第2章 視覚障害者に対するアンケート調査


(1)目的

 東日本大震災後の節電により、視覚障害者の生活にどのような影響があったか、また、どのような対策を希望しているかを明らかにするため、当事者を対象にしたアンケート調査を実施した。

(2)方法

 2011年12月から2012年1月にかけて、視覚障害当事者団体や盲学校等の視覚障害当事者に対してアンケート調査を実施した。研究1で報告された事例の中から、特に重要と考えられる項目を抽出し、調査票を作成した。質問項目を大別すると、回答者のプロフィール、節電時の困り事、節電対策のグッドプラクティス、および公共交通機関等への要望であった。なお、事前の事例調査では、エスカレータの停止によってホームでの人の流れが変わることで、ホームから転落しそうになったというケースがあったため、ロービジョン者だけでなく全盲の視覚障害者も対象とした。本研究では、対象の団体に応じて、内容の異なる以下の2つの調査を実施した。

1)調査1:日本ロービジョン学会会員および視覚障害当事者団体への調査

 日本ロービジョン学会にメールアドレスを登録している全会員に向けて、調査協力の依頼文を送信した。調査の流れは、協力可能であると返信のあった会員に対して推定必要部数の調査票を郵送し、当人の関係する視覚障害当事者に調査を実施するという方式であった。医師、視能訓練士等の医療者の会員の場合には受診者を対象に、教育・福祉施設等に勤務する会員の場合には利用者を対象とした調査実施を依頼した。また、会員本人が視覚障害者の場合には、本人の回答を求めた。回答の方法は、原則的に、回答者自身または会員の聞き取りにより記入された調査票の郵送によったが、回答者からの希望によって電子メールによる回答も受けることとした。

 なお、調査実施にあたっては、各機関の倫理規程や個人情報保護方針に従うこととした。

 また、視覚障害当事者団体である日本網膜色素変性症協会と東京都盲人福祉協会の会員に対しても同様の調査協力を依頼した。日本網膜色素変性症協会の場合には、調査票を同協会に送付し、埼玉支部、千葉支部、東京支部、神奈川支部に所属する会員の中から800名に対して調査を実施していただいたほか、同じ内容の電子版の調査票を電子メールにて全国の会員439名に送信していただいた。東京都盲人福祉協会の場合には、調査票を同協会に送付し、無作為に抽出した200名の会員に対して調査を実施していただいた。なお、いずれも回答の方法は日本ロービジョン学会のものと同様であった。

2)調査2:視覚特別支援学校(盲学校)への調査

 上記の団体への調査とは異なり、節電に伴う児童生徒や教職員の安全・安心への影響や、公共交通機関へ提出した要望について、個人ではなく学校に回答していただいた。全国の盲学校全70校に対して調査票を郵送し、ファックスにて回答を回収した。

(3)結果・考察

1)調査1

 各団体より、計568件の回答を得た。いずれも調査内容は同じであったので、以下、それぞれの結果を合わせて分析する。

a)回答者のプロフィール

 回答者の性別を表2.1および図2.1に示した。男女がほぼ均等であり、大きな偏りはなかった。

表2.1 回答者の性別

回答者数
比率(%)
男性
268
47.2
女性
292
51.4
無回答
8
1.4
合計
568
100

表2.1 回答者の性別を棒グラフに表したもの

図2.1 回答者の性別

 年齢を表2.2および図2.2に示した。最も多かったのは60歳代であり、比較的年配の回答者が多かった。厚生労働省の平成18年身体障害児・者実態調査と比較すると、70歳以上の比率が低いものの、60歳以上が半数以上を占めているという点では比較的近い分布であった。

表2.2 回答者の年齢

回答者数
比率(%)
10歳未満
1
0.2
10代
3
0.5
20代
15
2.6
30代
47
8.3
40代
74
13.0
50代
106
18.7
60代
180
31.7
70代
117
20.6
80歳以上
20
3.5
無回答
5
0.9
合計
568
100

表2.2 回答者の年齢を棒グラフに表したもの

図2.2 回答者の年齢

 回答者の住居および活動地域を表2.3、図2.3、および表2.4、図2.4に示した。東日本大震災による節電は東日本の各地域を中心に実施された可能性があるため、東日本とそれ以外の地域で分けて集計した。その結果、無回答を除くと回答者の9割強が東日本に住んでおり、同地域で活動していることがわかった。

表2.3 回答者の住居地域

 
回答者数
比率(%)
東日本
522
91.9
北海道・西日本
36
6.3
無回答
10
1.8
合計
568
100

表2.3 回答者の住居地域を棒グラフに表したもの

図2.3 回答者の住居地域

表2.4 回答者の活動地域

回答者数
比率(%)
東日本
282
49.6
北海道・西日本
27
4.8
無回答
259
45.6
合計
568
100

表2.4 回答者の活動地域を棒グラフに表したもの

図2.4 回答者の活動地域

 回答者が日常的に使用している交通機関を表2.5および図2.5に示した。約8割が電車を、約6割がバスを日常的に利用していた。

表2.5 日常的に使用している交通機関(複数回答可)

回答者数
比率(%)
電車
443
78.0
バス
338
59.5
タクシー
212
37.3
自家用車
161
28.3
0
0.0
その他
59
10.4
無回答
8
1.4
合計
568
100

表2.5 日常的に使用している交通機関を棒グラフに表したもの

図2.5 日常的に使用している交通機関(複数回答可)

 回答者の職業を表2.6および図2.6に示した。通勤を伴う仕事と主婦がそれぞれ3割程度を占めた。

表2.6 回答者の職業

回答者数
比率(%)
通勤を伴う仕事
192
33.8
在宅の仕事
53
9.3
主婦
169
29.8
学生
10
1.8
無職
163
28.7
その他
32
5.6
無回答
10
1.8
合計
568
100

表2.6 回答者の職業を棒グラフに表したもの

図2.6 回答者の職業

 視覚障害の身体障害者手帳を有しているか否かを表2.7および図2.7に示した。8割以上が身体障害者手帳を有している視覚障害者であることがわかった。

表2.7 視覚障害での身体障害者手帳の所有

回答者数
比率(%)
持っている
475
83.6
持っていない
92
16.2
無回答
1
0.2
合計
568
100

表2.7 視覚障害での身体障害者手帳の所有を棒グラフに表したもの

図2.7 視覚障害での身体障害者手帳の所有

 身体障害者手帳の等級を表2.8および図2.8に示した。最も多かったのが2級であり、次いで1級が多かった。1級の割合が少し低いものの1・2級の重度視覚障害者の割合が高い点では比較的全国の分布に近かった。

表2.8 身体障害者手帳の等級

回答者数
比率(%)
1級
121
25.5
2級
277
58.3
3級
29
6.1
4級
14
2.9
5級
20
4.2
6級
3
0.6
無回答
11
2.3
合計
475
100

表2.8 身体障害者手帳の等級を棒グラフに表したもの

図2.8 身体障害者手帳の等級

 障害の種類を表2.9および図2.9に示した。視力障害、視野障害ともに割合が高かった。

表2.9 回答者の障害の種類(障害の級数回答者の人数)

回答者数
比率(%)
身障手帳の視力障害の等級回答者数
194
40.8
身障手帳の視野障害の等級回答者数
266
56.0
【聴覚障害】の等級(身障手帳の視覚障害以外の障害)回答者数
17
3.6
【肢体不自由】の等級(身障手帳の視覚障害以外の障害)回答者数
7
1.5
【その他の身体障害】の等級(身障手帳の視覚障害以外の障害)回答者数
12
2.5
合計
475
100

表2.9 回答者の障害の種類を棒グラフに表したもの

図2.9 回答者の障害の種類

 また、身体障害者手帳をもっていない回答者の視力分布(左右良い方の視力)を表2.10、図2.10に示した。手帳を取得していないこともあり、視力0.1未満など、極端に低い視力の回答者は少なかった。

表2.10 身体障害者手帳を持っていない回答者の左右良い方の視力

回答者数
比率(%)
0.1未満
1
1.1
0.1〜0.3未満
6
6.5
0.3〜0.5未満
12
13.0
0.5〜0.8未満
31
33.7
0.8〜1.0未満
11
12.0
1.0〜1.2未満
11
12.0
1.2以上
10
10.9
無回答
10
10.9
合計
92
100

表2.10 身体障害者手帳を持っていない回答者の左右良い方の視力を棒グラフに表したもの

図2.10 身体障害者手帳を持っていない回答者の左右良い方の視力

 視力以外の見えにくさを表2.11および図2.11に示した。

表2.11 視力以外の見えにくさ(複数回答可)

 
回答者数

比率(%)

屋外等の明るいところは、まぶしくて見えにくい

412
72.5
薄暗くなると途端に見えにくくなる
432
76.1
視野が狭い
422
74.3
中心部が見えにくい
113
19.9
視野のところどころに見えにくいところがある
188
33.1
色の区別が難しい
253
44.5
目が揺れてしまって見えにくい
64
11.3
その他
66
11.6
無回答
32
5.6
合計
568
100

表2.11 視力以外の見えにくさを棒グラフに表したもの

図2.11 視力以外の見えにくさ(複数回答可)

 見えにくくなった時期を表2.12および図2.12に示した。最も多かったのは40歳代であったが、どの年齢も一定の数の回答があった。

表2.12 見えにくくなった時期

回答者数
比率(%)
20歳未満
97
17.1
20代
64
11.3
30代
85
15.0
40代
136
23.0
50代
96
16.9
60際以上
61
10.7
無回答
29
5.1
合計
568
100

表2.12 見えにくくなった時期を棒グラフに表したもの

図2.12 見えにくくなった時期

 外出の際の移動方法を表2.13および図2.13に示した。ガイドを利用せずに単独で歩行している回答者が多く、白杖利用の有無を問わなければ7割の回答者が該当した。

表2.13 外出の際の移動方法

回答者数
比率(%)
主として白杖を使用している
195
34.3
主として盲導犬を使用している
2
0.4
主としてガイドを利用している
74
13.0
白杖・盲導犬・ガイド等は使わず、単独で移動している
208
36.6
その他
74
13.0
無回答
15
2.6
合計
568
100

表2.13 外出の際の移動方法を棒グラフに表したもの

図2.13 外出の際の移動方法

 白杖の利用方法を表2.14および図2.14に示した。歩行するときには常に白杖を使用している人が最も多かった。シンボルケーンとして利用している人は1割にも満たなかった。

表2.14 白杖の利用方法

回答者数
比率(%)

いつも使用している

128
65.6
携帯型を持ち歩いていて、暗いところ等、必要があるときのみ使用
47
24.1
持ち歩いているが、シンボルケーン(目印)としてのみ使用
17
8.7
その他
1
0.5
無回答
2
1.0
合計
195
100

表2.14 白杖の利用方法を棒グラフに表したもの

図2.14 白杖の利用方法

 外出の頻度を表2.15および図2.15に示した。ほとんど毎日外出している回答者が半数以上を占めた他、全体的に外出の頻度が高いことがわかった。

表2.15 外出の頻度

回答者数
比率(%)
ほとんど毎日
324
57.0
週に2〜3回
151
26.6
週に1回程度
39
6.9
月に2〜3回
30
5.3
年に数回
6
1.1
その他
15
2.6
無回答
3
0.5
合計
568
100

表2.15 外出の頻度を棒グラフに表したもの

図2.15 外出の頻度

 歩行訓練経験の有無を表2.16および図2.16に示した。歩行訓練を受けた経験のある回答者の方が少ないことがわかった。

表2.16 歩行訓練経験の有無

回答者数
比率(%)
ある
188
33.1
ない
368

64.8

無回答
12
2.1
合計
568
100

表2.16 歩行訓練経験の有無を棒グラフに表したもの

図2.16 歩行訓練経験の有無

 歩行訓練を受けた場所を表2.17および図2.17に示した。福祉施設で訓練を受けた回答者が4割を占め、盲学校で受けた人は比較的少なかった。

表2.17 歩行訓練を受けた場所(複数回答可)

回答者数
比率(%)
盲学校
34
18.1
福祉施設
77
41.0
病院
27
14.4
その他
61
32.4
無回答
3
1.6
合計
188
100

表2.17 歩行訓練を受けた場所を棒グラフに表したもの

図2.17 歩行訓練を受けた場所(複数回答可)

 外出の際によく利用している補助具に関して表2.18および図2.18に示した。約7割がまぶしさを防ぐための補助具を利用していた。

表2.18 外出の際によく利用している補助具(複数回答可)

 
回答者数
比率(%)
ルーペ等の近くの文字等を読むための補助具を使っている
177
31.2
単眼鏡等の遠くの文字等を読むための補助具を使っている
55
9.7
サングラス等のまぶしさを防ぐ補助具を使っている
394
69.4
懐中電灯等の暗くて見えにくいときに使う補助具を使っている
184
32.4
その他
54
9.5
無回答
74
13.0
合計
568
100

表2.18 外出の際によく利用している補助具を棒グラフに表したもの

図2.18 外出の際によく利用している補助具(複数回答可)

b)計画停電や夏の節電の影響について

 計画停電や夏の節電によって、生活や活動等に影響があったと回答した回答者の割合を表2.19および図2.19に、東日本とそれ以外の地域に分けて示した。回答者の絶対数が異なるので単純な比較はできないが、「影響があり非常に困った」と回答した人は東日本で3割に及んだのに対し、東日本以外ではわずか2.8%に留まった。また、「不便だった」との回答が東日本で半数を超えたのに対し、それ以外の地域では3割程度であった。一方で、東日本以外の地域では「全く困らなかった」と回答したものが4割強いたのに対し、東日本では1割に満たなかった。総じて、東日本における視覚障害者の多くは節電に伴って不便や困難を感じていたことがわかった。

表2.19 節電の影響の有無

 
合計
生活や活動等に影響が出るくらい非常に困った。
生活や活動等にはほとんど影響しなかったが不便だった。
全く困らなかった。
まぶしくなくなる等、通常のときよりもむしろ快適だった。
その他
無回答
  回答者数 比率(%) 回答者数 比率(%) 回答者数 比率(%) 回答者数 比率(%) 回答者数 比率(%) 回答者数 比率(%) 回答者数 比率(%)
東日本
522
100
157
30.1
285
54.6
51
9.8
5
1.0
15
2.9
9
1.7
北海道・西日本
36
100
1
2.8
12
33.3
15
41.7
3
8.3
5
13.9
-
0.0
合計
558
100
158
28.3
297
53.2
66
11.8
8
1.4
20
3.6
9
1.6

表2.19 節電の影響の有無を棒グラフに表したもの

図2.19 節電の影響の有無

 計画停電や夏の節電によって、回答者が困難を感じた場所や場面を表2.20、図2.20および表2.21、図2.21に示した。最も影響の多かった場所は鉄道駅であり、次いで商業施設、屋外が多かった。困った場面として最も多く挙げられたのは階段であり、通路もほぼ同数であった。また、エスカレータやエレベータ、トイレやプラットホームで困難を感じた回答者も多かった。

表2.20 節電の際に困った場所(複数回答可)

合計
鉄道駅(電車や列車内を含む)
バス停やバスターミナル(バスの車内を含む)
職場や学校等の活動場所
役所等の公共施設
スーパー・ショッピングモール等の商業施設
道路等の屋外
空港
その他
無回答
回答者数 比率(%) 回答者数 比率(%) 回答者数 比率(%) 回答者数 比率(%) 回答者数 比率(%) 回答者数 比率(%) 回答者数 比率(%) 回答者数 比率(%) 回答者数 比率(%) 回答者数 比率(%)

東日本

466
100
312
67.0
101
21.7
109
23.4
139
29.8
229
49.1
203
43.6
9
1.9
45
9.7
56
12.0
北海道・西日本
18
100
5
27.8
2
11.1
3
16.7
4
22.2
7
38.9
2
11.1
2
11.1
-
0.0
6
33.3
合計
484
100
317
65.5
103
21.3
112
23.1
143
29.5
236
48.8
205
42.4
11
2.3
45
9.3
62
12.8

表2.20 節電の際に困った場所を棒グラフに表したもの

図2.20 節電の際に困った場所(複数回答可)

表2.21 節電の際に困った場面(複数回答可)

合計
通路
階段
エスカレータ
エレベータ
自動ドア
回答者数 比率(%) 回答者数 比率(%) 回答者数 比率(%) 回答者数 比率(%) 回答者数 比率(%) 回答者数 比率(%)
東日本
466
100
321
68.9
326
70.0
201
43.1
132
28.3
100
21.5
北海道・西日本
18
100
8
44.4
8
44.4
4
22.2
3
16.7
2
11.1

合計

484
100
329
68.0
334
69.0
205
42.4
135
27.9
102
21.1
 
券売機
改札口
トイレ
プラットホーム
自動販売機
停留所
回答者数 比率(%) 回答者数 比率(%) 回答者数 比率(%) 回答者数 比率(%) 回答者数 比率(%) 回答者数 比率(%)
東日本
82
17.6
111
23.8
187
40.1
145
31.1
80
17.2
56
12.0
北海道・西日本
2
11.1
2
11.1
4
22.2
2
11.1
4
22.2
1
5.6

合計

84

17.4

113
23.3
191
39.5
147
30.4
84
17.4
57
11.8
 
車内
その他
無回答
回答者数 比率(%) 回答者数 比率(%) 回答者数 比率(%)
東日本
123
26.4
31
6.7
46
9.9
北海道・西日本
3
16.7
3
16.7
5
27.8

合計

126
26.0
34
7.0
51
10.5

表2.21 節電の際に困った場面を棒グラフに表したもの

図2.21 節電の際に困った場面(複数回答可)

 困難を感じた具体的な理由について表2.22および図2.22に示した。最も多かったのは「足元や手元の照明が暗くなったから」であり、7割以上を占めた。また、研究1でも報告されたように、照明や看板を頼りに移動できなくなったり、人の動きが変わったからという理由も挙げられた。以上から、節電によって視覚障害者の移動に十分な明かりが得られなくなっていたことが明らかになった。

表2.22 節電の際に困った理由(複数回答可)

合計
足下や手元の照明が暗くなったから
天井灯等の照明に沿って歩くことが出来なくなったから
看板や自動販売機等のランドマークが利用出来なくなったから
普段と異なった経路を利用しなければならなかったから
普段と人の動き方や混雑の仕方が変わったから
回答者数 比率(%) 回答者数 比率(%) 回答者数 比率(%) 回答者数 比率(%) 回答者数 比率(%) 回答者数 比率(%)
東日本
466
100
353
75.8
169
36.3
131
28.1
88
18.9
113
24.2

北海道・西日本

18
100
10
55.6
2
11.1
5
27.8
2
11.1
3
16.7
合計
484
100
363
75.0
171
35.3
136
28.1
90
18.6
116
24.0
 
看板等の表示・サインの表示内容を確認できなかったから
座席や商品等の物の位置や人の存在を確認できなかったから
進入禁止のテープ、ロープ、カラーコーンに気づかずぶつかったから
その他
無回答
回答者数 比率(%) 回答者数 比率(%) 回答者数 比率(%) 回答者数 比率(%) 回答者数 比率(%)
東日本
133
28.5
185
39.7
161
34.5
20
4.3
48
10.3

北海道・西日本

4
22.2
4
22.2
6
33.3
1
5.6
4
22.2
合計
137
28.3
189
39.0
167
34.5
21
4.3
52
10.7

表2.22 節電の際に困った理由を棒グラフに表したもの

図2.22 節電の際に困った理由(複数回答可)

 節電で最も困った時期について表2.23および図2.23に示した。計画停電が実施された期間が最も多く挙げられたが、東日本大震災の発生から夏の電力供給制限期間が解除されるまでは困難を感じていた回答者が多かったようである。

表2.23 節電で最も困った時期(複数回答可)

 
合計
東日本大震災のあった3月11日から計画停電(輪番停電)が始まる前まで
計画停電(輪番停電)が実施された3月14日から3月下旬
計画停電(輪番停電)が終わった3月下旬から夏の電力供給制限が始まる前まで
夏の電力供給制限期間の7月1日から9月まで
夏の電力供給制限が解除されて以降
その他
無回答
回答者数 比率(%) 回答者数 比率(%) 回答者数 比率(%) 回答者数 比率(%) 回答者数 比率(%) 回答者数 比率(%) 回答者数 比率(%) 回答者数 比率(%)
東日本
522
100
110
21.1
225
43.1
147
28.2
148
28.4
45
8.6
34
6.5
157
30.1
北海道・西日本
36
100
1
2.8
1
2.8
3
8.3
5
13.9
-
0.0
2
5.6
26
72.2
合計
558
100
111
19.9
226
40.5
150
26.9
153
27.4
45
8.1
36
6.5
183
32.8

表2.23 節電で最も困った時期を棒グラフに表したもの

図2.23 節電で最も困った時期(複数回答可)

 また、夏の節電終了後の現在(調査実施の2011年12月〜2012年1月)も困っているか否かを表2.24および図2.24に示した。節電期間と比較すると困難を感じている回答者は減ったが、それでもなお3割の回答者が何らかの困難を感じていることがわかった。その具体的な内容の大半は、まだ節電を解除していない公共施設、商業施設、道路等が多く、照明が暗いために移動や活動に困難をきたしているというものであった。

表2.24 夏の節電が終わった後でも困っている割合

合計
今は困っていない
今も困っていることがある
無回答
回答者数 比率(%) 回答者数 比率(%) 回答者数 比率(%) 回答者数 比率(%)
東日本
522
100
233
44.6
164
31.4
125
23.9
北海道・西日本
36
100
12
33.3
3
8.3
21
58.3
合計
558
100
245
43.9
167
29.9
146
26.2

表2.24 夏の節電が終わった後でも困っている割合を棒グラフに表したもの

図2.24 夏の節電が終わった後でも困っている割合

c)今後の節電に対する対策や要望

 今後、やむを得ず節電をしなければならなくなった際に、視覚障害者の安全・安心を確保するために、どのような対策をとればよいと思うかという問いについて自由記述を求めた。全315件の記述を分類したところ、ポイントを絞った節電を行うべきであるという意見(113件)と、人的な補助を充実させて欲しいという意見(81件)が多かった。以下に具体的な内容をまとめた。

 )ポイントを絞った節電を望む声

 一律に節電を行うべきではなく、視覚障害者の視点から見て、安全に移動するために必要な電力は確保してほしい、人命に危険が及ぶような節電はあってはならない、という意見が多数挙げられた。特に重要と思われる場所や場面を以下にまとめる。

 )人的支援を望む声

 節電によって暗くなった場所では、人的な支援が必須であるという回答が多かった。ガイドヘルパーの充実等の制度面での対策を望む声から、駅のホームでの視覚障害者への声掛けといった誰でも実行可能なものまで様々な意見が挙がった。特に多かった意見を以下にまとめる。

 )その他

 視覚障害者が安全に安心して移動できるような設備の充実を望む声や、視覚の代替となる音声案内の普及を望む声、また節電に関する情報提供の徹底を望む声なども複数挙げられた。そのうち主要なものをまとめる。

2)調査2

 全国の盲学校全70校に対し調査票を配布し、57校から有効回答を得た(回収率81%)。以下、質問項目ごとに回答をまとめた。

a)学校のある地域で節電が実施されたか

 6割以上の地域(36件)で節電が実施されていたことがわかった(図2.25)。しかしながら、東日本とそれ以外の地域に分けて集計すると、東日本では全ての盲学校が節電を実施したのに対し、それ以外の地域では5割に満たなかった(表2.25)。盲学校においても、被害の大きかった東日本を中心に節電が実施されていたことがわかった。

全国の地域のうち、節電が実施された地域の割合を表した円グラフ。実施された地域が65%、実施されなかった地域が35%であった。

図2.25 節電が実施された地域の割合

表2.25 東日本とそれ以外の地域で節電が実施された割合

合計
回答者数 比率(%) 回答者数 比率(%) 回答者数 比率(%)
東日本
19
100
19
100
0

0.0

東日本以外
36
100
17
47.2
19
52.8
合計
55
100
36
65.5
19
34.5

b)節電によって視覚障害のある児童・生徒、教職員の安全・安心に影響があったか

 まず、この項目内の「節電」は、前項の「地域の節電」に限定していないため、前設問での地域の節電が実施されたという回答数(36件)と、本設問での影響の有無の合計回答数(45件)とは一致していない。

 節電による影響が「とてもあった」、「すこしだけあった」と回答したのは、合わせて全体の3割程度(14件)であった(図2.26)。東日本とそれ以外の地域に分けると、節電の影響があった地域は東日本で5割以上を占めるのに対し、東日本以外の地域では2割に満たなかった(表2.26)。また、東日本では大きな影響を受けている地域が3割にも及んでいた。以下に、具体的な影響の例をまとめた。

 第一に、外出先での歩行が節電前よりも困難になったという記述が多く見られた。その原因として挙げられたのは、照明の削減による明るさの低下、看板や自動販売機の消灯による目印の減少、エスカレータの停止による歩行ルートの変更などである。また、それに伴って、普段より目が疲れる、接触の危険が増すことも報告された。

 第二に、普段通りの日常活動が行えなくなったという報告があった。具体的には、バスや電車の運休により通勤・通学に支障が出た、店舗が営業しているか否かわからず入店を控えた、電車内の間引き消灯により本や携帯電話の画面が見えなかった、空席が見えにくいため座る位置が限定された、券売機のディスプレイが見えなかった、などである。

 その他、給食や寄宿舎の夕食が作れなくなる、冷房の制限により汗をかき、点字の読み取りに支障をきたす、などの記述があり、学校での児童生徒の学習環境にも大きな影響が出ていることがわかった。

表2.26 東日本とそれ以外の地域で節電の影響があった割合

合計
とてもあった
少しあった
ほとんどなかった
回答者数 比率(%) 回答者数 比率(%) 回答者数 比率(%) 回答者数 比率(%)
東日本
19
100
6

31.6

4
21.1
9
47.4
東日本以外
26
100
0
0.0
4
15.4
22
84.6
合計
45
100
6
13.3
8
17.8
31
68.9

視覚障害者に対して節電の影響があったかどうかを表した円グラフ。とてもあったという回答は13%、少しだけあったという回答は18%、ほとんどなかったという回答は69%であった。

図2.26 視覚障害者に対する節電の影響の有無

c)駅等に要望等を提出したか

 3割程度が節電の影響を感じていたのに対し、実際に駅等へ要望を提出したのは全体の1割程度(5件)であり、その全てが東日本の盲学校によるものであった(図2.27、表2.27)。具体的な要望の例を以下に示す。

 記述のあった5件はいずれも駅に関する回答であった。要望としては、鉄道会社に視覚障害者への配慮を促すものと、節電対策の情報を問い合わせるものの2種類があった。 具体的には、前者は通勤・通学の時間帯において照明やエスカレータを通常どおりに運用してほしい、点字ブロックが敷かれている場所の券売機は停止しないでほしいなどであった。後者は、エスカレータの停止場所や時間帯、照明の消灯状況の問い合わせであった。また、生徒自身が鉄道会社のお客様センターへ要望を出すケースもあった。

表2.27 東日本とそれ以外の地域で駅等へ要望を出した割合

 
合計
出した
出さなかった
回答者数 比率(%) 回答者数 比率(%) 回答者数 比率(%)
東日本
19
100
5
26.3
14
73.7
東日本以外
35
100
0
0.0
35
100
合計
54
100
5
9.3
49
90.7

駅等へ要望等を提出したかどうかを表した円グラフ。出したという回答が9%、出さなかったという回答が91%であった。

図2.27 駅等への要望等の提出の有無


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