延近研究会 卒業論文概要
(第7期生)

慶應義塾大学経済学部  延近研究会卒業生の卒業論文の概要と主要参考文献です。
卒業論文とともに提出された本人作成の概要を
原文のまま掲載しています。

青柳 理恵子

テーマ

外資系企業の日本進出

概要

今日,経営の国際化は加速度的な進展を見せている。日本でも,消費者側から見ても企業側から見ても,外資系企業抜きでは考えられなくなっている。そこでこの論文では,これまでの外資系企業の日本参入の歴史を,規制緩和の過程を追いながらどのような企業が参入してきたかを考察し,今後の新しい展開について考えていきたい。日本は戦後資本自由化をしぶり多くの規制を設けてきたが,外国の技術導入に力を入れて高度経済成長を遂げ,世界が企業再編の時代に突入している現在では,外国企業の対日直接投資を促進させているという姿勢の変化がみられる。
主要参考文献 井村喜代子『現代日本経済論』有斐閣,1996年
桶田篤『外資企業インジャパン PARTU』同文間,1988年
井上隆一郎『外資誘致の時代』1998年

上田 浩司

テーマ

日本的雇用慣行への認識〜日本の歴史的発展を踏まえて〜

概要

日本的雇用慣行と呼ばれる年功賃金,終身雇用。企業別組合の存在を聞くにあたって,その慣行が実際にはどのような状況にあるのかに興味をもち論文に取り組んできたが,その慣行が実際にどのように扱われ,日本経済の進展過程の中で,どう変化を見せたのか。またこの慣習が成立しているという条件の下で原流派なんであるのかを,諸説の引用を踏まえて考察することで,経済合理的側面によるところを述べる。また進展過程における発達と経済の減退が,慣習を非合理的なものとしたことを述べ,賃金の上昇傾向の減退を見ることで,日本的慣行が変容を見せていることと,もともとは経済合理的であったということに触れる。
主要参考文献 井村喜代子『現代日本経済論』
小野旭『変化する日本的雇用慣行』
小池和夫『日本の雇用システム』

酒井 努

テーマ

「外部依存」「基地経済」がもたらしたもの

概要

沖縄の経済を扱っている。沖縄において経済が語られる場合,「自立」と「脱基地」について論ぜられる場合が多い。これは沖縄経済がその歴史的特殊性や基地の存在ゆえに,「外部依存」「基地経済」化しているためである。本論文では,第1章において沖縄経済の現状―すなわち「外部依存」「基地経済」とその問題点について触れる。第2章以下では,上記のような経済構造がどのようにして成立したのかを,時系列的に扱っている。また,沖縄経済・社会を規定する政治の動きについても触れている。時期区分は以下のとおり:第2章1945-1958戦後復興期,第3章1958-1972自由化体制,第4章1972-1995本土復帰以後
主要参考文献 牧野浩隆『再考沖縄経済』沖縄タイムス社,1996年
沖縄国際大学公開講座委員会『沖縄経済の課題と展望』那覇出版社,1998年
新崎盛暉『沖縄戦後史』岩波新書,1976年

高橋 且泰

テーマ

21世紀航空産業に対する政策面からの考察

概要

激動する世界の航空業界の規制緩和の荒波の中で,現在日本の航空業界は非常に苦しい状況の中に立たされている。この論文では,従来日本の航空業界を保護してきた規制に関して,それが今後も必要なのかどうか,理論的にさまざまな側面から考察していくとともに世界的な規制緩和の情勢も考慮に入れながら,21世紀におけるわが国がとるべき航空政策を考える。さらに「現代日本経済論」と照らし合わせながら今までの航空業界の内包していた根本的な矛盾点を探っていこうと考える。
主要参考文献 井村喜代子『現代日本経済論』有斐閣
戸崎肇『航空の規制緩和』勁草書房
『航空輸送要覧』日本航空協会

高柳 麻里

テーマ

地球温暖化問題〜環境保全と経済成長は両立できるか〜

概要

人間は文明・文化を築き,経済発展を遂げた。しかし,この発展の裏で経済発展の行きづまりとなる「環境問題」が発生した。この論文では,環境問題のなかでも地球温暖化について取り上げる。温暖化問題は,さまざまなトレードオフの関係が複雑に絡み合っているため,これらを経済的な面,技術的な面,国際的な面から整理し,環境保全と経済成長は両立できるかという疑問を考察してみた。また,自分なりにこの問題にどのように取り組むべきか,どのように考えるべきかという視点もとり込んでみた。
主要参考文献 宮本憲一『環境と開発 人間の歴史を考える』岩波書店,1992年
『地球環境問題入門』日本経済新聞社,1997年
石弘文・沼田真『環境危機と現代文明』朝倉書店,1996年

中村 豊貴

テーマ

低迷する日本経済を考える〜設備投資を軸にした,高度成長期との比較・検証〜

概要

現在,日本経済は,バブル不況,その後の平成不況と,長引く不況から抜け出せずに低迷している。経済システムに問題を抱えて,深刻な状況である。私はこのような現状と,かつての高度成長期の状況とを比較・検証することで,不況脱出の方向性を見出そうと考えた。高度成長の原動力となった設備投資を軸にして,設備投資とそれを取り巻く国内外の経済環境の変遷を把握することで,高度成長のメカニズムと問題点について考察し,これらを背景に,現在の不況に至った原因を分析した。
主要参考文献 井村喜代子『現代日本経済論』有斐閣,1996年
経済企画庁『経済白書 平成10年度版』
現代日本経済研究会編『日本経済の現状 1997年度版』

生田目 剛

テーマ

経済成長下における日本農政

概要

戦後50年以上もすぎ,日本経済のシステムも大幅に変化し,驚異的なスピードで経済も成長する。それに平行して,農地改革後の日本農業も大きな変化をとげる。しかし,その変化は農業自身だけの問題ではなかった。日本の経済と深く関わり,その影響を強く受け,それにより多くの問題点をかかえることになるのである。日本の戦後農業は,このように日本経済と切っても切り離せないものであり,今回の論文においては,その関係について見ていきたい。
主要参考文献 井村喜代子『現代日本経済論』有斐閣,1993年
上原信博『現代日本資本主義における農業問題』御茶ノ水書房,1997年

蛭子井 理

テーマ

さらなる民営化を目指して〜日本における民営化の意味〜

概要

1980年代に世界的潮流となった民営化であるが,今になってもまだ民営化というものがどのようなものだったのか意見が分かれ,未だに多くの問題を抱えている。その原因は,たとえ民営化が世界で同時期に起こったとしても,それぞれが独立して異なる方法で行なわれたということにある。背景には福祉重視型の国家財政の限界という世界一般的な原因があるとしても,民営化は各国の政治,経済的背景を持っているために,それらを同じ流れとして捉えることはできないのである。第2臨調に始まった民営化であるが,もともと国債の発行が激増し,行き詰まりを見せていた財政の再建,多くの債務を抱えた国鉄改革,労組の再編成,政界再編成を基礎としていただけに,民営化は利害関係によって大きく左右された。しかしそれでも日本において民営化というものを成し遂げた要因,それによって残った問題を明らかにし,さらなる民営化の動きを探っていく。
主要参考文献 井村喜代子『現代日本経済論』有斐閣,1993年
中村太和『民営化の政治経済学―日英の理念と現実―』日本経済評論社,1996年
飯尾潤『民営化の政治過程―臨調型改革の成果と限界―』東大出版,1993年

布施 彩子

テーマ

消費主導の景気回復は可能か

概要

現在,日本経済は深刻な不況に陥っている。戦後,日本は,経済復興を成し遂げ,高度経済成長を経て「経済大国」となり,「バブル景気」・「バブル崩壊」を迎え,現在に至っている。今の不況は消費不振によるものが大きい。雇用や所得への不安を背景とした消費者心理の悪化に伴い,個人消費は低迷しており,GDPの約6割を占める消費の不振が景気に及ぼしている影響は大きい。日本の過去の景気回復は設備投資主導型であった。しかし今後の日本においても消費主導型の景気回復はあり得るのではないだろうか。諸規制の撤廃による新しいビジネスの開拓や消費者ニーズに合った商品の開発,また雇用や将来への不安解消による消費者心理の向上によって,消費は拡大され,景気を回復させる可能性は十分あると思われる。
主要参考文献 井村喜代子「現代日本経済論」有斐閣,1993年
経済企画庁『経済白書 平成10年度版』
「経済セミナー1998年9月号」日本評論社

牧戸 麻衣子

テーマ

アジア共生の道筋と日本の果たすべき役割<日本の電機・半導体産業の課題>

概要

アジアと共に発展してきた日本経済。日本企業の海外進出は,アジアを急速に発展させた。そして,お互いに日本とアジアは「パートナー」と呼べる21世紀を迎えるはずであった…しかし,その発展過程は必ずしも輝かしいものばかりrではなかったのである。多くの過ちと犠牲を伴っていたのだ。85年のプラザ合意を契機に,アジア諸国は円高ドル安をうまく使って経済を発展させてきた。アメリカは,アジア諸国にとって巨大な輸出市場として機能し,また円高の行き過ぎが,日本企業のアジア進出を加速化させた。一方,アジア諸国は徐々に為替管理をはずし,資本移動を自由化する。こうした中,海外からの多量の資金流入がアジア諸国にバブル的状況を発生させた。今,日本の電機・半導体産業は何をすべきなのか。その歴史から現在にいたるまでを分析する。
主要参考文献 井村喜代子『現代日本経済論』
JETRO『世界と日本の海外直接投資』
日本興業銀行産業調査部『アジア危機後の産業構図』

宮本 芳彦

テーマ

アメリカの通商政策〜知的所有権問題にみる利己的覇権への傾斜

概要

現代資本主義におけるアメリカの存在,役割は非常に大きい。アメリカでは時刻の経済的地位が低下したという危機感から保護主義政策に傾く傾向が強い。しかし,本論文ではそれに対しアメリカが依然として世界経済に対するパワーを持っているという視点に立ち,技術という,アメリカの地位を保障した一要素に注目して考えていく。知的所有権の保護強化は,この技術の保護を目的としたもので,アメリカ主導の下で世界的に進められていった。本論では知的所有権の保護強化に関しての,アメリカにおける背景,そして諸政策の展開,そしてTRIPs協定の締結までの通商政策の展開を考察し,そこにおける技術移転と技術開発の問題をアメリカの政治経済パワーとともに考えていく。
主要参考文献 井村喜代子『現代日本経済論』有斐閣,1993年
坂井昭夫『日米ハイテク摩擦と知的所有権』有斐閣,1997年
深海博明編『ウルグアイラウンドにおける南北貿易』アジア経済研究所,1990年

山形 光晴

テーマ

産業空洞化の検証

概要

現在の日本経済では,産業空洞化についての議論はよく聞かれる。その中でこの論文では産業空洞化とは何か?そのメカニズムとは何かを考え,さらにその今までの歴史的な背景を追った。そして今,産業空洞化がどこまで進んでいるのかを,統計などから調べ,考察してみた。
主要参考文献 岡田康司『どうする日本の空洞化』平凡社
法政大学産業センター『日本企業の海外活動と技術の空洞化』
井村喜代子『現代日本経済論』有斐閣

山田 暢洋

テーマ

出版業界と再販制度

概要

現在,日本における政府規制は民間の活力を抑制しているという見地からその撤廃・緩和が行なわれている。その流れは再販制度という特殊な規制がなされている出版業界にも波及してきており,その今後が注目されている。書籍・雑誌という特殊な商品特性をもつ商品を取り扱っている出版業界であるが,再販制度と委託販売制という流通形態と,出版−取次ぎ−小売店という硬直的な構造の問題が表面化してきている。しかし,この問題に対して業界内部からは変革の大きな流れが生じてこない事も事実であり,急激な転換期を迎えている日本経済において出版業界の今後はいかなるものかを再販制度を中心に論じる。
主要参考文献 木下修『書籍再販と流通寡占』アルメディア,1997年
再販問題検討のための政府規制等と競争に関する研究会『著作物再販適用除外制度の取り扱いについて』1998年

吉田 昌弘

テーマ

国際通貨体制にみるアメリカの意思決定〜国家は市場を管理できるか〜

概要

アメリカ主導によって構築された戦後の世界経済的「枠組み」,特に国際通貨体制に焦点を当て,アメリカの決定力が世界経済に多大なる影響を与えているということを論ずる。その際に,アメリカの利己的な意思決定により,投機的な資本移動がなされたかということ,またプラザ合意にみる政策協調体制は,その投機的資本移動を管理できているかを論点とする。現代資本主義論・独占資本主義論という理論を自分なりに追及することに努力を費やしたが,そこで考えた「壁」というもので苦悩しながらも,現状分析をすることで理論の「壁」を打破することを試みている。
主要参考文献 井村喜代子『現代日本経済論』
北原勇他『現代資本主義をどう視るか』
スーザン・ストレンジ『カジノ資本主義』

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