マルクス経済学 I 試験問題と採点結果
(2015年度)


春学期末試験問題 

採点基準 成績統計と講評

《春学期末試験》

[問題]次の(1),(2)に答えなさい。

(1) 以下の1〜3の語句を(  )内の概念を用いて簡潔に説明しなさい。解答はそれぞれ[ ]内で指定された答案用紙の行数程度で書きなさい。

  1. 貨幣商品の特殊性 (等価形態,使用価値,直接的交換可能性) [4行]
  2. 労働力商品の特殊性 (価値,使用価値,労働者階級) [4行]
  3. 土地の理論価格 (擬制資本,資本還元,平均利潤率) [3行]

(2) 競争の支配的な資本主義において,個別資本は最大限の価値増殖・剰余価値の増大のためにどのような行動をとるか。以下の概念(五十音順)をすべて用いて論じなさい。

競争,新生産方法,絶対的剰余価値,相対的剰余価値,特別剰余価値

[採点基準]

以下の内容がどの程度説明されているかによって得点を与えます。絶対評価を基本としますが,相対評価を加味(全員の答案を読んだうえで採点基準・配点を変更)する可能性があります。

(1) 基本的な概念を150字程度で正確に説明できる理解度・文章作成力を問う。(1,2は各15点,3は10点)

1. 貨幣商品の特殊性
(a) すべての商品から等価形態に置かれることにより一般的等価物としての性質をもつ
(b) そのものの使用価値の他に全面的な直接的交換可能性という形態的使用価値をもつ
2. 労働力商品の特殊性
(a) 労働力商品の価値:労働者階級の再生産に必要な生活手段
(b) 労働力商品の使用価値:価値の創造
(c) 労働力の価値と労働が生み出す価値とは無関係→価値増殖の可能性
3. 土地の理論価格
(a) 平均利潤率の成立によって定期的に利得を生む土地などが擬制資本になる
(b) 地代を利子率で資本還元することによって土地の理論価格が計算できる

(2) 最大限の価値増殖を求める個別諸資本間の行動,特に特別剰余価値の発生・消滅,競争の強制作用による新生産方法導入メカニズムの理解とその文章表現力を問う。 (60点)

1. 絶対的剰余価値の増大とその特徴
2. 相対的剰余価値の増大とその特徴
3. 特別剰余価値:新生産方法導入による生産力上昇→個別的価値の低下・個別的価値の加重平均である社会的価値との差額
(a) 新生産方法の導入競争の2つの局面
(b) 生産力の飛躍的発展と相対的剰余価値との関係
[成績評価への質問について]
経済学部では,成績評価についての質問は所定の質問用紙に記入し学生部を通じて担当者に送付されることになっています。この方法以外での質問は受け付けられません。
質問の際には上記の採点基準を熟読し,自分の答案と比較して自己採点したうえで,それでも疑義がある場合のみ疑義の内容を詳しく記入して,所定の手続きをとってください。
なお,採点は採点基準に従って答案を複数回読み直して厳密に行なっています。講義を担当するようになって以来,今までに学生からの質問によって成績評価を変更したことは1度もありません。「ダメもと」で質問しても無駄ですので,念のため

[成績統計]

採点と成績集計が終了しましたので成績統計と講評を掲載しました(7/25)。
第1表 評語*の度数分布
**  ** 合計
15年 14年 13年 15年 14年 13年 15年 14年 13年
A 19.5 29.9 30.1 0.0 9.1 0.0 18.7 28.9 29.3
B 32.8 21.2 24.5 16.7 0.0 0.0 32.1 20.2 23.9
C 30.5 26.4 29.6 16.7 18.2 50.0 29.9 26.0 30.2
D 17.2 22.5 15.7 66.7 72.7 50.0 19.4 24.8 16.7
受験者 128 231 216 6 11 6 134 242 222
欠席率 7.9 9.8 8.1 45.5 57.7 68.4 10.7 14.2 12.6
受験者数に占める各評語の人数の%
欠席率は欠席者の履修者に対する%
* 評語は,試験の得点(素点)にレポートの得点(25点満点)を加算(評点)し,
A,B評価はその評価にふさわしい水準の答案であること,
単位取得の最低基準としてレポートの点数は素点を超えない範囲で加点
を原則として,以下の基準で評価した。
A:素点80点以上,OR評点80点以上AND素点65点以上
B:素点60点以上,OR評点60点以上AND素点50点以上
C:素点40点以上,OR評点40点以上AND素点20点以上
D:上記以外
** 新は新規履修者,再は再履修者(以下同じ)。
第2表 得点状況
最高点(最低点) 平均点
全体
(1) 39(0) 29(2) 52.1 27.1 50.9
1. 15(0) 12(0) 58.9 32.2 57.7
2. 15(0) 12(0) 51.1 32.2 50.2
3. 10(0) 5(0) 43.2 11.7 41.8
(2) 55(0) 33(5) 48.1 32.5 47.4
合計
[14年]
93(0)
[90(0)]
62(13)
[53(2)]
49.7
[37.9]
30.3
[23.1]
48.8
[36.8]
問題別の平均点は各問の満点に対する%。
第1表の評語の度数分布をみて特徴的なのが,2014年度の成績に比べてA評価の比率が約10ポイントも低下したこと,D評価が約5ポイント低下したことです(新規履修者のみ,以下同じ)。
第1図の得点分布を見ると,14年度がかなりフラットな分布だったのに対して,60点をピークとするほぼ正規分布になっています。

この変化は,問題(1)も(2)も授業内レポートの一部であり,解答のヒントとなるキーワードが提示されていて平易な問題だったことが大きいでしょう。
ただし,(1)の2は労働力商品の価値と使用価値の区別があいまいな答案が少なからずあり平均点は51点,(2)の3は公表されている過去問にはなく,擬制資本や資本還元の意味がわかっていない答案が多数あったために平均点は43点と低水準でした。
また,(2)は絶対的剰余価値について労働日の延長の記述はあっても「必要労働時間」との関係に言及していない答案,相対的剰余価値は「必要労働時間」の短縮のメカニズムに言及していない答案や,特別剰余価値の発生・消滅のメカニズムによる生産力の向上との関係に言及していない答案が目立ち,平均点が48点と低くなりました。
剰余価値の3つの概念と「競争」がキーワードとして提示されて,個別資本が最大限の価値増殖のためにとる行動を問われているのですから,これらのキーワードの内容,違いや関連を説明しないと個別資本の行動の充分な説明とならないのです。この説明ができたかどうかの差が第3図の得点分布に現れています。
以上のように,問題の難易度としては平易であっても,授業内容の理解度によって得点に差が出たために,合計得点の得点分布が正規分布となったと考えられます。
第1図 得点分布*(各得点階層が受験者総数に占める割合)

*新規履修者のみ。再履修者は受験者が少なくばらつきが大きいので省略した。

第2図 問題別得点分布(1)
第3図 問題別得点分布(2)
第3表 レポート提出率(%)
課題番号 R1 R2 R3 R4 R5 合計
68.3 69.1 66.9 69.1 72.7 69.2
27.3 9.1 0.0 9.1 9.1 10.9
全体 65.3 64.7 62.0 64.7 68.0 64.9
第4表 レポート提出と平均点の相関
提出回数 5 4 3 2-0
平均点 57.0 52.3 37.9 32.2
レポート評価 A B C D
平均点 69.6 49.6 46.4 33.4
再履修者の成績の悪さは毎年のことですが,15年度もD評価が3人に2人の割合となっています。
その最大の原因は第3表のレポート提出率に現れています。新規履修者の69%に対して10.9%という低さです。これでは授業内容を理解するのは無理でしょう。
第4表のレポート提出と成績との相関では,提出回数が多いほど,レポート評価が高いほど試験の平均点が高くなっていることが明確です。この相関の高さをみればレポートを自分の力で書いて提出することの重要性は一目瞭然でしょう。
第4図はクラス別のレポート評価と平均点を示しています。クラスによってこれだけの差がある理由は私にはわかりませんが,この図からもレポート提出の重要性が読み取れます。また第5図は試験の成績とレポート評価の散布図でも正の相関が読み取れます。

つまりは,授業への出席によって私の話を集中して聴いて理解する努力をすることを大前提とし,さらに授業内レポートを毎回自分の力でまとめる努力をすること,公表される[論述ポイント]にしたがって自分のレポートを改善すること,これらを実践することが授業内容の理解と単位取得,好成績のための王道なのだ,ということは以上で明らかでしょう。

なお,答案の最後に「レポート提出は大変だったが,授業内容の理解が深まったし,試験前に特別な受験勉強をしなくてすんだ」という主旨の感想を10人以上の学生が書いていました。それらの学生の答案の多くは要点を抑えていて論旨が明確でした。また,数人の学生はレポート提出を怠ったことが,答案の出来の悪さにつながったことを自覚し,秋学期には授業への出席とレポート提出を頑張りたいと記していました。
第4図 クラス*ごとの成績の差(レポート評価との相関)

*時間割に指定されたクラスのみで,履修者の極端に少ないクラスは除いた。
第5図 試験とレポート評価との相関

*時間割に指定されたクラスのみで,履修者の極端に少ないクラスは除いた。

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