延近研究会 卒業論文概要
(第6期生)

慶應義塾大学経済学部  延近研究会卒業生の卒業論文の概要と主要参考文献です。
卒業論文とともに提出された本人作成の概要を
原文のまま掲載しています。

大塚 元滋

テーマ

日本は製造業の空洞化にどう対応すべきか

概要

ここ数年来の不況と円高傾向の中,世界でももっとも最先端の技術開発力を持つ大手製造業が海外へ生産・開発拠点をシフトさせていることに対して,私自身,日本が衰退するのではという不安を抱いた。私自身がメーカーへ就職するということもあり,日本の製造業の今後がどうなるのか,自分で調べてみようと思ったことがきっかけでこのテーマを選びました。本文では「空洞化」について,理論面と現状面そして今後の対策面といった構成で述べてあります。国家も企業も国内の技術力・生産力を失うようなこと(政策)を絶対とるべきではないという主張をしたつもりです。
主要参考文献 牧野昇『製造業が強い』
松田健『アジアから見た日本の空洞化』
関満博『空洞化を超えて』

金子 剛史

テーマ

最後の石油危機

概要

現在,エネルギーの中でもっとも主要な地位にいる石油の可採年数は42,3年といわれている。その近い将来やってくる石油枯渇は,かつて世界が経験した石油危機よりはるかに巨大な石油危機となるであろう。私はその石油危機を「最後の石油危機」と名付け,その解決策を卒業論文の主要テーマとした。しかし,この論文ではその解決策を技術的な面からではなく,経済的な面から探っていく。具体的には,過去の石油危機の分析,南北問題を細かく分析し,そこから解決策を導く。特に「最後の石油危機」と中東とのかかわりを重要視している。
主要参考文献 ローマクラブ『成長の限界』ダイヤモンド社,1972年
井村喜代子『現代日本経済論』有斐閣,1993年
小山茂樹『石油危機はおわったか』時事通信社,1984年

小林 剛

テーマ

“日本的持家主義”の検証〜戦後日本における「歪み」としての住宅問題の根源を探る〜

概要

日本は戦後,見事なまでの政策的誘導を媒介とし,高度成長を通じて世界に比類のない高い消費水準を達成し,世界有数の先進国・「経済大国」へと上り詰めた。しかしながら一方では「経済大国」と呼ばれるにはふさわしくない高度成長の「歪み」としての社会的矛盾を孕んだ問題も存在する。中でも,国民生活の基盤たるべき住宅の供給をめぐっては,国家や公共が国民の生活を保障するという役割を放棄し国民の自助努力による住宅取得を後押しする制度を確立していった。住宅政策における「持家推進主義」である。現代における深刻な住宅問題の根源が政府のこうした政策的誤りにあると認識し,この認識の上に本論文の基礎視角を据え,持家取得をめぐる社会矛盾的問題を検討することをその課題とする。第1章では住宅政策の流れの中から,続く第2章では持家を取得する勤労者を中心とした政策以外の諸側面からの検討を試みた。終章にあたる第3章では,実際に持家を取得することのシミュレーションを行ない,その結果の考察に基づいて持家取得は本当に得策であるのか,ということを検討している。
主要参考文献 井村喜代子「現代日本経済論』有斐閣,1993年。
住宅金融公庫『住宅金融公庫四十年史』1990年
住宅問題研究会『住宅問題辞典』東洋経済新報社,1993年

柴原 秀明

テーマ

国際貿易を考える〜WTO下の競争政策〜

概要

入ゼミのときから持っていた,国際経済について学ぶということと,ゼミで学んだ日米関係,両方を兼ね備えた論文を書くことを心がけました。WTO下の競争政策ということで,WTO以前,つまりはGATT下において各国の貿易政策はどうだったのか。保護主義を取り上げながら,競争に反する動きを考察し,その中で,GATT条項自体に潜む内部矛盾つまりはGATT自体に保護主義への抜け道があったのではという観点から述べる。それがウルグアイラウンドを受けたWTOでどう変わっていくのか。ウルグアイラウンドの変革点,WTOの紛争強化を前面に出し,WTOと各国の貿易政策の交錯を考えていく。第1章で戦後の国際貿易体制を概観し,第2章で日・米・EU三極の競争法が国際に及ぼす影響を見,第3章で三極の通商政策なり貿易政策がどのように行なわれてきたか,特に米国の保護措置を取り上げ,第4章でその米国の動向と立場を見る。終章にて,WTO下の競争政策への提案として,国際競争法の可能性を挙げる。
主要参考文献 『競争政策と貿易政策―その相互作用』
『ウルグアイラウンド―GATTからWTOへ』
『アメリカ通商政策と自由貿易体制』

高橋 洋介

テーマ

沖縄経済振興への一考察(沖縄の価値観と経済)

概要

「従来の貨幣タームの経済理論は,地域の価値観の同質性を前提としており,それは地域の風土,文化等により異なるという認識が欠如している。そのため,分析の網の目が粗く,そこからこぼれ落ちる部分が多く,なかなか実態に肉薄できない」というのは富川盛武氏の言葉である。特に沖縄では,失業率の高い沖縄に若者がUターンしてくる現象,あるいは地域振興を犠牲にしたヘリポート建設反対表明などによって富川盛武氏の言葉の意味が垣間見られる。このテーマのねらいは「荒い網の目」を埋めていくことである。内容としては,まず価値観や文化等沖縄の地域の独自性を確認し,つぎに貨幣タームの経済の現状を見ていく。そして最後にこの2者を考慮した上で,沖縄経済が今後目指すべき方向についての提言を行なった。
主要参考文献 富川盛武「魂おちゃる沖縄人」新星図書出版,1987年
杉野国明・岩田勝男編『現代沖縄経済語』日本経済評論社,1990年
畠基晃『沖縄問題基礎知識』亜紀書房,1996年

玉置 美智子

テーマ

住宅の再考

概要

現代日本経済論でもたびたびとりあげられてきた住宅問題を,三田での勉強の集大成にしたいと思い卒業論文のテーマにしました。住宅問題を研究することは,戦後日本が歩んできた高度成長,そして現在にいたる状況までをも踏まえたスケールの大きな問題でありました。自分の力量に常に限界を感じながらの研究課題ではありますが,私の理解できる順番,方向性から進めました。そのため歴史に考察からはじめ,住宅問題における日本の特質の検証,そして最後に研究を通して得られた私流の住宅観でしめくくります。
主要参考文献  

坪田 英嗣

テーマ

なぜ日本で化粧品は高いのか〜消費者利益の競争政策〜

概要

『内外価格差問題』で常に取り上げられ,世界的にみて割高な日本の化粧品価格。この原因を@日本独特の制度品流通システムとそれを補完した再販制度A公的規約である薬事法B消費者のブランド志向に求め,@については理論的な背景をも含め,現状を分析した。その際の基礎視角は,消費者利益と現状の政策・制度がいかに相容れなくなっているか,という点に置き,消費者利益が阻害されている点を強調した。もちろん,化粧品に関しては特に大事であるが,消費者利益が価格面ばかりにあるのではなく,品質やサービスもとらえた総合的視野に立って検証にのぞんだ。結果,消費者利益が大きく阻害されている面とまた,今後において制度が変えられることで消費者利益が阻害されかねない面を取り上げ,それぞれにおいて独禁法の運用強化や国際整合化の問題点を提言した。
主要参考文献 日本貿易振興会『対日アクセス実態調査(化粧品)』1997年
伊藤元重・伊藤研究会『日本の物価はなぜ高いのか』NTT出版,1995年
秋本育夫・橋本勲『独占とマーケティング』有信堂,1973年
阿部信也・鈴木武『現代資本主義の流通理論』大月書店,1983年

戸塚 恵子

テーマ

エイジズムのない高齢化社会へ

概要

普段生活している中で,高齢者が非常に生活しにくい社会であることに疑問を感じ,これからの高齢化社会をエイジズムのないものにしていきたいと思い,卒業論文のテーマにしました。はじめにでは,日本の高齢化社会とアメリカの高齢化社会トンを比較し,問題提起をしました。第1章では,日本の社会保障について,概要と問題点について書きました。第2章では高齢者の雇用問題について,日本の雇用対策の歴史をふりかえりながら書きました。第3章では,第1章と第2章の相関関係をグラフとともに考えました。補章では,エイジズムについての現状と解消法について考えました。おわりにでは,論文のまとめとして自分の意見を述べました。
主要参考文献 E.B. パルモア『エイジズム』法政大学出版局
七瀬時雄『高齢者雇用対策の発展』労務行政研究所
高藤昭『社会保障概論』龍星出版

中田 康太郎

テーマ

戦後日本経済における企業集団について(旧三大財閥系企業集団とその有用性を中心にして)

概要

以前から日本には多数の企業グループが存在すると感じていたが,ゼミで日本経済について,その戦後の歴史を考察してきた際,まず占領軍(アメリカ)に大きく規定され,その成長過程でも多々のアメリカによる政策変更により変化をとげてきたことを学んだ。そして,今日の企業集団は財閥解体と占領政策の変更により基礎が作られ,その後の日本経済に合わせ変形を繰り返し今日にいたっている。そこで,企業集団は歴史的に形成された実体であり,ある種の必然性を持って今日に至っているという問題意識にもとづき,どのような歴史的変遷を企業集団が遂げ,またどのような有用性を持っていたから今日のように大きな影響力をもちうるまで成長したのかを,歴史的事実を考慮しながら考察するのがこの論文の主旨である。
主要参考文献 井村喜代子『現代日本経済論』有斐閣,1993年
奥村宏『日本の六大企業集団』ダイヤモンド社,1976年
中谷巌『企業集団の分析』日本経済新聞社,1987年

成田 彩子

テーマ

なぜ,今,ビッグバンなのか

概要

1996年11月に誕生し,1998年4月についに動き出す日本版ビッグバン。日本経済を揺るがすこの大変革を,なぜ「今」実施するのか,という時期的な問題に焦点を絞ってビッグバンについて考えていく。まず,序章で日本版ビッグバンについて簡単な紹介をする。次に,本論に入って第1章で規制構築期,第2章で規制緩和期について,それぞれ,そこでとられた規制体制の特徴や経済への影響を考える。そして,第3章では,バブル崩壊から現在にいたるまでの金融不安についてまとめ,最後に,今までの内容をふまえて,なぜ,「今」ビッグバンを実施するのか,自分なりの考えを述べる。
主要参考文献 井村喜代子『現代日本経済論』有斐閣,1993年
富田洋三『戦後日本の金融経済』多賀出版,1993年
高瀬恭介『金融変革と金融再編成』日本評論社,1988年
高尾義一『平成金融不況』中央公論社,1994年

原田 典子

テーマ

情報社会の現在〜情報技術,インターネットの与えるインパクト

概要

インターネットブームに始まり,目覚しい発展をとげている情報技術。社会ではそれとともに脱工業化・ポスト産業社会・情報社会などといわれ,かつての産業革命のように,情報技術の発展が来るべき夢のような社会を成しとげるであろうともいわれている。この論文では,情報化を情報技術の発展という意味でとらえ,情報化の進展の跡をたどり,私なりに情報社会の一端を明らかにすることを目的としている。
主要参考文献  

丸山 大輔

テーマ

日本製造業の対外直接投資

概要

日本製造業の対外直接投資の動向を調べ,それを貿易の推移との関係でとらえることで,戦後輸出依存的に発展しきた日本経済がどのような局面を迎え,どう変容していっているのかを解明することを目的とする。日本の対外直接投資は,80年代後半と90年代中葉から急激な増大を示す。これは,それまでの日本企業の高い競争力が衰えを示したことや,アジア諸国の技術の高まり,日本市場の停滞などが背景となっており,またこれを通じて世界的分業構造と,世界の均質化が進み,よりいっそうの対外直接投資を促進するといった構図である。
主要参考文献 『日本経済のグローバル化』
『ジェトロ白書・投資編』
『通商白書』

山本 錦弥

テーマ

情報革命についての考察―経済に与える影響から考える―

概要

この論文では問題意識として,1)「情報革命」がどのような進行過程を経て行なわれてきたのか,それはどのような経済的要請によってなされたのか,2)そうしてなされた「情報革命」はいったいなにをもって「革命」たりえているのか,3)それが経済に与える影響はなにか,の3点を掲げ,その解明を通じて「情報革命」に対する考察を深めていく。「情報革命」は,情報技術の革新が原動力になってなされた。最初は情報技術革新は生産性,経営効率の改善という経済的要請によって進められたが,その技術の飛躍的な進歩はやがて市場や経済主体間の関係性,経済活動のスタイルまでも変革していく。このことから「情報革命」は,最初は技術的な革命から始まった,最終的に社会全体に情報に対する多面的な意識革命をもたらしたもの,と定義づけられる。
主要参考文献 M.S.スコット・モートン編『情報技術と企業変革』富士通ブックス,1992年
T.J.アレン,M.S.スコット・モートン編『アメリカ再生の情報革命マネジメント』白桃書房,1995年

横里 紀一郎

テーマ

韓国と日本の自動車産業

概要

現在,急激に伸びている韓国とすでに世界のトップにある日本の自動車産業の成長過程や抱えている問題点を比較し,今後どういった展望へと向かっていくのかを把握していきたい。その中には自分の意見も織り交ぜ,1人の著者の意見をすぐに鵜呑みにしないように進めていきたい。また,フォード,トヨタなど,1つの企業に的を絞らず,なるべく業界全体の動きを追っていきたいと考えている。おもな流れは,自動車産業の歴史,問題点,対応策と今後の展望となっていて,コスト削減・海外生産・販売戦略を中心に論じていく。
主要参考文献 日本興業銀行産業調査部『日本産業読本』東洋経済新報社,1997年
影山僖一『経済発展論 自動車産業の技術革新と国際化』税務経理協会,1995年
丸山恵也『アジアの自動車産業』亜紀書房,1994年

吉澤 美佳

テーマ

中国の対外開放

概要

前半に関しては,中国開放経済の進展とその意義について,できる限り客観的にみていこうと考えた。統計から読みとれる問題をつぎに述べるという形にした。前半部分の柱は外資導入と技術導入である。ここでは,中国の立場に立って,外国資本の力を生かしながら,どのように外資依存から脱却していけるか,ということをテーマにした。後半部分に関しては,日本という立場から,中国という国の力をどう生かせるか,ということをテーマにした。日本経済の特性と中国経済のそれを考慮した上で,対中国投資のメリットとデメリットを検証した。それをもとに,自分なりの結論を出すことが,この後半部分の目的だった。
主要参考文献 渡部長雄『混迷する中国経済』有斐閣,19991年
劉佩瓊編『中国経済全情報 最新データファイル』同朋社出版,1995年
馬成三『発展する中国の対外開放』アジア経済研究所,1992年

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