われるに至ったのか。この4大グループは,今後どのような道をたどっていくのか。そして,この大再編は今後の日本経済に,そして私達の生活にどのような影響を与えていくのだろうか。金融機関の中でも私達の生活に身近な都市銀行の再編を中心に述べていく。
主要参考文献 奥村洋彦『現代日本経済論』東洋経済新報社 1999年
吉田和男『銀行再編のビジョン』日本評論社 2000年
向 壽一『メガバンク誕生』日本放送出版協会 2000年

名島 健太

テーマ

今後の情報通信政策 ―米国との比較分析―

概要

1990年代日米経済が,好況に沸く米国となかなか不況が底打ちしない日本と対照的な状態になってしまった要因として,両国の国の情報通信に対する認識や取り組みの差があったのではないか。このような問題意識から,情報通信改革に取り組んだ日本と米国の情報通信政策の特徴を比較分析した上で,日本の情報通信政策が従来の裁量型規制と呼ばれるものからルール型規制へ転換していく必要性を述べていく。
主要参考文献 白川一郎『グローバル化と進化する情報通信産業』通商産業調査会 1999年
福家秀紀『情報通信産業の構造と規制緩和』NTT出版,2000年
浅井澄子『電気通信事業の経済分析』日本評論社,1999年

服部 雄二郎

テーマ

日本資本主義の構造変化

概要

戦前の戦時統制経済のおける構造変化と,戦後改革のもとでの構造変化を大内力に代表される連続説と山田盛太郎に代表される断絶説とを踏まえながら検証する。さらに新鋭重化学工業の一挙確立から高度成長期に至るまでの間に,いつどのように日本資本主義における日本的特徴,特異性が形成されたのか,それがどのような影響をもたらしているのかという点を考察して,最終的には,今後の日本資本主義の在り方,日本の経済政策の方向性を考えてゆく。
主要参考文献 井村喜代子『現代日本経済論』有斐閣,1993年
大石嘉一郎『日本資本主義史論』東京大学出版会,1999年
伊藤誠『日本経済を考え直す』岩波書店,1998年

前川 貴也

テーマ

不動産証券化発展への課題

概要

バブル崩壊後,依然として閉塞状態にある不動産市場の最大の課題は,内外の投資家から潤沢な投資資金を不動産事業に導き入れることにある。しかし,土地神話が過去のものとなり伝統的な投資家が不動産投資に慎重になった今,従来と異なる新しい投資の在り方や仕組みが求められている。不動産の証券化は,このような時代の要請から必然的に注目されるようになってきた。
このような背景から,不動産の証券化とは一体どのようなもので,どんな意義があるのか,そして良い不動産の証券化とはどのようなものなのかを,この論文では,すでに証券化が行なわれているアメリカなどを参考にして考えていく。
主要参考文献 井村喜代子『現代日本経済論』有斐閣,1993年
財団法人日本不動産研究所『投資不動産の分析と評価』東洋経済新報社,2000年
高梨俊夫『日米の税制改革と租税論の展開』勁草書房,1994年

山口 貴弘

テーマ

日本における小売業の変遷とコンビニエンス・ストア

概要

現在,日本の小売業のみならず我々の生活において重要な位置を占めつつあるコンビニエンス・ストアは,果たしてどのような特徴をもっているのか。また,どのような経緯によって日本に導入され,ここまで拡大を続けてきたのか戦後の小売業の変遷から探る。そして,いまなお変化を遂げつつあるコンビニエンス・ストアの課題も明らかにしたいというのがこの論文のテーマである。
主要参考文献 松原隆一郎『消費資本主義のゆくえ』筑摩書房,2000年
矢作敏行『コンビニエンス・ストア・システムの革新性』日本経済新聞社,1994年
加藤義忠他『小売商業政策の展開』同文館,1995年

山口 雅人

テーマ

ニューエコノミー論を検証する

概要

論文構成としては,序章においてアメリカ経済の現況について概観する。そして,そのような背景をもって出てきたニューエコノミー論とは何なのかを第1章で紹介する。同じ章で,ニューエコノミー論に対し自分なりの定義をし,体系化する。これ以降の章は,この定義に基づいて論文を進める。第2章では生産性上昇に関する議論の検証を行なう。第3章では,労働市場の柔軟化について検証する。そして終わりにで,総合的な結論を出す。
主要参考文献 増淵勝彦『成長のアメリカ経済』日本貿易振興会
関下稔・坂井昭夫『アメリカ経済の変貌』同文舘
『'97米国経済白書』

山崎 茂

テーマ

変化する株主と経営者の関係 〜急増するM&A&Dの背景・ 変化する日本経済構造から,日本企業経営者と株主の関係の変化を考察する〜

概要

昨今,日本において急増するM&A&Dは日本企業の経営のあり方を変えるものである。前半で,これまで日本には馴染まないとされてきたこうした動きが活発化してきた背景を分析する。具体的には,日本の現状を分析し,M&A&Dが活発に行われてきたアメリカのケースと比較検証する。後半で日本企業の経営のあり方を考える。具体的には「所有と経営」の分離が進んできた背景にある日本の経済構造を分析し,現在のそうした構造の変化を検証する。また,こうした議論が過去に活発に行われてきたアメリカのケースをあげ,比較検証する。
主要参考文献 菊地正俊『企業価値評価革命』東洋経済新報社,1999年
菊地正俊『TOB・会社分割によるM&A戦略』東洋経済新報社,2000年
高橋文郎『企業価値を高める投資・財務戦略』東洋経済新報社,2000年

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