2-1 盲ろう者・児の自己決定・自己管理を引き出すためのマニュアル


1 はじめに

 「視覚と聴覚に何らかの障害を併せもつ人」を「盲ろう児・者」と呼んでいます。

 「盲ろう」という障害の核心は、重度の「情報入力障害」と重度の「コミュニケーション障害」と言えます。

 重要なのは、以下のことです。

視覚障害に対する支援 + 聴覚障害に対する支援 ≠ 盲ろうに対する支援

 視覚障害の場合、聴覚から得る情報やコミュニケーションが大きな補助として使われ、聴覚障害の場合、視覚から得る情報やコミュニケーションが大きな補助として使われているからです。視覚と聴覚の活用が共にできない、あるいは限られている「盲ろう」は、独自のニーズをもつ障害なのです。

 日本における盲ろう者の数は、実態調査が行われていないため、まだ正確には把握されていません。海外の調査結果から推測して、日本には2万人前後の盲ろう児・者がいると考えられています。

 盲ろう児・者は数が少ないため、施設においてもたった一人の盲ろう児・者であったり、施設としてもはじめて受け入れるという状況になることが少なくありません。それまで盲ろうの人と係わったことのない施設の職員が、はじめて盲ろうの人とかかわるとき、大きな戸惑いが生じるのはある意味では自然なことです。私たちが通常当たり前のように使っている音声言語ではコミュニケーションがとれなかったり、今まで見たこともないようなコミュニケーション方法を使っていたり。一見すると、理解しにくい行動をとっていたり・・・。

 盲ろうという障害はいったいどのような影響を人にもたらすものでしょうか。情報障害に対して、どのような配慮をすれば盲ろうの人の自己決定や自己管理を支えられるのでしょうか。どのようなコミュニケーション方法があって、どの方法をつかえば良いのでしょうか。逆に、どのようなことが盲ろうの人の自己決定や自己管理を妨げるのでしょうか。

 この章は、はじめて盲ろうの人と係わることになる施設およびその職員のかたがたのために、盲ろうにかかわる基本的な知識を提供するものです。そして、盲ろうという障害がもたらす困難への共感的理解を得るもっとも有効な方法として、盲ろう疑似体験の実施方法を紹介します。盲ろうという重度の情報・コミュニケーション障害が人にもたらず深刻で多面的な影響を、職員の方一人ひとりが自分の体と心をとおして、「感じ」、「考え」、「理解し」たことを、日々の生活に「活かす」ことこそ、盲ろうの人の自己決定・自己管理を支える最大の力になると考えるからです。そのほか、盲ろう児と係わるときに必要な基本的原則についても説明をしていきます。

2 盲ろうという障害の範囲

 完全な盲と完全なろうを併せもつことを「盲ろう」と考えがちですが、実際はより広い範囲の視覚障害と聴覚障害を併せ有することを指しています。大きく分けると、

  1. 全盲 + 全ろうの、全盲ろう
  2. 弱視 + ろうの、弱視ろう
  3. 盲 + 難聴の、盲難聴
  4. 弱視 + 難聴の、弱視難聴

の四つになります(表1参照)。視覚あるいは聴覚の障害が進行している場合も含まれます。

表1  盲ろうの視覚障害と聴覚障害の組み合わせ

弱視(低視力・視野狭窄)
ろう
全盲ろう
弱視ろう
難聴(伝音性・感音性)
盲難聴
弱視難聴

なお、「弱視」については大きく分けて、

  1. 細かいものがはっきりと見えない状態(低視力)と、
  2. 見える範囲が狭かったり限られている状態(視野狭窄)があります。

配慮がそれぞれによって異なってきます。

また、「難聴」については大きく分けて、

  1. 大きな声で話せばある程度伝わる状態(伝音性難聴)と、
  2. 音がひずんで聞こえ、聞こえる音の大きさの範囲が狭く、大きな声で話すと不快な音になってしまう状態(感音性難聴)があります。伝音性難聴と感音性難聴が混じっている混合性難聴もあります。

 少し見えていたり、少し聞こえていたりする場合も盲ろうに含めています。視覚と聴覚の障害が組み合わさることによって、生活における困難さが格段と大きくなり、そのため、弱視難聴の人にも「盲ろう」という状態が一般的に必要とする情報とコミュニケーションについての配慮が不可欠になってくるからです。見えて聞こえている私たちが、日常生活で当たり前のように得ているある重要な情報を例にとって考えてみましょう。

 近寄ってきた人が誰なのか、私たちは何の努力もせずに、一瞬にして「誰々さんである」ということが分かります。その人は声を出す必要もありません。目線を合わせて、軽く微笑めば、お互いのことに気づいて挨拶を交わしたことも一瞬にしてわかります。

 しかし、弱視の場合、人が近寄ってきたことは分かっても、誰なのかは、見ただけではわかりにくいものです。知っている人なのか、こっちを見て会釈をしたのかも分かりません。もしもその時、その人が声を出して「おはよう」と言ってくれたなら、その声の質などで、その人が誰であるかということを分かることができます。ですが、弱視でなお且つ感音性難聴もある場合、補聴器をつけていても、声の質は区別がしにくく、声をきいただけではそれが誰なのかは分かりません。さらにいうならば、近くの人が声を出しても、その声を出した人が、弱視難聴の人に向かって声をかけているのか他の人に向かってかけているのかという区別もつきにくいのです。私たちにとっては何の苦もなく分かることが、情報として入ってきません。

 弱視難聴の人と話す場合は、会う度に私たちは、その人に私たちがこれから話しかけると言うことを、その人の名前を呼んだりあるいはそっと肩に触れて注意を向けてもらった上で、話し始める必要があります。そして、その人が分かる方法で自分の名前を名乗る必要があります。これは、盲ろう児・者全てに共通する基本的配慮です。

 この他、複数の人と同時に会話をすることも弱視難聴の人は困難になります。会話は基本的に一対一でないと通じません。また、薄暗い場所、まぶしい場所、騒がしい場所(電車のなか、大勢が話している部屋等)では、事実上見えなくなったり、相手の声が聞き取れなくなり、全盲ろうと同じような状態に陥ってしまいます。

3 コミュニケーションの届く距離と範囲を確かめておきましょう

 前節で述べた視覚障害と聴覚障害の組み合わせの違いによって、一人ひとりの盲ろう児・者にとって「コミュニケーションの届く距離と範囲」は異なってきます。ある一定の距離・範囲・位置の中であれば、他者からのコミュニケーションを盲ろうの人は受信することができますが、その距離や範囲をはずれてしまうと、私たちが伝えようとしたことはその盲ろうの人には届かなくなり、伝えなかったも同然の状態になってしまいます 。一人ひとりのコミュニケーションの届く距離と範囲を確認しておくことが、まずもって大切です。特に、1)要求や情報をつたえる場合と、2)あなたの感情や、相手の話へのあいづち等を伝える場合をおさえておくことが、コミュニケーションをたしかなものにしていくために必要です。

「全盲ろうの場合」

 コミュニケーションの届く範囲は、その盲ろう児・者に直接触ることのできるところになります。匂いや、振動、あるいは風などはより遠くからも届きますが、基本的なコミュニケーションが行われるのは、その盲ろうの人と直接触れられる距離となります。全盲ろうの人に触れていたあなたの手を、ちょっとでも離すと、あなたはその全盲ろうの人とのコミュニケーションの世界から忽然と消えることになります。ときにはそれがわずか数センチでさえも。私たちは喜怒哀楽を声と表情で伝える強い習慣があります。それをも敢えて触覚を通して全盲ろう児・者に伝える必要があります。好きか嫌いか、嬉しいか悲しいか、不安か安心か、互いの感情を理解したり共感したり反発したりしていくことが、コミュニケーションの土台になるからです。また、盲ろうの人があなたに伝えたことをあなたが分かったか、分からなかったについてのフィードバックも、触覚を通してこまめに伝える必要があります。

「弱視ろうの場合(そして弱視難聴の場合にも)」

 細かいものが見えにくい低視力の場合、この距離はとても近くなります。文字は大きく、背景とのコントラストがはっきりしたものが見えやすくなります。

 逆に、視力が比較的よくて、トンネルをのぞくように視野が狭い場合は、近づきすぎると全体が見えなくなるため、すこし離れて見た方が、人の顔と手話の動きを同時に見ることなどができます。文字は大きすぎると一度に見える文字数が減り、読みにくくなります。身ぶりや手話、指文字、口話(発話している時の口の形を読みとるコミュニケーション方法)、指文字や手話、紙に書いた文字を見るためには、一人ひとりに最適な距離や、文字の大きさがあります。そして、その人が見やすい照明や背景があります。

 顔の微細な表情やうなづきは、とてもわかりにくいので、感情表現やフィードバックは、見えやすいやり方、あるいは触覚もつかって伝える必要があります。

「盲難聴の場合(そして弱視難聴の場合にも)」

 補聴器を使っている場合、その補聴効果は1メートルも離れると大きく損なわれます。また、周囲に騒音があったり、複数の人が同時に話したりすると、たちまちにしてあなたの声が聞こえにくくなります。また、突然話しかけられても、きちんと名前を呼ばれたり、体に触れられたりしないと、自分に話しかけられたのかどうかもわかりません。いたずらに大きな声で話しかけることも、補聴器を使っているときには逆効果です。距離、声の大きさ、周囲の騒音の有無などを確認する必要があります。

4 視覚障害と聴覚障害を受けた時期が、盲ろう者がどのようなコミュニケーション方法をつかうかに影響します

 盲ろうの人の視覚障害と聴覚障害の程度は一人ひとりさまざまですし、その他の状態や状況も、一人ひとり異なります。盲ろう児・者は少数ではありますが、とても多様な状態像とニーズをしめす人たちです。このような違いは大切にしながらも、盲ろうの人たちのコミュニケーション方法について、どのような方法がその人にとって楽に使えたり覚えられたりするかを把握するための目安をもつことは大切です。その一つの鍵が、前節で述べた、その盲ろう児・者にとって活用できる感覚と、その感覚がもっとも活用できる距離や範囲を押さえることでした。

 もう一つの鍵があります。それは、その盲ろうの人が、視覚障害を受けた時期と聴覚障害を受けた時期を知っておくことです。この情報は、その盲ろうの人がどのようなコミュニケーション方法を使いやすいか、あるいは学びやすいかということについて、大きなヒントを与えてくれます。

 視覚と聴覚の受障時期の組み合わせによって、以下の表2のように、大きく4つのグループに分けることができます。

表2 視覚障害と聴覚障害の受障時期による組み合わせ

先天性または幼い時からの視覚障害
大人になってからの視覚障害
先天的または幼い時からの聴覚障害
「先天性」の盲ろう
「ろうベース」の盲ろう
大人になってからの聴覚障害
「盲ベース」の盲ろう
「成人期」盲ろう

  1. 先天性盲ろう − 先天性あるいは言語を獲得する以前の幼い時期に盲ろうになった場合
  2. ろうベースの盲ろう − 先天性あるいは幼い時期から聴覚障害があり、成人してから視覚障害となった場合
  3. 盲ベースの盲ろう − 先天性あるいは幼い時期から視覚障害があり、成人してから聴覚障害となった場合
  4. 成人期盲ろう − 成人してから、視覚障害と聴覚障害となった盲ろう

 先天性の盲ろうの人は、情報が極端に少ない中で育っていくため、母子関係をはじめとする人間関係の育成、あらゆる概念の形成、さまざまな因果関係の理解、そしてコミュニケーションの獲得に通常の何倍もの時間と工夫を必要とします。このため、コミュニケーションもより基礎的な段階の方法を使う期間が長く、手話・指文字・点字等の、形式の整った言語を獲得するに至る場合もあれば、基礎的な段階のコミュニケーション方法を一生に渡って使っていく場合もあります。他の障害を併せもつ場合は、とくにこの傾向は強くなります。大切なことは、その人の概念の数や生活の幅に応じた「語彙」のある、その人が使いやすいコミュニケーション方法をえらんでいくことです。

 ろうベースの盲ろう者は、それまでのろう者としての教育やコミュニケーション方法(手話・指文字等)を土台にして、新たなコミュニケーション方法を積み上げていくことが、より楽により早く、盲ろうという新たな状態に適したコミュニケーション方法を身につけていくことにつながります。ただし、すべてのろう者が手話を獲得しているわけではないので、注意を必要とします。なお、先天性の聴覚障害に網膜色素変性による進行性の視覚障害をもたらすアッシャー症候群は、盲ろうの原因として、とても大きなものです。海外では、盲ろう者の約半数がこの疾患によるものとされています。網膜色素変性は、周辺視野を冒して行き、トンネルをのぞくような見え方をもたらします。

 同様に、盲ベースの盲ろう者は、それまでの盲者としての教育やコミュニケーション方法(特に点字)を土台にして、新たなコミュニケーション方法を積み上げていくことが有利です。多くのばあい、盲ベースの盲ろう者は、発信には音声言語を用いることができるので、コミュニケーションにおいてろうベースの盲ろう者よりも、周囲の人に自らの意志や決定を伝えやすい状況にあると言えます。

 成人期盲ろう者は、視覚と聴覚の両方を成人してから失う状況におかれます。このグループには、多くの高齢期盲ろう者が含まれます。

 次節ではまず、ろうベース、盲ベース、成人期盲ろうの人たちが主としてつかうコミュニケーション方法について説明します。その次の節で、先天性盲ろう児・者の多様なコミュニケーション方法とその発達的な段階について説明します。

5 コミュニケーション方法 − ろうベース、盲ベース、成人期盲ろうの場合

 一般的には大きく分けて1)文字系(筆談・手書き文字)、2)点字系、3)手話系、4)指文字系、5)音声言語系に分類できます。受信に使うコミュニケーション方法(図1)と、発信に使うコミュニケーション方法(図2)が異なる場合があります。例えば、盲ベースの盲ろう者で、受信は指点字を使い、発信には音声言語を使う人がいます。また、発信においても受信においても、複数の方法を使う場合があります。

図1

図1

図2

図2

  1. 文字系
  2. (筆談)

     盲ろう者に視力が残っている場合、紙などに文字を書いて盲ろう者に伝える方法です(図3)。その盲ろう者の見やすい大きさ、太さ、間隔の文字を書いて伝えます。パソコンをつかって書く場合もあります。パソコンでは、文字の大きさや書体を一貫させることができたり、まぶしさのある人のために、画面を白黒反転できるので、長時間の通訳や話し合いの場合に便利です。

    図3 筆談

    図3 筆談

    (手書き文字)

     盲ろう者の手のひらに文字を書いて伝える方法で、「手のひら書き」とも言います(図4)。ひら仮名、カタ仮名、漢字など、相手の盲ろう者がどの文字なら分かるのかを確かめてから書きます。また、文字の書き順を正確にしないと、読みとれなくなるので注意が必要です。この手書き文字は、書き文字を習得している盲ろう者であれば、かなり多くの盲ろう者に通じます。反面、時間がかかり伝えられる情報量が限られるという短所もあります。なお、ろうベースの盲ろう者と手書き文字によって会話をする場合、その人の日本語文法の把握の程度、漢字で読んでいた文字をひら仮名におきなした場合の理解度等を把握しておく必要があります。

    図4 手書き文字

    図4 手書き文字

  3. 点字系
  4.  盲ベースの盲ろう者にとっては、すでに習得している点字を活用したコミュニケーション方法は、容易に使っていくことのできる方法です。

    (点字タイプライター)

     これは、筆談に相当するものです。点字タイプライターをつかって、点字紙に点字を打って、ある程度文章を打ち終わってから、点字紙をタイプライターから抜き出して、盲ろう者に手渡して読んでもらう方法です。即時性や簡便性に欠ける欠点があるため、会話にはあまり適していませんが、確実に情報を伝えるためには有効な方法です。図5のパーキンス式タイプライターの他にも、各種点字器や点字タイプライターがあります。

    図5 点字タイプライター

    図5 点字タイプライター

    (ブリスタ)

     ドイツ製の速記用点字タイプライターで、点字を使用する盲ろう者の間では広く使われています(図6)。パーキンス式の配列の6つのキーが、それぞれ点字の6つの点に対応しており、キーをたたくとすぐにそれが幅13ミリの紙テープに点字となって打ち出されてきます。キーをたたくとほぼ同時に盲ろう者が点字を読むことができるので、上記の点字タイプライターにくらべて格段に便利です。

    図6 ブリスタ

    図6 ブリスタ

    (「盲ろう者のしおり、1998」より、全国盲ろう者協会の許可を得て転載)

    (指点字)

     盲ろう者の、左右合わせて6本の指を点字タイプライターのキーに見立て、盲ろう者の指を直接たたいてコミュニケーションする方法です(図7)。タイプライターのキー配列によって若干の違いはありますが、特別な道具は必要なく、慣れれば正確かつ迅速に伝えられる方法です。ただ、指点字は、打つこと(発信)よりも、読みとり(受信)ができるようになるためには、盲ろう者側に相当の訓練が必要で、実際に習熟している盲ろう者はあまり多くないようです。

    図7 指点字

    図7 指点字

  5. 手話系
  6.  ろうベースの盲ろう者で、手話をつかってコミュニケーションをしていた人に多くつかわれている方法です。ただし、ろうベースの盲ろう者であっても、その教育環境や家庭環境等から、手話を習得していない人もいるので注意する必要があります。

    (弱視手話)

     弱視ろう者のための手話を、「弱視手話」と呼びます。視覚障害の状態によって、2通りの弱視手話があります。「視力が低くて近寄らないと見えにくい」場合は、盲ろう者は手話を極く近くで見て読みとります。

     一方、「視力は残っているが、視野が限られていて、狭い範囲でしか手話が視界に入らない」場合は、盲ろう者は少し離れたところから手話を見ます。盲ろう者の視野に入るように、手の動きの幅を限定します。

    (触手話)

     盲ろう者が、相手の表す手話を触って読む方法です(図8)。普通の手話よりも若干動きを小さめに、ゆっくりめに表します。触手話に慣れた盲ろう者は、音声での会話に近いスピードでコミュニケーションが可能である場合があります。

    図8 触手話

    図8 触手話

  7. 指文字系
  8.  片手の形を、五十音あるいはローマ字に対応させてあるものを指文字といいます。弱視の場合は目で見て読みとり、盲の場合は指文字を触って読みとります(図9)。

    図9 指文字

    図9 指文字

    (五十音式指文字)

     日本語の五十音に対応している指文字は、ろう者の間では、固有名詞、外来語等を表すときに用いられることが多い。盲ろう者とのコミュニケーションにおいては、指文字はさらに触手話や弱視手話の補助的手段として用いられることが多い。通常、手話は顔の表情や視線と組み合わされて多くの情報を相手に伝えるコミュニケーション方法であるが、触手話や弱視手話では、視線・顔の表情などの情報の多くが抜け落ちる。そのため、盲ろう者によっては、指文字で単語や助詞などを表した方がわかりやすいという人もいる。状況や個人差に応じた使い分けが必要となる。

     なお、先天性盲ろう児で、手話を取り入れないろう学校の方針から、会話のほとんどを五十音式の指文字で行っている場合もある。

    (ローマ字式指文字)

     アメリカの片手式指文字26字からc,j,a,v,xの5文字をのぞいた21文字を使って、先天性盲ろう児のために日本でつくった指文字の方法である。アメリカの片手式指文字は、五十音式指文字にくらべて動きが少ないのと文字数が少ないため、先天性盲ろう児の学習の負担が少ない。また、ローマ字の母音と子音の組み合わせは、日本語の点字の構成と共通する部分が多く(一マス6点からなる点字は、基本的に、左斜め上3点は母音を、右斜め下3点は母音を表している)、点字の学習と連動しやすい。ローマ字式指文字は、盲学校における盲ろう児の教育に主として使われている。

  9. 音声言語系
  10.  音声言語系の受信には、残っている聴覚をつかう場合と、聴覚とともに残っている視覚をつかう場合があります。発信については、盲ベースの盲ろう者は、音声言語を使う場合が多い。周囲の人間のほとんどは、音声以外の会話方法を知らないことが多いので、音声によって発信できる盲ろう者は社会的なつながりをもちやすいと言える。逆に、先天性ろう者で盲ろうになった場合、音声による発信ができないためにより大きな社会的不利益を被りやすくなります。

    (音声言語)

     盲ろう者に聴力が残っている場合、その盲ろう者が聞こえやすい距離、聞こえやすい方の耳、聞こえやすい声の高低・強弱・速さなどに配慮して、直接あるいは補聴器の集音器に向かって話す方法です。周囲の騒音を抑えるなど、音環境への配慮や、同時に複数の人が話しかけないことなどが重要です。一般的に言って、なめらかに、正しい抑揚で話す方が理解しやすいとされています。固有名詞、専門用語、未知の情報をはじめて伝えるときなどは、文脈による予測等ができないため、注意が必要となります。

    (口話・読話)

     会話をしている相手の口の形を見て、音声言語を読みとるコミュニケーション方法で、視覚だけでは、すべての日本語の音をそもそも読みとることはできず、文脈からの推測や残っている聴覚で補うことが必要な方法です。このため、読み違いも多くおこります。弱視難聴の人にとっては非常に負担の大きい方法です。

    (キュードスピート)

     ろう学校で、口話教育を補助するために、幼稚部段階から小学部にかけてつかわれる視覚的なコミュニケーション方法です。母音部分は口の形で表し、子音部分は右手の形・位置・動きで表し、これを同時に行って一つの音を視覚的に表現します。同時に残っている聴覚も使います。口話単独では読みとれない場合、あるいは手話や指文字の導入がない場合、中学・高校まで使いつづける場合があります。キュードスピートはろう学校によって、いくつか異なる方法があり、全国的に統一されていません。また、視力が落ちてきたり視野が狭くなってくると、口の形と手の動きを同時に読みとるのが困難になり、口だけ見て、相手の手は触覚で確認する場合があります。

6 コミュニケーション方法 − 先天性盲ろうの場合

 前節で述べたようなより形式の整ったコミュニケーション方法にいたるまでには、いくつかの段階のコミュニケーション方法を積み上げていく必要があります。また、コミュニケーションする内容にあたる活動の豊かさを同時に育てていく必要があります。盲ろう児というと、ヘレン・ケラーの物語の印象が強いためか、すぐに指文字を使うことを考えてしまう人もいます。ですが、実はヘレン・ケラーもサリバン先生に指文字を教えてもらうずっと前から、沢山の身ぶりと実物を使って、活発なやりとりを周囲の人たちとやっていたのです。時には、使用人の子どもに身ぶりをつかって、裏の薮にいって鳥の卵を盗みにいこうということまで伝えていたのです。それだけの活動の幅と言語以前のコミュニケーション方法が土台にあって、はじめてヘレン・ケラーも指文字も習得していったのです。

 先天性盲ろう児については、できるだけ子どもにとって意味のある活動を共にして、周囲の人や環境を理解していくとともに、その発達段階に合ったコミュニケーション方法を選んで、人とのやりとりを膨らませていくことが必要です。

 図10には、受信をめぐるコミュニケーション方法の発達的な変化を、左から右に向かって例示してあります。同様に、図11には、発信をめぐるコミュニケーション方法の発達的な変化を、左から右に向かって例示してあります。前節で紹介した、成人の盲ろう者の整った形式のあるコミュニケーション方法は、これら二つの図のもっとも右側に位置するところに記してあります。

図10 受信分類図

図10 受信分類図

図11 発信分類図

図11 発信分類図

 盲ろう児の場合、情報の入力が極端にすくないため、これからおこる活動の予告を丁寧にすることは、見通しと安心を提供するため、コミュニケーションのなかでももっとも重要なところです。写真によって、二つ例を示します。

 実物を使うことは、全盲ろうでも弱視難聴でも、初期においてはとても分かりやすく、コミュニケーションをはかりやすくしてくれます。実物一つを使った予告が分かるようになったなら、例えば図12のように、午前中に予定している3つの活動を前もって予告することもできるようになってきます。

 例えば、ハサミが表しているのは「工作」。ハサミを使って紙工作をするときなどに信号として使えるでしょう。インスタント・コーヒーは、匂いも味もあるので、工作の後の「コーヒー・ブレーク」として分かりやすい信号になるでしょう。3番目においてある布鞄は、いつも散歩のときに持っていく鞄なので、休憩のあとに「散歩」が待っていることがわかるでしょう。(図12参照)

図12 ハサミ、インスタントコーヒー、かばんによる予告

図12 ハサミ、インスタントコーヒー、かばんによる予告

 さらに、これに加えて、「散歩」の時に、「買い物」に行くことも予告できるかもしれません。お金の入った財布を「買い物」の信号にして、空になっているペットボトルとコーヒーの瓶を「買い物リスト」の信号として使うことができます。(図13参照)

図13 財布、空のペットボトル、空のコーヒーの瓶による予告

図13 財布、空のペットボトル、空のコーヒーの瓶による予告

 この図11と12を見て、今担当している盲ろう児、あるいは先天性盲ろうで成人になっている人で、言語を獲得していない場合は、現在、どのような受信方法および発信方法でコミュニケーションを行っているのか、該当するもの全てに丸印をつけてみてください。それによって、現在使っているコミュニケーション方法の段階を大掴みすることができます。もしも現在つかっているコミュニケーション方法だけでは、すでにその人が求めていることを十分に表現できていないようであれば、次の右の段階に向かってコミュニケーション方法の展開を考える必要があるのかもしれません。あるいは、なかなかある段階のコミュニケーション方法が獲得できないでいる場合は、あまりにも高度な段階のコミュニケーション方法に進みすぎていて、コミュニケーションの土台づくりが十分になされていないのかもしれません。あるいは、「コミュニケーション方法がない」と考えてしまうまえに、もっとも初期の段階の受信と発信に目を向けて、日々の暮らしのなかで、その盲ろうの人が表している受信や発信のきざしを見つけだすきっかけにしていただけたらと考えています。

7 先天性盲ろう児のおかれている状況の理解のために

 先天性盲ろう児一人ひとりに適したコミュニケーション方法を選択するだけでは、けっして盲ろう児のコミュニケーションは育ちません。大切なのは、情報とコミュニケーションの量が圧倒的に少ない状態におかれがちな盲ろう児の状況が、かれらにもたらす困難を理解して、それに対応する中でコミュニケーション方法についても考えていくという立場が大切です。これは、成人の盲ろう者にも当然当てはまることですが、ここでは先天性盲ろう児に焦点を当てて整理してみます。

  1. 情報障害が盲ろう児に及ぼす影響
  2.  盲ろうの子どもが得られる情報は、直接触れるか、残存する視覚と聴覚で把握できる限られた範囲にある不鮮明な情報に限られています。

     何の努力もなく、大量・広範囲の鮮明な情報が瞬時に私たちには届いても、盲ろう児にはその大部分が届いていないことを常に意識しておくことが必要です。

    情報の領域は大きく3つに分けられます。

     第2と第3領域の情報は、他者の介入や仲介なしには、ほとんど盲ろう児には届かないものであり、とくに「言語」の利用なしには仲介できる情報がきわめて限られることになります。盲ろう児にとって、言語の獲得それ自体が極めて困難な課題なのです。

  3. コミュニケーション障害が盲ろう児にもたらす影響
  4.  上記のような情報の欠乏は、盲ろう児者のコミュニケーションに以下のような深刻で広範囲な困難をもたらします。

  5. どのような配慮が具体的には必要か
  6. (1)コミュニケーションの配慮

    (2)情報障害による見通しの困難さへの配慮

     情報がきわめて限られている中では、人、物、活動、場所の移動等は、盲ろう児にとってすべて唐突に現れそして消えていくものとなり、混乱と不安を高めることになります。盲ろう児と係わるもっとも基本的な原則は、子どもの分かるコミュニケーション方法で毎回これらの予告を行うことです。

    (3)情報障害による動機付けの低下への配慮

     視覚と聴覚情報の欠如は、盲ろう児の好奇心と動機付けを呼び起こす外部動因が少ないことを意味します。子どもが関心を示す、子どもにとって「意味のある」活動を中心に一日の生活を組み立てることが、子どもの動機付けを高めることになります。

    (4)偶発的な学習、模倣、因果関係、全体像を把握することの困難への配慮

     周囲でおきていることを意図せず偶発的に見聞する中で、私たちは多様な事物、多様な人間、多様な活動、多様な場所、時間等の存在や相互の関係を自然と学んだり、模倣しながら学んでいきます。盲ろう児は、それら全てを、時間をたっぷりかけて、全過程を体験しないと、学ぶことができません。膨大な学ぶべき内容に適切な優先順位をつけ、意図的に、概念が構造的に組み立てられるよう、学習を進めることが必要です。

  7. 孤独な時間の多さと楽しめる余暇活動の少なさへの配慮
  8.  盲ろう児は、少し担当者や親が離れただけでも孤独のなかにおかれてしまいます。しかも、音楽、テレビ、周囲を眺めるなどの余暇活動を行うことができないため、容易に退屈とそれをしのぐための自己刺激的活動に陥りやすいのです。できるだけ一人にならないようにする配慮と、盲ろう児が楽しめる余暇活動を見つけだしていくことは、生涯にわたって大切な支援活動です。

8 盲ろう疑似体験のすすめ − 盲ろう児・者の立場から考える

 前節では、先天性盲ろう児に焦点を当てて、盲ろうという状態がもたらす困難と配慮について述べました。この節では、現在あるいはこれから盲ろう児・者と係わろうとしている読者自身が、盲ろうの疑似体験を通して、これまで述べてきた盲ろうの困難とニーズを共感的に理解していただくための方法を紹介します。

 盲ろう疑似体験とは、いくつかの機材を用いて、その体験者を一時的に盲ろうに近い状態におき、盲ろうという障害がもたらす困難を自らの体と心で体験し、その体験を通して盲ろうという障害を主体的・主観的に考えてもらうプログラムです。また、2人でペアを組んで交互に実施するため、盲ろう者の介助者役をも疑似体験することが含まれます。介助を受ける立場、介助を提供する立場の両方を体験することによって、盲ろう児・者に係わるときの自分について、両面から考察を深める機会ともなります。

 盲ろう疑似体験は、盲ろう児・者にかかわる多職種の人々の研修に実施されてきています。講義や書物では伝えることのできない、盲ろうとい障害が行動と思考と心理におよぼすインパクトを理解するためには、もっとも有効な方法の一つです。

 本来ならば、盲ろうについての実践と理解のある指導者のもと、あるいは盲ろう者と共にディスカッションを行うことによって、少数の体験者が短時間の疑似体験を行ったときに生じがちな障害理解の偏りを修正し、幅広い障害理解に導けるようにすることが望ましい。しかしながら、そのような指導者等がなかなか得られない状況が全国の施設等ではあるので、まずはいくつかの注意事項を守った上で、簡略化したプログラムを紹介し、現在担当している盲ろう児・者への共感的な理解を深める一助にしていただきたい。

 なお、できるだけ、係わりをもっている盲ろう児・者の状態に近い疑似体験ができるように、6種類の盲ろう疑似体験のパターンを紹介し、その中でもっとも近いと思われるタイプの疑似体験を実施していただきたい。機材はできるだけ簡単にそろえられるものを利用するように工夫してあります。

    1. 全盲ろう
    2. 盲難聴
    3. 弱視ろう(白濁による低視力)
    4. 弱視ろう(視野狭窄)
    5. 弱視難聴(白濁による低視力)
    6. 弱視難聴(視野狭窄)

  1. 盲ろう疑似体験のための機材の紹介
  2.  以下に、「盲」、「ろう」、「難聴」、「白濁による弱視」、「視野狭窄による弱視」の計5種類の疑似体験セットの機材および作り方を記します。それぞれを組み合わせることによって、上記6種類の盲ろう疑似体験セットが用意できます。担当している盲ろう児・者にできるだけ近い状態のものを選んで疑似体験を実施してください。

    <盲>

     必要な機材は図14で示してある機材の内のアイマスクです。

    「盲」の状態はアイマスクで目を覆うことで行います。

    <ろう>

     必要な機材は図14で示してある機材の内の、耳を保護するための耳栓、ウォークマン1台、ヘッドホン1組、ノイズテープ1本です。この内、ノイズテープは筆者まで連絡いただければ、テープ代と郵送料のみで提供いたします。(連絡先:国立特殊教育総合研究所、中澤惠江、FAX046-849-5563)

    図14 全盲ろう疑似体験のための機材

    図14 全盲ろう疑似体験のための機材

     聴覚障害を正確にシミュレートすることは技術的にできません。ここでは、耳栓で耳を保護し、その上にヘッドホンをつけ、ノイズを大きな音量で流して、外からの音をできるだけ遮断・妨害するという方法で実施します。このようにしても、大きな声で話しかけると、音声言語が体験者に届いてしまうため、「ろう」の疑似体験のときは、介助者役の人は音声言語を使わないようにします。

     全盲ろうの疑似体験セットを装着した状態を図15に示します。

    図15 全盲ろう疑似体験セットを装着した状態

    図15 全盲ろう疑似体験セットを装着した状態

    <難聴>

     必要な機材は「ろう」と同じです。

    「難聴」の状態は、ウォークマンを微調整してつくります。30cmぐらい離れたところで、普通の声の大きさで話しかけると何とか聞き取れるぐらいにノイズの音量を調整します。100cm離れると、同じ声の大きさでも聞き取りにくい状態になっているとよいでしょう。

    <弱視(白濁による低視力)>

     必要な機材は、図16に示してあるような、半透明のジッパー付食品保存袋2枚(薄手・大判)、ゴム、穴開けパンチ器です。

    図16 白濁による弱視疑似体験用材料

    図16 白濁による弱視疑似体験用材料

     「白濁による低視力の弱視」の状態は、半透明の袋2枚を図17のようにホチキスでとめ、両脇にパンチで穴を開け、ゴムひも等で両方の穴をつなぎ、お面のようなものをつくります。できあがった「白濁による低視力」弱視疑似体験セットを装着した様子を図18に示します。なお、2枚の袋が重なっていると、かなり視力を落とした状態になりますので、担当する盲ろう児・者がそれよりも視力があるようであれば、袋を一枚めくり上げて、1枚の袋を通してみてください。その様子を図19に示してあります。

    図17 白濁による弱視疑似体験セットの作成

    図17 白濁による弱視疑似体験セットの作成

    図18 白濁による弱視疑似体験セットを装着した状態

    図18 白濁による弱視疑似体験セットを装着した状態

    図19 半透明の袋を一枚めくり上げた状態

    図19 半透明の袋を一枚めくり上げた状態

    <弱視(視野狭窄)>

     必要な機材は、A4版の黒い紙一枚、セロテープ、ゴム、穴開けパンチです。

    「視野狭窄による弱視」の疑似体験セットは、図20のようにつくります。

    図20 視野狭窄による弱視疑似体験セットの作成

    図20 視野狭窄による弱視疑似体験セットの作成

    顔に合わせて短く切ったセットを装着した状態を図21に示します。穴を通して人を見たとき、1・5メートルぐらい離れると顔と上半身が視野に入るぐらいの状態になっているとよいでしょう。若干の誤差はかまいません。

    図21 視野狭窄による弱視疑似体験セットを装着した状態

    図21 視野狭窄による弱視疑似体験セットを装着した状態

  3. 盲ろう疑似体験の限界についての注意
  4.  盲ろう疑似体験にはいくつかの限界があることを十分に認識した上で実施してください。第一は技術的問題です。聞こえについての正確なシミュレーションはまだ実現できないでいます。弱視についてもそれは同様ですが、聴覚障害については、常にノイズを大きな音量で流すという状態で行っており、実際の聴覚障害とはかなり異なっていることを了解して下さい。

     しかし、なによりも、盲ろう当事者の心理的・情緒的側面は、短い疑似体験では本当に理解するということはそもそも無理であるということです。30分もすれば、またいつもの生活に戻ることができると分かって体験することと、この盲ろうの状態がこれからずっと続くという当事者の心理状態は、比べようもないことです。ですから、疑似体験を通して感じたこと、考えたことは大切にしながらも、その体験を過信したり、「盲ろうについて理解した」と思いこまないようにしていただきたい。疑似体験は、盲ろう児・者の困難さを想像する機会を提供し、よりよい係わりを主体的に見つけだしていくための、一つのきっかけなのです。

  5. 盲ろう疑似体験 − 盲ろう状態の選択
  6.  すでに述べましたが、できるだけ担当している盲ろう児・者の視覚と聴覚障害の状態に近い盲ろう疑似体験の状態を以下の六つのから選ぶことが大切です。

    1. 全盲ろう
    2. 盲難聴
    3. 弱視ろう(白濁による低視力)
    4. 弱視ろう(視野狭窄)
    5. 弱視難聴(白濁による低視力)
    6. 弱視難聴(視野狭窄)

  7. 盲ろう疑似体験 − コミュニケーション方法
  8.  盲ろう疑似体験者は、コミュニケーション方法も、できるだけ、担当している盲ろう児・者が使っている方法を使って下さい。筆談、手書き文字、指点字、手話、指文字、音声言語。複数のコミュニケーション方法をつかっている場合は、それら複数の方法を使ってみて下さい。言語を獲得していない盲ろう児・者を担当しているのであれば、その人が主として使っている方法、例えば身ぶりや実物などを使って下さい。詳しくは、コミュニケーション方法の段階的な変化についてまとめた図10、11をつかって、その人がつかっているコミュニケーション方法をチェックしてみてください。

     なお、盲ろう者が通常使っているコミュニケーション方法を、疑似体験者が習得していない場合は、他の方法を使って構いません。もしもどのコミュニケーション方法にしたら良いか迷ったら、盲の条件が入っているときは手書き文字、弱視の条件が入っているときは筆談で実施してみてください。

     介助者についても、担当している盲ろう児・者に話しかける時に使うコミュニケーション方法を使って下さい。ただし、盲ろう疑似体験者が、「ろう」であるという想定の場合は、すでに述べましたが、介助者が音声言語を使うことを禁じます。なぜならば、近くで話しかけると、ノイズの音量を最大にしても音声言語が疑似体験者に聞こえてしまい、「ろう」の状態をシミュレートできなくなるからです。

  9. 盲ろう疑似体験 − 介助者の役割
  10.  介助者の役割は、疑似体験の課題を遂行するための準備や手配、疑似体験者との会話、疑似体験者の安全確保、必要な場面での移動介助です。なお、課題遂行に熱心になりすぎて、盲ろうという状態を体験する過程がおろそかにならないように、介助者も疑似体験者も気をつけましょう。

  11. 盲ろう疑似体験 − 課題
  12.  盲ろう疑似体験の間に、次の課題を行って下さい。時間が足りないようでしたら、その時の都合で適宜延長して下さい。

    1. 疑似体験セットを装着し、椅子にすわって静かに盲ろうの状態へ気持ちを切り替えていきましょう。介助者はしばらく遠くに離れていましょう。この間5分くらい。
    2. 介助者は近寄って、体験者に介助者が来たことを伝えましょう。
    3. 二人で会話をしてください。内容は何でもけっこうです。10分くらい。
    4. 次ぎに、介助者からのコミュニケーションが体験者に届く距離と範囲を、二人で確かめてみましょう。どのくらい離れるとコミュニケーションが届かなくなったり、コミュニケーション以外の情報が届かなくなるかなど、調べて見ましょう。メジャーなどを用意すると比較しやすくなります。環境の変化がコミュニケーションの届く距離などに及ぼす影響も確認してみましょう。照明の違い、介助者が明るい窓を背にするか逆になるか、多くの人がにぎやかに話している場と静かな場の違いなど。テレビの音を大きくして代用することも可能です。10分ぐらい。
    5. 最後に、他の人に会って話してもらうために、介助者は体験者を伴って人に会いにいきます。誰に会うかは、秘密にして、その人のところまで体験者をつれていきましょう。できれば、二人の異なる人に出会うことを試みましょう。10分ぐらい。
    6. 時間がきたら、疑似体験を終了することを介助者は体験者に伝えて、そのセッションを終了して下さい。
    7. 今度は役割を交代して、介助者だった人が盲ろう疑似体験をします。
    8. 両者が体験が終わったら、感想メモの書き込みをします。20分。
    9. 感想メモを元に、介助者の立場と盲ろう疑似体験者の立場からの感想の交換をし、話し合いをする。30分。
    10. 体験をどう活かしていくかのまとめを書く。20分。

  13. 盲ろう疑似体験 − プログラム全体の時間の流れ(2時間30分)
  14. 合計時間 150分


9 盲ろう疑似体験の実施

 この頁から4頁分は、盲ろう疑似体験の実施者はコピーをつくってつかってください。

体験者2名:本人            ペアの氏名

実施 日時:    年   月   日( ) 時間:

実施 場所;

盲ろう疑似体験の種類(○でかこむ):

  1. 全盲ろう
  2. 盲難聴
  3. 弱視ろう(白濁による低視力)
  4. 弱視ろう(視野狭窄)
  5. 弱視難聴(白濁による低視力)
  6. 弱視難聴(視野狭窄)

必要な機材(○でかこむ):

*作り方は本文を参照してください。

体験中につかうコミュニケーション方法(○でかこむか記入);

*「ろう」体験を含むときは、介助者は音声言語を禁止。

課題の概略とプログラム全体の時間の流れ(2時間30分)

  1. 疑似体験セットを装着し、待つ。5分。
  2. 介助者は体験者に介助者が来たことを伝えましょう。
  3. 二人で会話をする。10分。
  4. コミュニケーションが体験者に届く距離と範囲、環境を調べる。10分。
  5. 他の人に会って話してもらう。移動。10分。
  6. 時間がきたら、疑似体験を終了することを介助者は体験者に伝える。
  7. 役割を交代して、介助者だった人が盲ろう疑似体験をする。10分
  8. 体験が終わったら、感想メモの書き込みをする。20分。
  9. 感想メモを元に、二人で話し合いをする。30分。
  10. 体験をどう活かしていくかのまとめを書く。20分。

注意: 課題の詳細については、本文をよく読んでください。

10 疑似体験感想メモ − 盲ろう者役

  1. 疑似体験セットを装着し、待つ。5分。
  2. 介助者は体験者に介助者が来たことを伝えましょう。
  3. 二人で会話をする。10分。
  4. コミュニケーションが体験者に届く距離と範囲、環境を調べる。10分。
  5. 他の人に会って話してもらう。移動。10分。
  6. 時間がきたら、疑似体験を終了することを介助者は体験者に伝える。

上記の体験内容について、以下の側面にわけて感想を書いて下さい。

11 疑似体験感想メモ − 介助者役

  1. 疑似体験セットを装着し、待つ。5分。
  2. 介助者は体験者に介助者が来たことを伝えましょう。
  3. 二人で会話をする。10分。
  4. コミュニケーションが体験者に届く距離と範囲、環境を調べる。10分。
  5. 他の人に会って話してもらう。移動。10分。
  6. 時間がきたら、疑似体験を終了することを介助者は体験者に伝える。

上記の体験内容について、以下の側面にわけて感想を書いて下さい。

12 盲ろう疑似体験をどう活かしていくか


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