全国の盲学校70校の内、小中学部(小中学校)のある59校に対して、郵送方式のアンケート調査を実施した。調査は、2段階に分けて実施した。
第1次調査では、拡大教科書を利用している小中学部(小中学校)在籍の児童生徒の人数を調査した。
第2次調査では、第1次調査で明らかになった拡大教科書を利用している小中学部(小中学校)の児童生徒の担任に個別調査票を送付し、児童生徒に確認しながら、各質問に回答していただくよう求めた。調査項目は、眼疾患等の個人属性、視力や見えにくさ等の視覚障害の程度、どのような特別な指導を受けているか、使用している教科書とその満足度等、白黒反転に関するニーズ等であった。本調査の調査票を資料4 盲学校に在籍している弱視児童生徒への実態調査 調査票として、添付した。
盲学校の小学部(小学校)、中学部(中学校)で拡大教科書の給与を受けている児童生徒数を表2.1.1に示した。なお、小中学部(小中学校)に拡大教科書の給与を受けている児童生徒が在籍している学校は59校であった。
回答者数 |
比率(%) |
|
小学校 | 90 |
40.9 |
中学校 | 123 |
55.9 |
無回答 | 7 |
3.2 |
合計 | 220 |
100 |
小学部(小学校)128人の内90人(回収率70.3%)、中学部(中学校)170人から123人(回収率72.4%)の有効回答が得られた。以下、主な結果を記す。
学年・学部別の児童生徒数の分布を表2.1.2、図2.1.1に示した。
合計 |
1年 |
2年 |
3年 |
4年 |
5年 |
6年 |
無回答 |
|||||||||
回答者数 | 比率(%) | 回答者数 | 比率(%) | 回答者数 | 比率(%) | 回答者数 | 比率(%) | 回答者数 | 比率(%) | 回答者数 | 比率(%) | 回答者数 | 比率(%) | 回答者数 | 比率(%) | |
小学校 | 90 |
100 |
11 |
12.2 |
17 |
18.9 |
18 |
20.0 |
16 |
17.8 |
16 |
17.8 |
11 |
12.2 |
1 |
1.1 |
中学校 | 123 |
100 |
32 |
26.0 |
50 |
40.7 |
40 |
32.5 |
- |
- |
- |
- |
- |
- |
1 |
0.8 |
合計 | 213 |
100 |
43 |
20.2 |
67 |
31.5 |
58 |
27.2 |
16 |
7.5 |
16 |
7.5 |
11 |
5.2 |
2 |
0.9 |
性別・学部別の児童生徒数分布を表2.1.3、図2.1.2に示した。表2.1.3、図2.1.2より、小学部(小学校)では、男性が6割、女性が4割ほどで、中学部(中学校)では男女比はほぼ5割であった。
合計 |
男 |
女 |
無回答 |
|||||
回答者数 | 比率(%) | 回答者数 | 比率(%) | 回答者数 | 比率(%) | 回答者数 | 比率(%) | |
小学校 | 90 |
100 |
52 |
57.8 |
38 |
42.2 |
- |
- |
中学校 | 123 |
100 |
64 |
52.0 |
59 |
48.0 |
- |
- |
合計 | 213 |
100 |
116 |
54.5 |
97 |
45.5 |
- |
- |
学部別の矯正視力の分布を表2.1.4、図2.1.3に示した。ここでは、児童生徒の右眼、左眼の視力のうち、高い視力の値を矯正視力の値とした。
合計 |
0.05未満 |
0.05〜0.1未満 |
0.1〜0.2未満 |
0.2〜0.3未満 |
0.3以上 |
無回答 |
||||||||
回答者数 |
比率(%) |
回答者数 |
比率(%) |
回答者数 |
比率(%) |
回答者数 |
比率(%) |
回答者数 |
比率(%) |
回答者数 |
比率(%) |
回答者数 |
比率(%) |
|
小学校 | 90 |
100 |
14 |
15.6 |
24 |
26.7 |
20 |
22.2 |
13 |
14.4 |
15 |
16.7 |
4 |
4.4 |
中学校 | 123 |
100 |
25 |
20.3 |
34 |
27.6 |
21 |
17.1 |
13 |
10.6 |
23 |
18.7 |
7 |
5.7 |
合計 | 213 |
100 |
39 |
18.3 |
58 |
27.2 |
41 |
19.2 |
26 |
12.2 |
38 |
17.8 |
11 |
5.2 |
視力以外の見えにくさの分布を表2.1.5、図2.1.4に示した。表2.1.5、図2.1.4より、児童生徒のうち、まぶしさを感じる(40.9%)と視野の狭さ(41.8%)が4割ほどであり、薄暗くなると途端に見えにくくなるという回答(30.5%)は3割ほどであった。
回答者数 |
比率(%) |
|
屋外等の明るいところは、まぶしくて見えにくい | 90 |
40.9 |
薄暗くなると途端に見えにくくなる | 67 |
30.5 |
視野が狭い | 92 |
41.8 |
中心部が見えにくい | 23 |
10.5 |
視野のところどころに見えにくいところがある | 35 |
15.9 |
色の区別が難しい | 31 |
14.1 |
目が揺れてしまって見えにくい | 44 |
20.0 |
特にない | 33 |
15.0 |
その他 | 13 |
5.9 |
無回答 | 17 |
7.7 |
合計 | 220 |
100 |
視覚以外の障害の有無を表2.1.6、図2.1.5に示した。表2.1.6、図2.1.5より、6割ほどの児童生徒は視力以外の障害がなく、残りの4割のうち知的障害(11.8%)との重複が1番多いことがわかった。
回答者数 |
比率(%) |
|
聴覚障害がある | 4 |
1.8 |
肢体不自由がある | 8 |
3.6 |
知的障害がある | 26 |
11.8 |
特にない | 139 |
63.2 |
その他 | 20 |
9.1 |
無回答 | 30 |
13.6 |
合計 | 220 |
100 |
よく利用している補助具を表2.1.7、図2.1.6に示した。表2.1.7、図2.1.6より、傾斜机(書見台)を利用している児童生徒が6割と一番多く、単眼鏡(49.5%)やルーペ(42.3%)を利用している児童生徒も多いことがわかる。また拡大読書器の利用者も3割ほどいることがわかった。
回答者数 |
比率(%) |
|
ルーペ | 93 |
42.3 |
拡大読書器 | 68 |
30.9 |
単眼鏡 | 109 |
49.5 |
机上灯 | 25 |
11.4 |
傾斜机(書見台) | 132 |
60.0 |
サングラス(遮光眼鏡) | 41 |
18.6 |
特にない | 28 |
12.7 |
その他 | 6 |
2.7 |
無回答 | 9 |
4.1 |
合計 | 220 |
100 |
使用している拡大教科書の文字サイズの分布を表2.1.8、図2.1.7に示した。表2.1.8、図2.1.7より、児童生徒が利用している教科書は、22ポイントの教科書が6割近くあり、26ポイントの教科書は2割であった。それに対して、18ポイントの教科書を利用しているのは、全体の3.7%であり少数であることがわかった。
回答者数 |
比率(%) |
|
18未満 | 12 |
0.7 |
18ポイント | 61 |
3.7 |
19〜22未満 | 113 |
6.9 |
22ポイント | 936 |
57.4 |
23〜26未満 | 2 |
0.1 |
26ポイント | 322 |
19.7 |
27以上 | 117 |
7.2 |
その他 | 12 |
0.7 |
無回答 | 57 |
3.5 |
合計 | 1632 |
100 |
使用している拡大教科書の判サイズの分布を表2.1.9、図2.1.8に示した。表2.1.9、図2.1.8より、B5版の教科書を使用している児童生徒が4割ほど、A4の教科書を使用している児童生徒が3割ほどであった。
回答者数 |
比率(%) |
|
A5 | 25 |
1.5 |
B5 | 691 |
42.3 |
A4 | 548 |
33.6 |
B4 | 15 |
0.9 |
A3 | 3 |
0.2 |
290×290mm | 77 |
4.7 |
その他 | 50 |
3.1 |
無回答 | 223 |
13.7 |
合計 | 1632 |
100 |
使用している拡大教科書の分冊数の分布を表2.1.10、図2.1.9に示した。表2.1.10、図2.1.9より、1冊のものや4冊のものまで1割〜2割ずつあり、分冊の数は様々であることがわかる。
回答者数 |
比率(%) |
|
0冊 | 3 |
0.2 |
1冊 | 261 |
16.0 |
2冊 | 423 |
25.9 |
3冊 | 250 |
15.3 |
4冊 | 276 |
16.9 |
5冊〜10冊未満 | 244 |
15.0 |
10冊以上 | 80 |
4.9 |
その他 | 0 |
0.0 |
無回答 | 95 |
5.8 |
合計 | 1632 |
100 |
使用している拡大教科書の冊数を表2.1.11、図2.1.10に示した。なお、ここでの冊数は分冊数に限らず、1つの拡大教科書を1冊としてカウントしている。
回答者数 |
比率(%) |
|
1〜2冊 | 14 |
6.4 |
3〜5冊 | 40 |
18.2 |
6〜8冊 | 80 |
36.4 |
9〜10冊 | 61 |
27.7 |
11冊以上 | 25 |
11.4 |
無回答 | 0 |
0.0 |
合計 | 220 |
100 |
使用している拡大教科書の冊数の平均値を学部・学年別に表2.1.12、図2.1.11に示した。
回答者数 |
平均冊数 |
||
小学校 | 1年 |
11 |
5.73 |
2年 | 17 |
3.41 |
|
3年 | 18 |
5.94 |
|
4年 | 16 |
5.44 |
|
5年 | 16 |
7.31 |
|
6年 | 11 |
6.45 |
|
中学校 | 1年 | 32 |
9.84 |
2年 | 50 |
9.24 |
|
3年 | 40 |
7.20 |
|
全体 | 220 |
7.42 |
使用している拡大教科書の使用場面を表2.1.13、図2.1.12に示した。表2.1.13、図2.1.12より、4割ほどの拡大教科書は授業中にのみ使用されており、5割ほどは授業と自宅の両方で使用され、自宅学習のみで使用されている教科書は少ないことがわかった。
回答者数 |
比率(%) |
|
授業中に使用している |
711 |
43.6 |
自宅学習で使用している |
25 |
1.5 |
授業中と自宅の両方で使用している |
788 |
48.3 |
無回答 |
108 |
6.6 |
合計 | 1632 |
100 |
使用している拡大教科書の満足度を表2.1.14、図2.1.13に示した。表2.1.14と図2.1.13より、使用している拡大教科書のうち、3割ほどがとても満足、4割ほどがやや満足と、7割ほどが教科書に対して満足と回答していた。それに対して、やや不満、とても不満という不満足の評価は2割ほどであった。
回答者数 |
比率(%) |
|
とても満足 |
515 |
31.6 |
やや満足 |
690 |
42.3 |
やや不満 |
252 |
15.4 |
とても不満 |
52 |
3.2 |
無回答 |
123 |
7.5 |
合計 | 1632 |
100 |
拡大教科書を使用して困る事の有無を表2.1.15、図2.1.14に示した。表2.1.15、図2.1.14より、拡大教科書を使用していて困ることがあると回答した児童生徒が5割近くいることがわかった。
回答者数 |
比率(%) |
|
有 |
753 |
46.1 |
無 |
732 |
44.9 |
無回答 |
147 |
9.0 |
合計 | 1632 |
100 |
拡大教科書を使用していて困る点を表2.1.16、図2.1.15に示した。表2.1.16と図2.1.15より、拡大教科書を利用する際に持ち運びの不便さに困ることが多いことがわかった。大きさによる持ち運びの不便さは3割ほど、重さによる持ち運びの不便さと厚さによる持ち運びの不便さはそれぞれ2割ほどの児童生徒が感じていることが示された。また、分冊の多さに不便さを感じる児童生徒は3割いることが示された。さらに、ページのわかりにくさを不便さとしてあげている児童生徒が2割程度おり、小中学校で利用されているレイアウト拡大方式の拡大教科書におけるページ表記が原因である可能性が考えられる。
回答者数 |
比率(%) |
|
文字が小さくて見にくい | 95 |
12.6 |
文字が細くて見にくい | 68 |
9.0 |
文字の形(書体)がわかりにくい | 56 |
7.4 |
行の間隔が狭くて見にくい | 34 |
4.5 |
文字の間隔が狭くて見にくい | 36 |
4.8 |
教科書が大きすぎて使いにくい、持ち運びにくい | 229 |
30.4 |
教科書が厚すぎて使いにくい、持ち運びにくい | 178 |
23.6 |
教科書が重すぎて使いにくい、持ち運びにくい | 181 |
24.0 |
分冊が多すぎて使いにくい | 220 |
29.2 |
図表や注釈の配置がわかりにくい | 122 |
16.2 |
図表が小さくて読み取りにくい | 89 |
11.8 |
文字や図表の色が見にくい | 57 |
7.6 |
文章の方向が自分の見え方と合っていないので読みにくい | 7 |
0.9 |
紙やインクが光ってまぶしい | 57 |
7.6 |
白黒反転になっていないので見にくくて困る | 56 |
7.4 |
ページがわかりにくい | 121 |
16.1 |
先生の指示するページがわかりにくい | 115 |
15.3 |
その他 | 70 |
9.3 |
無回答 | 22 |
2.9 |
合計 | 753 |
100 |
通常の教科書の利用の有無について表2.1.17、図2.1.16に示した。通常の教科書とは、拡大教科書ではない晴眼の児童生徒の使用している教科書のことである。表2.1.17、図2.1.16より、盲学校では、5%ほどの児童生徒のみが通常の教科書を使用していることがわかった。
回答者数 |
比率(%) |
|
有 | 75 |
4.6 |
無 | 1423 |
87.2 |
無回答 | 132 |
8.2 |
合計 | 1632 |
100 |
「拡大教科書を使いたくないと思うことがありますか?」という質問に対する回答を表2.1.18、図2.1.17に示した。表2.1.18と図2.1.17より、3割程度の児童生徒が拡大教科書を使いたくないと思うことがあると回答していた。
回答者数 |
比率(%) |
|
使いたくないと思うことがある | 60 |
27.3 |
使いたくないと思うことはない | 148 |
67.3 |
無回答 | 12 |
5.5 |
合計 | 220 |
100 |
「拡大教科書を使いたくないと思うことがある」と回答した児童生徒の使いたくない理由を表2.1.19、図2.1.18に示した。表2.1.19と図2.1.18より、全体の3割の児童生徒が拡大教科書を使用したくないと思う理由として、持ち運びの不便さ(60.0%)、見えにくい(16.7%)が多いことがわかった。それに対して、通常の教科書との違い(8.3%)や友だちの教科書との違い(3.3%)を選択する児童生徒は少数であった。
回答者数 |
比率(%) |
|
見えにくいから | 10 |
16.7 |
持ち運びが不便だから | 36 |
60.0 |
一般の教科書とページや行が違って授業で使いにくいから | 5 |
8.3 |
人の目が気になるから | 0 |
0.0 |
友達の持っている教科書と違うから | 2 |
3.3 |
その他 | 7 |
11.7 |
無回答 | 0 |
0.0 |
合計 | 60 |
100 |
白黒反転のニーズに関する「拡大教科書を使用する時に、通常の紙面と白黒反転の紙面のうち、どちらを使用したいですか?」という質問に対する回答を表2.1.20と図2.1.19に示した。表2.1.20と図2.1.19より、3割の児童生徒が通常の拡大教科書よりも白黒反転の拡大教科書を使用したいことがわかった。
回答者数 |
比率(%) |
|
通常の紙面によるフルカラーの拡大教科書 | 140 |
63.6 |
白黒反転の紙面による拡大教科書 | 71 |
32.3 |
無回答 | 9 |
4.1 |
合計 | 220 |
100 |
「拡大教科書を使用する時に、通常の紙面と白黒反転の紙面のうち、どちらを使用したいですか?」という質問に、通常の教科書を使用したいと回答した児童生徒に対する通常の紙面を使いたい理由を表2.1.21と図2.1.20に示した。表2.1.21、図2.1.20より、全体の6割の児童生徒が、通常の紙面を使用したいと思う理由として、フルカラーが見やすい(30.7%)、白黒反転は見にくい(18.6%)などの見やすさの比較に関する理由が併せて5割ほどであり、一般の教科書と同じだから(17.1%)や書き込みができるから(24.3%)はそれぞれ2割ほどであった。
回答者数 |
比率(%) |
|
一般の教科書と同じフルカラーだから | 24 |
17.1 |
白黒反転のものは見にくいから | 26 |
18.6 |
フルカラーの方が見やすいから | 43 |
30.7 |
教科書に書き込みができるから | 34 |
24.3 |
その他 | 7 |
5.0 |
無回答 | 6 |
4.3 |
合計 | 140 |
100 |
「拡大教科書を使用する時に、通常の紙面と白黒反転の紙面のうち、どちらを使用したいですか?」という質問に、白黒反転の紙面を使用したいと回答した児童生徒に対する回答理由を表2.1.22と図2.1.21に示した。表2.1.22と図2.1.21より、全体の3割の児童生徒が、白黒反転の紙面を使用したいと思う理由として、大半が白黒反転の方が見やすい(85.9%)を選択していた。
回答者数 |
比率(%) |
|
フルカラーのものは見にくいから | 1 |
1.4 |
白黒反転の方が見やすいから | 61 |
85.9 |
その他 | 6 |
8.5 |
無回答 | 3 |
4.2 |
合計 | 71 |
100 |