独占資本主義論 定期試験情報
(2015年度)


試験問題と採点基準(春学期末, 秋学期末) 成績統計

《春学期末試験》

[問題]試験時間:50分,持込み可

(1) 独占企業が余裕能力を保有する理由を説明しなさい。

(2) 生産力を向上させる新生産方法がすべての独占企業に導入可能な形で存在し,市場が全般的に停滞している場合の独占企業の投資行動の特徴を説明しなさい。

[採点基準]

以下の内容がどの程度説明されているかによって採点します。絶対評価を基本としますが,相対評価を加味(全員の答案を読んだうえで採点基準・配点を変更)する可能性があります。

(1) 余裕能力(40点)

  1. 余裕能力の概念規定;意図された過剰生産能力
  2. 産業需要の小幅の変動に対する生産量調整
  3. 販売努力の成功による販売量増大に対する迅速な生産拡大
  4. 部門内の価格競争が生じた場合の対抗手段
  5. 参入の危険性が生じたときの闘争手段

(2) 独占企業の投資行動(60点)

1. 新生産方法導入の抑制・遅延
(a) 旧式設備の残存価値:旧式設備の償却後の導入
(b) 生産能力増大と販路:
2. 導入の競争による強制作用の抑制
(a) 独占価格の維持
(b) 設備投資に関する事実上の協調的行動
3. 競争的市場における設備投資行動との対比は加点要素

《秋学期末試験》試験時間:50分,持込み可

[問題]以下の(1),(2)のどちらか1つを選択して答えなさい。試験時間:50分,持込み可

(1) 1980年代前半のアメリカ経済において形成された「危うい循環」とはどのようなものか。同時期のアメリカ連邦政府の政策と関連づけて説明しなさい。

(2) 1990年代以降の日本経済が長期停滞に陥ったのはなぜか。この講義で学んだ理論をもとに説明しなさい。

[採点基準]

以下の内容がどの程度説明されているかによって採点します。絶対評価を基本としますが,相対評価を加味(全員の答案を読んだうえで採点基準・配点を変更)する可能性があります。

(1)「危うい循環」
1.レーガン政策と「双子の赤字」【40点】
軍事支出の急増→財政赤字の累増→金利上昇→外国資本の流入→ドル高(20点)
 投機的利得を求めるいっそうの外国資本の流入
 産業空洞化⇒貿易赤字累増体質(20点)
 貿易赤字増大→経常収支赤字化・赤字額累増
2.経常赤字のファイナンス構造=「危うい循環」【60点】
(a) 高金利とドル高によるキャピタル・ゲインを求める投機的な外国民間対米投資(20点)
  ⇒資本流入によるファイナンス
(b) このファイナンス構造の脆弱性=「危うい循環」(40点)
 高金利・ドル高の継続に依存した対米民間投資=ドル買い
 ⇔アメリカ経済の実態と乖離した異常ドル高
 民間資本のドル離れ⇒ドルのスパイラル的下落=ドル大暴落の危険性を内包した循環
 ドル大暴落⇒ドルの基軸通貨特権の喪失⇒アメリカの経常赤字の持続不可能
 ⇒アメリカ経済の「繁栄」持続が不可能
(2)1990年代以降の日本経済の構造変化
1.独占段階の停滞基調(20点)
2.対外膨張の限界と新生産物・新技術開発の国際競争での敗北(20点)
(a) 急激な円高の進行
(b) アメリカ経済の復活
3.日本企業の多国籍化と産業の空洞化(20点)
4.雇用の不安定化と賃金切り下げ(20点)
5.世界的な投機的金融取引の盛行(20点)
[成績評価への質問について]
経済学部では,成績評価についての質問は所定の質問用紙に記入し学生部を通じて担当者に送付されることになっています。この方法以外での質問は受け付けられません。
質問の際には上記の採点基準を熟読し,自分の答案と比較して自己採点したうえで,それでも疑義がある場合のみ疑義の内容を詳しく記入して,所定の手続きをとってください。
なお,採点は採点基準に従って答案を複数回読み直して厳密に行なっています。講義を担当するようになって以来,今までに学生からの質問によって成績評価を変更したことは1度もありません。「ダメもと」で質問しても無駄ですので,念のため

[成績統計]

採点と成績集計が終わりましたので,成績統計とコメントを掲載しました(1/24)。
第1表 受験者総数に占める各評語の割合
3年   4年   合計  
15年 14年 13年 15年 14年 13年 15年 14年 13年
A 44.7 27.9 18.3 12.5 22.2 14.3 39.1 26.9 17.9
B 21.1 14.0 23.3 50.0 11.1 14.3 26.1 13.5 22.4
C 26.3 41.9 41.7 25.0 33.3 57.1 26.1 40.4 43.3
D 7.9 16.3 16.7 12.5 33.3 14.3 8.7 19.2 16.4
受験者 38 43 60 8 9 7 46 52 67
欠席率 25.5 8.5 15.5 50.0 52.6 76.7 31.3 21.2 33.7
第2表 得点状況
最高点 最低点 平均点
3年 4年 3年 4年 3年 4年 全体
85 80 5 5 52.4 36.9 48.8
100 96 30 50 68.9 69.5 69.0
合計
(昨年度)
180
(164)
120
(158)
35
(61)
65
(60)
121.6
(120.2)
104.3
(124.3)
118.6
(120.9)
満点は春・秋ともに100点。
 第1図 得点分布*(各得点階層が受験者総数に占める割合)
第3表 レポート提出回数と評価別の平均点
提出回数 13-10 9-7 6-4 3-0
平均点 143.4 119.0 115.6 99.9
レポート評価 A B C D
平均点 146.4 133.0 130.5 84.8
レポート提出回数の多少とレポート評価の高低が,
平均点の高低に明確に反映されている。
昨年度までに比べて,A評価が3年生で44.7%と非常に多くなり,D評価は7.9%とかなり少なくなっている。4年生は受験者が8人と少数のため,ばらつきが多いが,それでもD評価は例年より少なくなっている。
これは問題(1),(2)ともに授業内レポート課題と基本的に同じ問題であったこと,これらは秋学期の終わり近くの出題で,4年生を含めてレポート提出率がやや高かったためであろう。なお, D評価はレポート提出回数3回の1人を除いて全員がレポート提出回数0回であった。
 
     
問題(1)は授業内レポート課題12の一部を答える問題,問題(2)はレポート課題13と基本的に同じ問題であったため,平均点は69.0点と春学期と比べても,昨年度までと比べても高得点であった。
ただし,問題別では(1)は64.3点,(2)は72.6点と,(2)の方が約8点高かった。これは,(1)が80年代前半に形成されたアメリカ経済の「危うい循環」を同時期の連邦政府の政策と関連づけて説明という指示があるにもかかわらず,70年代以前の経済情勢や政策を長々と叙述し,肝心のレーガン政策とその帰結の説明が不充分となった答案が少なくなかったためである。設問の要求に正確に答えることの重要性を認識してもらいたい。

春学期

第1表 受験者総数に占める各評語の割合(春学期の成績のみで評価した場合)
3年 4年 合計
15年 14年 13年 15年 14年 13年 15年 14年 13年
A 32.5 34.9 31.3 27.3 20.0 7.1 31.4 32.1 52.0
B 27.5 27.9 32.8 0.0 20.0 57.1 21.6 26.4 24.0
C 20.0 18.6 20.3 36.4 20.0 28.6 23.5 18.9 8.0
D 20.0 18.6 15.6 36.4 40.0 7.1 23.5 22.6 16.0
受験者 40 43 64 11 10 14 51 53 25
欠席率 21.6 8.5 11.1 26.7 47.4 54.8 22.7 19.7 32.4
*2015年度のD評価は1人を除いてレポート提出回数が0回であった。
例外の1人も提出回数2回で評価は1点である。
持ち込み可であってもレポート提出を怠ると低得点となることが明確である。
第2表 得点状況
最高点(最低点) 平均点
3年 4年 3年 4年 全体
(1) 35(0) 30(5) 60.0 39.8 55.6
(2) 50(0) 50(0) 47.3 35.6 44.8
合計
[13年]
85(5)
[98(0)]
80(5)
[88(13)]
52.4
[57.4]
37.3
[49.5]
49.1
[55.9]
問題別の平均点は各問の満点に対する%。
 第1図 得点分布*(各得点階層が受験者総数に占める割合)
 第2図 問題別得点分布(1)
 
 第3図 問題別得点分布(2)
 第3表 レポート提出回数と評価別の平均点
提出回数 6 5-4 3-2 1-0
平均点 66.3 56.7 50.0 31.8
レポート評価 A B C D
平均点 68.2 60.0 57.8 36.9

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