第１章　拡大教科書の選定方法及び評価方法に関する調査・試作

　昨年度に試作した拡大教科書サンプル集を各教育現場等で試用していただき、拡大教科書の選定を効果的に行うことが可能かどうかを郵送によるアンケート調査、電話等によるインタビュー調査、訪問による実態調査で明らかにした。調査対象は、昨年度、試作版拡大教科書選定支援キットの調査にご協力いただいた盲学校、弱視通級指導教室等の90機関に加え、都道府県の教育委員会に対して実施した。また、今年度、改訂された小学校の拡大教科書の要素を取り入れ、拡大教科書選定支援キットの拡大教科書サンプル集の改良を行った。

１．１　拡大教科書サンプル集の在り方に関する研究協議会

（１）具体的内容及び方法

　拡大教科書の選定の際に用いる拡大教科書サンプル集の在り方について研究協議会を実施した。協議会では、昨年度試作した拡大教科書サンプル集の改善点について、アンケート調査及びヒアリング（全国の盲学校及び東京都・神奈川県の通級指導教室への調査）に基づいて議論を行った。その上で、本年度、新規に作成する拡大教科書サンプル集の選定方針を決定した。そして、選定方針に基づき、本年度、新たに作成された検定教科書を用いて、サンプルの選定を行った。

（２）実施結果

　a）アンケート調査に基づく議論

　全国の盲学校及び東京都・神奈川県の通級指導教室への拡大教科書サンプル集に関するアンケート調査及びヒアリングの中から重要な意見のピックアップを行った。以下、主な意見を記す。

• H23、H24で改訂される小・中学校の教科書についても出していただきたい。
• サンプル部分の原本が添えてなかったので、レイアウトを原本の教科書と見比べることが出来ないのが大変残念です。
• できれば、原本教科書との比較が出来ると良いのではないかと思います。
• ページがわかりにくかったようなので、目次とページがあわせられるとよりよいと思います。見比べるものがどこにあるかわかるような一覧もあるとよいです。各ページにも（何年生の）何ポイントか、どんなフォントか示してあるとわかりやすいと思いました。
• MNREAD等で事前に評価をしてから拡大サイズ-フォント等の検討をすることが多いですが、サンプル集にも可能なものにはフォント名、サイズ、行間等が示されていると、より選びやすくなる（スピーディーになる）と思います。今までは、各教科書のサンプル集はなく、個人持ちの教科書を見てまわることがほとんどだったので、活用していけると思います。
• 白黒反転の方がよい生徒がいるかもしれない。
• 教育相談、高等部入学生が教科書を決める際に活用したいと思います。以前、文科省から出されたものより、多くの内容があるので、助かります。
• 色弱生徒への配慮をもっと徹底してほしい（図や写真には輪郭線をつけてほしい。グラフなどは、線種を変えてほしい。赤や緑など、濃い色は見にくい。）
• 国語は、画数を確認できるように、新出漢字は教科書体にしてほしい。
• 冊子型式として同原稿をA5判→B5判→A4判という作りなので、文字サイズ・フォントの違いによる見やすさ、文字行間の違いによる見やすさなど比較しやすいです。
• 県の教科書センターにも、今回の見本があると、なお良いと思われます。
• サンプルが充実していて選定に役立ちます。職員の研修用、市教委等との連携ツールとしても活用していきたいと思います。

　上記の意見を踏まえた上での議論の結果、以下の方針が決議された。

• 昨年度作成した拡大教科書サンプル集を全面改定するのではなく、昨年度のサンプル集と併せて活用できるように選定を行う。
• 平成２３年に改定された小学校の教科書のサンプル版を作成する。
• サンプルの選択においては、会議を実施した８月時点で入手可能な小学校上巻の中から選択する。
• 昨年度のサンプルでは、高学年を中心に選定したので、本年度は低学年からも選択する。
• 箇条書き
• 選択する科目は、昨年度、選ばなかった教科を含めるため、国語、算数、社会、理科、音楽、生活、図工とする。
• 様々な出版社の特徴を出来るだけ盛り込めるように選択するが、すべての出版社を網羅するという観点では選択しない。
• 拡大教科書と比較するための原本（検定教科書）は、入手が容易なので、各学校で用意していただく。
• 目次やポイントサイズ、フォント等の情報を可能な限り、盛り込む。
• 白黒反転が必要な児童生徒の実数を調査する。
• カラーユニバーサルデザインに配慮したページをなるべくサンプル集に入れる。
• 本研究の範囲を超えるが、都道府県教育委員会や教科書センターのニーズ調査を企画する。
• 選択したサンプルの内、期限内に著作権等の処理が可能なページを用いて、新バージョンの拡大教科書サンプル集を試作する。

　b）新しい拡大教科書サンプル集の選定結果

　表1.1.1に選定した結果を示した。この表は、原本の検定教科書のどのページをサンプルにするのかを示している。この内、著作権等を期限内に処理できたページのみを新しい拡大教科書サンプル集とすることになった。