マルクス経済学 II 試験問題と採点結果
(2015年度)


 秋学期末試験問題 

採点基準 成績統計と講評

《秋学期末試験》試験時間:50分,持込み不可

[問題]

(1) 以下の1,2を(  )内の概念を使用して簡潔に説明しなさい。解答は,それぞれ答案用紙の3行前後で書きなさい。。

  1. 生産力が向上しても資本の技術的構成も有機的構成も高度化しないのはどのような場合かを説明しなさい。(賃金,労働時間)
  2. 単純再生産における労働手段の理想的年齢構成を説明しなさい。(固定資本,販売と購買の分離)

(2) 競争が全面的に支配する資本主義における景気循環のメカニズムと,景気循環の繰り返しの中で市場構造が変化していくメカニズムを説明しなさい。
 説明の際には以下の概念をすべて使用すること(行数制限なし)。

�T部門の不均等的拡大 競争的市場の特徴 固定資本 新生産方法 最低必要資本量 資本の集積・集中

[採点基準]

以下の内容がどの程度説明されているかによって得点を与えます。絶対評価を基本としますが,相対評価を加味(全員の答案を読んだうえで採点基準・配点を変更)する可能性があります。

(1) 基本的な概念を150字前後で正確に説明できる理解度・文章作成力を問う。[各15点,計30点]

1. 資本の技術的構成と有機的構成の理解
1) 資本主義においては生産力上昇→技術的構成・有機的構成高度化
2) 生産力の上昇に応じて労働支出量を削減→技術的構成・有機的構成不変
2. 単純再生産における労働手段の理想的年齢構成
1) 固定資本の流通の特殊性
2) 個別資本レベルでの販売と購買の分離
3) 社会的総資本での販売と購買の一致条件:毎年の固定資本の価値移転総額=現物更新総額

(2) 競争段階における景気循環と市場構造の変化のメカニズムの理論的説明の理解度・文章作成力を問う。[70点]

1. 市場停滞下での個別資本の行動(15点)
1) 競争的市場の特徴:価格支配の可能性
2) 新生産方法の導入・普及と特別M
3) 設備投資の集中的展開
2. 固定資本投資と需要の加速度的波及(15点)
1) 関連部門への需要の加速度的拡大
2) 関連部門での生産・投資拡大の相互誘発
3) 好況過程:I 部門の不均等的拡大の内実
3. 生産と消費の矛盾の成熟:過剰生産恐慌(20点)
1) 生産手段需要の変化
2) 好況末期の個別資本の行動
3) 恐慌とその機能
4. 最低必要資本量の増大と資本の集積・集中による市場構造の変化(20点)
1) 最低必要資本量の増大(生産力向上にともなう生産の大規模化)
2) 資本の集積・集中(競争と信用)
[成績評価への質問について]
経済学部では,成績評価についての質問は所定の質問用紙に記入し学生部を通じて担当者に送付されることになっています。この方法以外での質問は受け付けられません。
質問の際には上記の採点基準を熟読し,自分の答案と比較して自己採点したうえで,それでも疑義がある場合のみ,疑義の内容を詳しく記入して,所定の手続きをとってください。
なお,採点は採点基準に従って答案を複数回読み直して厳密に行なっています。講義を担当するようになって以来,今までに学生からの質問によって成績評価を変更したことは1度もありません。「ダメもと」で質問しても無駄ですので,念のため。

[成績統計とコメント]

採点と成績集計が終了しましたので成績統計とコメントを掲載します(1/29)。
第1表 評語*の度数分布
新**   再**  合計 
15年 14年 13年 15年 14年 13年 15年 14年 13年
A 20.4 7.0 22.9 0.0 0.0 0.0 19.4 6.5 22.2
B 24.7 18.1 20.0 40.0 7.1 20.0 25.5 17.3 20.0
C 38.7 46.8 30.9 40.0 35.7 20.0 38.8 45.9 30.6
D 16.1 28.1 26.3 20.0 57.1 60.0 16.3 30.3 27.2
受験者 93 171 175 5 14 5 98 185 180
欠席率 26.8 21.9 17.1 64.3 36.4 78.3 30.5 23.2 23.1
受験者数に占める各評語の人数の%
欠席率は欠席者の履修者に対する%
* 評語は,試験の得点(素点)にレポートの得点(30点満点)を加算(評点)し,
A,B評価はその評価にふさわしい水準の答案であること,
単位取得の最低基準としてレポートの点数は素点を超えない範囲で加点
を原則として,以下の基準で評価した。
A:素点80点以上,OR評点80点以上AND素点65点以上
B:素点60点以上,OR評点60点以上AND素点50点以上
C:素点40点以上,OR評点40点以上AND素点20点以上
D:上記以外
** 新は新規履修者,再は再履修者(以下同じ)。
第2表 得点状況
最高点 最低点 平均点
新 再 新 再 新 再 全体
(1) 28 12 0 0 38.0 20.0 37.0
1. 15 2 0 0 29.0 2.7 27.7
2. 15 10 0 0 46.9 37.3 46.4
(2) 70 50 0 22 50.7 52.6 50.8
合計] 90 58 0 22 46.8 42.8 46.6
14年度 90 53 0 2 37.9 23.1 36.8
問題別の平均点は各問の満点に対する%。
第1図 得点分布*(各得点階層が受験者総数に占める割合)

*新規履修者のみ。再履修者は受験者が少なくばらつきが大きいので省略した。

第2-1図 問題別得点分布(1)
第2-2図 問題別得点分布(2)
第1表の評語の度数分布をみて特徴的なのが,2014年度の成績に比べてA評価が激増して2013年度並みにもどったこと,D評価が16.1%に減少したことです(新規履修者のみ,以下同じ)。

この変化は,言うまでもなく第1図の合計得点構成比で50〜60点をピークとするほぼ正規分布となっていること,第2表の平均点が昨年度より9点上がっていることの反映です。さらに,これは設問別の平均点の表と得点構成比のグラフで明らかなように,問題(2)の得点が高かったことが原因です。

この成績の格差は,2014年度に再生産表式の問題を出題したこと,過去問になかった設問があったことで低得点となったことが主因で,今年度は2013年度の問題(授業内レポートに準拠した問題)に近い出題だったことも貢献していると思われます。

ただし,(1)の1の資本の技術的構成と有機的構成の問題は,2013年度にも出題していますが,答える内容を若干変更しただけで,平均点が29点と非常に低くなっています。資本主義経済においては,生産力の向上が技術的構成と有機的構成の高度化としてあらわれるが,生産力の向上の成果の利用の仕方を変えれば,どちらかだけが変化する場合,どちらも変化しない場合がありうることは,授業でも具体例を挙げて強調した部分です。
授業内容を理解し,さらに2013年度の問題を学習していれば,その応用として今年度の問題も答えられるはずなのです,どうも「暗記」に頼った学習をしている学生が多いようです。

2014年度の再生産表式の問題もそうですが,授業で私が強調したり説明を繰り返したりする部分は重要だということも,何回か話していることですから,漫然と聴講するのではなくアンテナを張って集中することが大切です。

問題(2)も平均点こそ高かったのですが,論理展開や論述の仕方には,学生によって大きな差がありました。景気循環と市場構造の変化のメカニズムは,秋学期の最重要テーマですし,ヒントとしてキーワードが提示されているのですから,講義資料や教科書をきちんと勉強し,授業内レポートを自分の力で書いた学生にとっては,むしろ優しい問題だったはずです。
第3表 レポート提出率(%)
課題番号 R6 R7 R8 R9 R10 R11 合計
新 60.6 56.7 52.8 56.7 48.0 61.4 56.0
再 21.4 28.6 21.4 21.4 14.3 28.6 22.6
全体 56.7 53.9 49.6 53.2 44.7 58.2 52.7
第4表 レポート提出と平均点の相関
提出回数 6-5 4-3 2-1 0
平均点 52.2 39.8 45.8 27.4
レポート評価 A B C D
平均点 70.3 50.9 47.4 34.5
第3表のレポート提出率をみて特徴的なのは課題10の提出率の低さです。課題10は景気循環のメカニズムについてで,試験問題(2)の解答の主要部分です。上述のように,(2)の答案の論理展開や論点の説明の仕方の巧拙は,課題10の提出率の低さと関係があるのかもしれません。
秋学期の授業内容の総まとめのようなテーマですから,自力でレポートを書くのは難しかったかもしれません。しかし,論述ポイントの公開後に教科書や講義資料をもとに書き直す努力をしていれば,試験での答案はかなり書きやすかったはずです。
市場構造の変化の部分も,課題6を自力で書いて提出していれば,景気循環のメカニズムと関係づけて書くのもそれほど難しいわけではないはず。実際,2人の学生が満点でした。
なお,再履修者の成績の悪さは毎年のことですが,その最大の原因がレポート提出率の低さ,つまり努力不足にあることは明白です。

第4表のレポート提出と成績,第3,4図のクラス別の相関の高さをみれば,レポートを自分の力で書いて提出することの重要性は明らかでしょう。

つまりは,授業への出席によって私の話を集中して聴いて理解する努力をすることを大前提とし,さらに授業内レポートを毎回自分の力でまとめる努力をすること,公表される[論述ポイント]にしたがって教科書や講義資料を基に自分のレポートを改善すること,これらを実践することが授業内容の理解と単位取得,好成績のための王道なのだ,ということは以上で明らかでしょう。
第3図 試験とレポート評価との相関
第4図 クラス*ごとの成績の差(レポート評価との相関)

*時間割に指定されたクラスのみで,履修者の極端に少ないクラスは除いた。

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