[問題] アメリカの経常赤字のファイナンス構造の特徴を,次の(1)〜(3)の時期について説明しなさい。(試験時間50分,持ち込み可)
答案用紙に記入する順序は問わないが,解答の冒頭には時期の番号を記すこと。
(1) 1980年代前半,プラザ合意成立以前
(2) 1990年代のクリントン政権期
(3) 2000年代のブッシュ政権期,リーマン・ショック以前
以下の内容がどの程度説明されているかによって得点を与えます。絶対評価を基本としますが,相対評価を加味(全員の答案を読んだうえで採点基準・配点を変更)する可能性があります。
- (1) 1983〜85年:経常赤字の増大→「危うい循環」の形成[40点]
- (a) 高金利とドル高によるキャピタル・ゲインを求める投機的な外国民間対米投資
⇒資本流入によるファイナンス
(b) このファイナンス構造の脆弱性=「危うい循環」
高金利・ドル高の継続に依存した対米民間投資=ドル買い
⇔アメリカ経済の実態と乖離した異常ドル高
民間資本のドル離れ⇒ドルのスパイラル的下落=ドル大暴落の危険性を内包した循環
ドル大暴落⇒ドルの基軸通貨特権の喪失⇒アメリカの経常赤字の持続不可能
⇒アメリカ経済の「繁栄」持続が不可能
- (2) 90年代:経常赤字の膨大化→投機的金融取引増大に依存した経常赤字のファイナンス[30点]
- (a) アメリカをハブとするグローバルで大規模な資本取引循環の成立
(b) 「危うい循環」の深化・不安定性の増大
- (3) 2001〜07年:経常赤字のいっそうの膨大化[30点]
- (a) サブプライム・ローン関連の投機的取引の膨大化
→巨額の民間資本の流出入
(b) 政府資本収支の黒字累増:アジア・マネーとオイル・マネー
(c) 「危うい循環」の不安定性の増大
住宅価格上昇に依存した経済成長・投機的取引の破綻の必然性
⇒巨額の外国民間資本の流入持続の限界
採点と成績集計が終わりましたので,成績統計とコメントを掲載しました。(7/28)
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第1図 得点分布*(各得点階層が受験者総数に占める割合) |
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第3表 レポート提出率(%)
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第4表 レポート提出と平均点の相関
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コメント 1980年代以降リーマン・ショック以前までのアメリカの「繁栄」維持の条件としての経常赤字のファイナンス構造の各時期の特徴の説明を求める問題。ファイナンス「構造」の説明が要求されているのですから,たんにどのようにファイナンスされたかだけでなく,その構造が脆弱なこと,つまり本講義のキー概念の「危うい循環」の理解の上に立った説明が必要になります。 もちろん,授業に出席し講義資料でノートをとって授業内レポートを提出し,論述ポイントで復習している学生にとっては平易な問題だったはずです。 それらが不充分だったとしても,持込み可ですから,教科書と講義資料を持ち込んでいれば解答は可能でしょう。ただし,それらを試験前に読んで理解していないと,簡潔で的確な答案を書くのは難しいはずです。このことは上の成績統計に表れています。 第1表の評語の度数分布をみると,3年生のA評価は30%と昨年度の56%に比べると大幅に減少しています。4年生は例年3年生より成績は悪いのですが,今年度はA評価は1人だけでした。 D評価は3年生で16.7%と昨年の12%より増加していますが,4年生では16.1%で昨年度の36.8%より大幅に減少しました。 この結果の最大の原因は,第3表のレポート提出率の低さにあると思われます。 昨年度は,3年生の提出率が64.1%,4年生が27.6%だったのですが,今年度はそれぞれ49.0%,19.4%と大幅に減少しています。 実際,D評価となった学生は2人を除いてすべてレポート提出回数ゼロでした。その2人もレポート提出回数もその評価も低水準でした。 4年生のD評価が減ったのは,答案の文章を見ると,持込み可とはいえ教科書や講義資料を前もって読み込んで試験の臨んだのではないでしょうか。 以下,設問別にコメントしておきます。 問題(1)は,授業内レポートの課題4の論述ポイントの2の80年代前半のアメリカの経常赤字のファイナンス構造を答える問題です。 高金利とドル高によるキャピタルゲインを求める外国資本の対米投資によってファイナンスされたことを答えればよいわけですが,その際には,高金利とドル高が進んだ理由としてレーガン政権の政策の特徴に言及する必要があります。 3年生の平均点は満点比67.1点とかなりの高水準でした。しかも第2図が示すように,25点(満点比62.5点)以上が受験者の63%となっています。 これに対して4年生は平均点が48.4点と3年生より19点も低く,20点(満点比50点)以下が74%を占めています。 問題(2)は,授業内レポートの課題5の論述ポイントの2と3の90年代のアメリカの経常赤字のファイナンス構造を答える問題です。 最後に,毎年最初の授業でも説明し,ここにも書いていることですが,第4表が示すように,内容をともなったレポートの提出と成績とは明確に相関関係があります。授業への出席とレポートの提出が単位取得と高評価を得るための王道であることはいうまでもないでしょう。。 |