独占資本主義論 定期試験情報
(2016年度)


試験問題と採点基準
春学期末 秋学期末 成績統計

《春学期末試験》

[問題]試験時間:50分,持込み可

(1) 次の1〜3の語句を答案用紙の5行前後で簡潔に説明しなさい。
1. 競争的市場における価格支配の可能性
2. 最低必要資本量と資本の集中
3. 独占的市場における価格支配の可能性
(2) 資本主義企業の本来の活動目的は最大限の利潤を獲得することであるが,現代の巨大独占企業は,利潤の最大化よりも売上高を最大化することによって市場占有率の上昇を目的としているように見える。この両者は相反するものではないことを説明しなさい。

[採点基準]

以下の内容がどの程度説明されているかによって採点します。絶対評価を基本としますが,相対評価を加味(全員の答案を読んだうえで採点基準・配点を変更)する可能性があります。

(1) 基本的な語句・概念の説明(各20点)

1. 競争的市場の基本的特徴の理解
競争的市場:市場規模に比べて相対的に小規模で多数の競争者の存在
1) 個別資本の生産量調整による価格操作
2) 多数の競争者の協定による生産量調整
3) 他部門からの参入可能性

2. 個別資本が競争的に行なう資本蓄積と生産力の向上が,最低必要資本量の増大と資本の集中をもたらすことの理解

1) 特別剰余価値の獲得のための生産力向上競争
2) 最低必要資本量の増大(生産力向上にともなう生産の大規模化)
3) 資本の集中(競争と信用)
3. 独占的市場の基本的特徴の理解
1) 高い市場集中度
生産量調節による価格支配の可能性
部門内企業の利害の一致
⇒部門内競争の制限
2) 高い参入障壁
参入=部門間競争の制限による長期的価格支配・利潤最大化

(2) 現代の資本主義企業の行動目的(40点)

1. 所有と経営の分離:持ち株の分散化→経営者の相対的自立性
2. 売上高・市場シェアの拡大:独占間協調において自企業にとって有利な価格設定
3. 利潤追求:株価・配当の維持・増大,諸資本間の競争

《秋学期末試験》

[問題]以下の(1),(2)の両方に答えなさい。試験時間:50分,持込み可

(1) アベノミクスの理論的支柱のリフレ派の主張を簡潔に紹介し,理論的に批判しなさい。

(2) アベノミクスにもとづく経済政策が実行されてから約4年経つが,GDP成長率も物価上昇率も低水準の状態が現在まで続いている。その理由をこの講義で学んだ理論を基礎として説明しなさい。

[採点基準]

以下の内容がどの程度説明されているかによって採点します。絶対評価を基本としますが,相対評価を加味(全員の答案を読んだうえで採点基準・配点を変更)する可能性があります。

(1) マルクス経済学の理論によるリフレ派の主張の批判[40点]

1. リフレ派の主張の特徴 (10点)
90年代以降の日本経済の長期停滞とデフレ傾向:金融政策にすべての問題の原因とその解決策を求める
 (a) 日銀が充分なマネタリーベースの増加を怠った→デフレの進行→長期停滞)
 (b) 解決のための政策:金融の大幅な量的緩和とインフレ・ターゲット政策
2. リフレ派の主張の理論的基礎(10点)
 (a) 貨幣数量説:MV=PQ
 (b) クルーグマン・モデル:合理的期待形成説にもとづくインフレ期待
3. リフレ派の主張の理論的検討(20点)
 (a) 貨幣数量説の欠陥:貨幣は流通手段だけでなく蓄蔵手段としての機能をもつ
  設備投資においては販売と購買の分離は必然
 (b) クルーグマン・モデルの非現実性

(2)アベノミクスにもとづく経済政策の欠陥:1990年代以降の日本経済の構造変化[60点]

1.独占段階の停滞基調(20点)
2.対外膨張の限界と新生産物・新技術開発の国際競争での敗北(10点)
 (a) 急激な円高の進行
 (b) アメリカ経済の復活
3.日本企業の多国籍化と産業の空洞化(10点)
4.雇用の不安定化と賃金切り下げ(10点)
5.世界的な投機的金融取引の盛行(10点)

[成績統計]

採点と成績集計が終わりましたので,成績統計と講評を掲載しました。(1/29)
第1表 受験者総数に占める各評語の割合
3年生  4年生  合計 
16年 15年 14年 16年 15年 14年 16年 15年 14年
A 15.4 44.7 27.9 8.3 12.5 22.2 14.3 39.1 26.9
B 21.5 21.1 14.0 8.3 50.0 11.1 19.5 26.1 13.5
C 44.6 26.3 41.9 50.0 25.0 33.3 45.5 26.1 40.4
D 18.5 7.9 16.3 33.3 12.5 33.3 20.8 8.7 19.2
受験者 65 38 43 12 8 9 77 46 52
欠席率 12.2 25.5 8.5 36.8 50.0 52.6 17.2 31.3 21.2
第2表 得点状況
最高点 最低点 平均点
3年 4年 3年 4年 3年 4年 全体
83 75 2 0 43.7 34.5 41.9
90 80 0 20 48.9 42.8 48.0
合計
(昨年度)
160
(180)
150
(120)
2
(35)
38
(65)
93.2
(121.6)
84.1
(104.3)
91.8
(118.6)
満点は春・秋ともに100点。
 第1図 得点分布*(各得点階層が受験者総数に占める割合)
 第2図 問題別得点分布(1)
 
 第3図 問題別得点分布(2)
 第3表 レポート提出回数と評価別の平均点
提出回数 9-7 6-5 4-3 2-0
平均点 110.7 102.3 92.5 75.7
レポート評価 A B C D
平均点 119.8 90.3 88.4 75.0
第1表の各評語の割合を見ると,春学期末試験と同様に,A評価の割合は過去3年間で最低D評価の割合は過去3年間で最高,第2表が示すように平均点は5割を切っている。問題自体は(1)は授業内レポートの課題1の一部,(2)は課題6を基礎として最終授業の内容を加味した出題で応用問題といえるが,講義資料に従って答案を作成すれば難易度はそれほど高くないはずである。にもかかわらず,この成績となったことについてコメントしておく。

問題(1)は,授業内レポートの課題1の論述ポイントのうちリフレ派に関する部分を簡潔にまとめればよいのであるから,持込み可の試験としては平易といえる。実際,第2図の(1)の得点構成比を見れば,30〜40点の階層が最多であり,平均点も3,4年生全体で66.4点(100点満点換算)と高かった。低得点の学生の答案は,リフレ派の主張の紹介が稚拙であったり,批判として「生産年齢人口説」を挙げるなど,授業内容やテキストの私の説明の無理解を露呈したものが多かった。 

問題(2)は,上述したように応用問題であるが,2015年度の試験問題の(2)と説明すべき論点は同じであるから,授業内容やテキストを理解していれば何を論じなければならないかは容易に推測できたはずである。
にもかかわらず,この問題の平均点は3年生が37.1点(100点満点換算,以下同じ),4年生が28.5点,全体でも35.7点と非常に低かった。得点構成比では20点以下が3年生では60%,4年生では75%を占めている。

この問題の難易度が非常識に高かったわけではないことは,素点で40点以上に小さなピークがあることに示されている。採点の際には50分という試験時間を考慮して,上記の採点基準の5つの論点に言及していれば得点を与えたので,最終授業やテキスト・講義資料で90年代の日本経済の構造変化について理解をしていれば,十分に高得点を取れる出題だったことが確認できる。
低得点の学生の答案は,白紙または「生産年齢人口説」を理由とするなど,やはり授業内容やテキストの私の説明の無理解を露呈したものが多かったのである。

最後に,毎年の公表で記していることであるが,第3表が示すように レポート提出回数の多少とレポート評価の高低が,平均点の高低に明確に反映されている。両者の正の相関は非常に高いと言ってよい。授業内容の理解やテキストの内容を理解するためのもっとも効率的な方法は,授業への出席は言うまでもなく,自分の力による授業内レポートの作成・提出であることが明らかである。持込み可の試験であっても,理解不充分のままで試験会場で答案を作成することは困難であること,理解が充分であれば持込み可によって的外れの答案を書くことはありえないことも明らかである。
春学期末試験での私の講評を生かせなかった学生が少なくなかったことが残念である

春学期

第1表 受験者総数に占める各評語の割合
(春学期の成績のみで評価した場合)
3年生  4年生  合計 
16年 15年 14年 16年 15年 14年 16年 15年 14年
A 12.9 32.5 34.9 5.9 25.0 20.0 11.5 30.8 32.1
B 18.6 27.5 27.9 5.9 0.0 20.0 16.1 21.2 26.4
C 40.0 20.0 18.6 29.4 33.3 20.0 37.9 23.1 18.9
D 28.6 20.0 18.6 58.8 41.7 40.0 34.5 25.0 22.6
受験者 70 40 43 31 17 10 87 52 53
欠席率 6.7 21.6 8.5 10.5 25.0 47.4 7.4 22.4 19.7
第2表 得点状況
最高点(最低点) 平均点
3年 4年 3年 4年 全体
(1) 55(0) 60(0) 49.3 44.7 48.4
(2) 40(0) 30(0) 34.6 19.1 31.6
合計
[昨年度]
83(2)
[85(5)]
75(0)
[80(5)]
43.4
[52.4]
34.5
[36.9]
41.7
[48.8]
問題別の平均点は各問の満点に対する%。
 第1図 得点分布*(各得点階層が受験者総数に占める割合)
 第2図 問題別得点分布(1)
 
 第3図 問題別得点分布(2)
 第3表 レポート提出回数と評価別の平均点
提出回数 5 4-3 2-1 0
平均点 41.7 48.0 35.5 41.7
レポート評価 A B C D
平均点 70.0 52.1 47.0 37.2
第1表の各評語の割合を見ると,A評価の割合は過去3年間で最低D評価の割合は過去3年間で最高,第2表が示すように平均点は5割を切っている。問題自体は基本的な知識と理解を問うレベルのものであるから,難易度はそれほど高くないはずである。にもかかわらず,この成績となったことについてコメントしておく。

問題(1)は授業内レポートの課題2と課題3の部分的な出題であり,持込み可であることを考慮すると難易度は非常に低いと考えられる。
実際,第2表が示すように最高点は満点(3つの小問ごとでも満点)であった。しかし,平均点を見ると3,4年生ともに5割を切っている。 

この原因は次の要因によると考えられる。
1の競争的市場における価格支配の可能性については,3つの基本的特徴のうち3番目の参入の可能性について言及していない答案が少なくなかったこと,基本的特徴の説明をせずにたんに価格支配の可能性はないとして,要求されていない特別剰余価値の獲得をめぐる競争について説明した答案など,的外れの答案も目立ったために,平均点が5割を切った。

2の最低必要資本量と資本の集中については,3年生の平均点が約6割であったが,この難易度にしては低水準である。これは資本蓄積過程でなぜ最低必要資本量が増大し,それが資本の集中につながるかの説明が不充分な答案が少なくなかったこと,資本の集中と集積との区別ができていない答案も少なくなかったことによる。

3の独占的市場における価格支配の可能性については,市場集中度と参入障壁という概念自体を使用していない答案が少なくなかったこと,市場集中度については説明されているが,参入障壁についてまったく言及していない答案が多かったことによる。市場集中度の高度化は部門内競争の制限の基盤となるが,それだけでは価格支配は一時的・短期的なものでしかない。
価格支配によって利潤率が上昇すれば,部門外からの参入=部門間競争を促進するからである。この部門間競争を制限する要因が参入障壁であるから,参入障壁がどのようなものであるかの説明がなければ,独占的市場における価格支配の可能性を説明したことにならないのである。この小問の平均点は4割を切っていた。

問題(2)は,それ自体は独立した授業内レポートの課題でもなく,論述ポイントに明示的にあるわけではない。
しかし,独占段階への移行(課題2)という資本主義の歴史的発展過程の説明で,資本の行動目的について,具体例を挙げながら授業で説明し,さらに独占価格の設定(課題4)におけるプライス・リーダーシップの意味との関係の重要性を強調した論点である。教科書では157-9ページと173ページにこの問題そのもののまとまった叙述があるのだから,持込み可という条件のもとでは難易度はそれほど高くない設問である。
しかし,3年生の平均点は34.6点4年生は19.1点と惨憺たると言ってよい結果であった。
複数の課題にわたる複合問題という出題に対して,表面的な理解,課題の論述ポイントだけの学習では解答が困難だったのだろう。
とはいえ,第3図が示すように,3年生では30点付近に低いとはいえ山があるし,最高点は満点であった。授業に出席し,教科書や講義資料を読んでレポートを書くという努力をした学生にとって,何を書くべきかは明らかだったのだと思われる。
第3表のレポート評価と平均点のきれいな相関関係がそれを示している。逆に提出回数と平均点の相関が弱いことは,内容をともなわなくてはレポートを出すことの意義は小さくなることを示している。

秋学期の授業内容は,春学期の内容の理解を前提として,独占資本主義のよりダイナミックな運動を取り扱います。春学期末試験で手ごたえを感じた学生は引き続きの努力を!失敗したと感じた学生は,授業への出席と教科書の読み込み,授業内レポートの提出を心がけてください。就活で出席が困難だった4年生を含めて,授業内容の理解と単位取得のためには,今からでも遅くありません

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