1.3.3 数・助数詞及びおよその数の書き表し方

日本点字委員会


内容

  1. 数や助数詞の書き表し方の原則
  2. 位取り記数法とかなの使い分け
  3. およその数の書き表し方

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問い 数や助数詞あるいはおよその数などの書き表し方につきまして、規則の根拠を説明してください。

答え 「改訂日本点字表記法」の第2章第3節の規則1.及び第3章第3節の規則1.2.6.にかかわる事柄につきまして、御説明いたします。

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(1)数や助数詞の書き表し方の原則

 数や助数詞を数字を用いて書き表す場合には、第2章の第3節1.の規則により、「一つの数字には数符を一つだけ用いて位取り記数法で記す」必要があります。かなもじ体系の点字では、漢数字のような「万」「千」「百」「十」などの位を表す文字がありませんから、数符に続く「あ い う る ら え れ り お ろあ い う る ら え れ り お ろ」の10種類の点字記号は、算用数字の場合と全く同じように、その位置によって後ろから順に位取りが決まってくるのです。点字入門期の初心者の中には、このことを誤解される方が案外多いので、数符の後ろは算用数字の場合と同じく、位取りに記数法でしか表せないことを明確に理解してもらう必要があります。また、「一つの数字には数符を一つだけ用い」るということは、数符を改めて書き表せば別の数になるということを意味します。墨字で「2・3日」を書き表す場合には、「23日」と区別するために、2と3の間に中点や読点を用いていますが、点字では「「数符」「2」「数符」「3」「ニ」「チ」 数符2数符3にち」と書き表せば2度目の数符が別の数の始まりを意味しますので、中点や読点を用いる必要がないのもそのためなのです。

 次にひと続きの数の範囲、言い換えれば、一つの数符が支配する範囲はどこまでかという問題につきまして触れておきます。先程の数字を表す(あ)〜ろ(245の点)(ろ)の10種の点字記号は、数符に続いてひと続きに書き表されている間はいつまでも数字を意味しています。また、これらの記号の間に、小数点((2)の点)及び位取り点とアポストロフィ(両者ともに(3)の点)が割り込んでいても数符の有効性は続きますので、これらの記号の後ろに数符を再び書き改める必要は全くないのです。その意味でこれらの記号は、あ(1の点)(あ) 〜 ろ(245の点)(ろ)とともに数符に支配される記号ということができます。そこで、小数の場合は「「数符」「3」「2の点」「1」「4」数符 3 「2の点」 14」のように書き表し、大きな数に位取り点を用いる場合には、「「数符」「1」「1」「8」「3の点」「3」「7」「8」「3の点」「3」「3」「0」「ニ」「ン」数符118(3の点)378(3の点)330にん」のように書き表し、「「数符」「1」「9」「8」「2」「ネ」「ン」数符1982ねん」をアポストロフィで略記する場合には、「「数符」「3の点」「8」「2」数符(3の点)82」のように書き表せばよいのです。

 ついでにここで、位取り点の用い方につきましても若干触れておきます。統計表や会計簿などでは、大きな数を書き表すのに位取り点を用いる方が、点字触読の場合でも読みやすいのです。ところが、位取り点の用い方につきましては「備考欄」にしか記されていないためなのか、あまり使われていないようです。目的と必要に応じて大いに使ってほしいものです。位取り点を用いて3桁で区切るか4桁で区切るかの問題ですが、戦前には4桁ごとに区切ることもよく行われていましたし、日本語での数の読み上げにはその方が便利なこともあります。ただ最近では、一般には3桁ごとに区切ってありますので、点訳でもそれに合わせているのが大勢のようです。

 なお、ひと続きの数の書き表し方と関連して分数の問題にも触れておきます。分数は日本文中では読み上げるとおりに分母から書き表すことになっています。その場合、分母と分子の間を一マスあけていますが、これはなぜかという問題です。分数は一つの数であるから続けるべきであるという意見もあります。これは大変難しい問題です。確かに、「「数符」「3」「ぶ」「ん」「の」「マスあけ」「数符」「1」数符3ぶんの(マスあけ)数符1」のように分子が一桁であれば続けた方がよさそうに思えますし、アメリカの視力表示のように「「数符」「2」「0」「0」「ぶ」「ん」「の」「マスあけ」「数符」「2」「0」数符200ぶんの(マスあけ)数符20」のような場合になると、区切る方がよさそうに思えるのです。そこで、単位分数の考え方を導入して、前半を「何分の1」という単位と考え、それに後半の数をかけたものが分数であると考えれば、前半と後半の間に明確な分析的意識が働いて、区切るのが自然に感じられるのではないかと思われるのです。

 その立場で、「「数符」「3」「ぶ」「ん」「の」「マスあけ」「数符」「1」数符3ぶんの(マスあけ)数符1」も、「1/3」という単位に「1」を掛けたものとして、大きな数の分子の場合と統一的にとらえて、分母と分子の間はすべて区切ることにしているのです。

 さて、数符の支配範囲がどこで終わるのかという問題に移りたいと思います。ひと続きの数の範囲が終わって、数符の支配が無効となる場合をここでまとめておくこととします。まず、マスあけがあれば数符は無効となり、マスあけの後ろは再び数符を書き改めない限り数字以外の体系になります。これは行末の場合も同じですから、ひと続きの数の途中で「行移し」をすれば数字は行末で終わり、次の行頭は別の体系であるかな文字として読まれてしまいます。次はひと続きの数に続いて数符を書き改めた場合です。これは、前に述べたように前の数符の支配が終わって、新たに別の数字が始まることを意味しています。第3は、ア行とラ行の10個を除くかな文字が数字に続く場合です。この場合、清音だけではなく、濁音や半濁音あるいは拗音や特殊音も数字に続いて、数符の支配を無効にしますが、発音符や促音符あるいは長音符が数字に続くことはほとんどありません。第4は、数字に続いてつなぎ符をはさんでア行とラ行のかながくる場合です。この場合、これらの10個のかなは、数字を表す点字記号と形が全く同じですから、もしつなぎ符をはさまなければ数符に支配されて数字として読まれてしまうので、初心者にていねいに説明する必要があります。第5は、数字に続いて外字符を前置したアルファベットの大文字と小文字がくる場合です。これらは数字にかな文字が続く場合と同じように助数詞に使われています。第6は、数字や文字以外の記号類が数字に続いてくる場合です。カッコ類を始め多くの場合がこれに含まれています。

 このように多くの場合がありますので、これをすべて記憶しておくのは初心者には負担が大きいのです。そこで、逆に、数符に支配されているあ(1の点)(あ)〜 ろ(245の点)(ろ)と(2)の点や(3)の点以外の点字記号か、あるいはマスあけがくれば数符の支配は終わると考えた方が実際的です。

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(2)位取り記数法とかなの使い分け

 数や助数詞を数字を用いて書き表す場合の原則の説明に引き続きまして、数字とかな文字との使い分けの問題に移ります。墨字で数や助数詞を書き表す場合には、算用数字(アラビア数字)と漢数字が使い分けられています。漢数字の場合は、縦書きと横書きで多少異なってはいますが、従来通り位取りを表す漢字を用いている場合と、位取り記数法に準じて漢数字を用いている場合とがあります。その他に、「ひと・ふた・み」のように、大和言葉の数をかな文字で書き表している場合もあります。

 これに対してかな文字体系の点字では、算用数字と漢数字の区別がありませんから、墨字の表記と直接対応されることはできません。そこで、内容に応じて、数字を用いて位取り記数法で書き表すか、かな文字を用いて書き表すかを判断しなければなりません。数字とかな文字とでは、表意性と表音性の上で一長一短があります。数字は表意性は明確ですが、どう読んでよいか迷う場合があります。一方、かな文字は表音性は明確ですが、同音異義語などの場合のように意味が正確に理解できず、誤読を引き起こすおそれがあります。そこで、数字とかな文字の長所をそれぞれ巧みに使い分けて、表意性と表音性の調和を図ることが、読みよく分かりよい点字表記法の一つのポイントとなるのです。

 第3章の第3節1.に「ひとまとまりの数は数符を前置して4桁までは続けて書き表す。万・億・兆などの位はかなで書き表すが、千や百のかなは意味の理解を容易にする場合に限り用いる。」と記されているのは、このような考え方に基づいているのです。この場合、なぜ4桁までが数字を用いて位取り記数法で書き表され、それ以上は「万・億・兆」などの単位を表すかな文字で書き表すのかという問題があります。

 それには二つの根拠があります。まず第1は、点字の触読性の問題と位取り記数法との関係です。点字触読では、指先で一マスか二マスずつ読み取り、記憶にためておいて意味のあるまとまりとして理解しています。一方、位取り記数法ではひと続きの数の最後の数字を確認して初めて最初の数字の位が決まりますから、前から一つずつ順に読んでいく場合、あまり桁数が多いと記憶しておくことがむずかしくなるのです。4桁程度であればかなり遅い読み手であっても、何とか記憶しておける範囲です。そこで、4桁以内でいったん切っておくことが有効となるのです。もう一つの根拠は、日本語における大きな数の唱え方の法則です。つまり、「一・十・百・千」の4桁がひとまとまりとなって、それ以上は、「万×(一・十・百・千)」、「億×(一・十・百・千)」・・・・・・というように、最初の4桁に1万を2度3度と掛け合わせた「万・億・兆」などの4桁ごとの単位が大きなまとまりとなっているのです。そこで、「「数符」「1」「ちょー」「マスあけ」「数符」「4」「6」「0」「9」「36の点」「お」「く」「マスあけ」「数符」「3」「2」「5」「1」「ま」「ん」「マスあけ」「数符」「4」「1」「9」「2」数符1ちょー(マスあけ)数符4609つなぎ符(36の点)おく(マスあけ)数符3251まん(マスあけ)数符4192」というように、「万・億・兆」などの大きな位の単位はかな文字で書き表し、その内部の「千」以下の4桁までは位取り記数法で書き表すという組み合わせが用いられているのです。

 もっとも、統計表や会計簿などでは、各行の位取りの位置を決めておくことができるので、位取り点なども手掛かりにして読み始めから最初の数字の位取りの見当がつきますから、位取り記数法で書き表したほうが読みやすいのです。しかしながら、普通の日本文中に大きな数が出てくる場合には、その行における数字の出だしの位置が一定ではありませんから、その位置を手掛かりとして一つだけの数字の最初の位取りの見当がつけにくいのです。そのため、普通の文章では、4桁までの位取り記数法と、「万・億・兆」のかな文字の単位との組み合わせが極めて有効となるのです。

 ところで、「千」以下の位はもとよりのこと、「万」や「億」の位の内部の4桁までの位は、数字を用いて位取り記数法で書き表すのが原則です。その意味で、「数符100つなぎ符(36の点)えんだま」や「数符1600めーとる(マスあけ)りれー」などはもとよりのこと、「数符300まんとん」や「数符5100つなぎ符(36の点)おくえん」などと書き表すのです。ただし、「千や百のかなは意味の理解を容易にする場合に限り用いる」ことができるようになっています。この場合、「意味の理解を容易にする場合に限り」とはどういう場合かということが問題になります。「 数符5せんえんさつ」や「数符1せんまんえん(マスあけ)たからくじ」などは「千」や「千万」などの単位が一つの単位として独立的で、それに一桁の有効数字を掛けたようなものですから、単位をかな文字にした方が意味の理解が容易になるということができます。点訳では、「数符6せんがん」とか「 数符3ぜんまんさつ」などと書き表されることが多いのですが、これはどちらかといえば、漢数字の位を表す漢字をかな文字に変えている傾向の表れであるように思われます。それにしても、「千」の場合はかな文字で書いた方が意味の理解を容易にする場合もありますが、「百」の場合はめったにありません。強いて探せば、「ひゃくまんの(マスあけ)みかた」とか「ひゃくにんりき」などを挙げることができます。これとても意味の理解を容易にするというのは個人差の問題で、音はともかく意味は数字の方が理解を助けるのが普通です。その上、「千」につきましても、「せんにん」などのように前に数字がつかない場合には、同音異義語を誤りを引き起こしやすいので、いずれにしても、4桁まではできるだけ数字を用いて位取り記数法で書き表すという原則に立った方がよいように思われます。

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(3)およその数の書き表し方

 およその数の書き表し方と言いましても、その原則は、(2)で採り上げた数や助数詞の場合とほとんど同じです。実際的にも、「数符1せんまん(マスあけ)とみん」や「はくはつ(マスあけ)数符3ぜんじょー」などの場合は、意味を考えてみなければ、それがおよその数であるのか、普通の数や助数詞であるのか分かりにくいのです。前に採り上げた「ひゃくまんの(マスあけ)みかた」や「ひゃくにんりき」などのような漢語表現も、およその数のたぐいとしてとらえることもできなくはないのです。それに比べて、数や助数詞の前に「約」「およそ」「ほぼ」などがきていたり、数や助数詞の後ろに「程度」「ぐらい」「あまり」「たらず」「強」「弱」などがきていれば、それがおよその数であることははっきりします。そのように、およその数であることがはっきりした場合には、「やく(マスあけ)数符6ぴゃくまん」「数符3ぜんまんにん(マスあけ)ていど」などと「百」や「千」のかな文字で位を表現する傾向がやや増えてきます。これは、およその数の場合、普通の数や助数詞に比べて、有効数字は一桁だけで、あとはひとまとまりの単位であるという意識が強くなるために起こされた現象であると思われます。

 さらに、「すーひゃくねん」とか、「なんびゃくにん」などのように、前におよその数を表す造語要素がきますと、その後ろが数の位取りを表していることが明確になりますから、同音異義語による誤読のおそれは少なくなります。そのため、「千」だけではなく、「百」の位を表すかなが使われる傾向はもっと多くなります。このような傾向の延長として、およその数の場合にだけ限定した上で、「さらに十の位については前におよその数を表す造語要素がつく場合にだけかなで書いてもよい」と認められています。そして、「なんじゅーばい」と「すーじゅー」が、数字を用いた例示に続いてカッコの中に例示されています。「十」の位については、なぜ「百」や「千」よりもかなで書き表すことを制限しているのかという疑問を持たれるむきもあるかと思います。「十」を「数」とか「何」の後ろにだけ限定しているのは、同音異義語による誤読を避けるためなのです。かな文字体系の点字では漢字を用いていませんから、もし「じゅー」を野放しにすると、「数符2じゅーばし」を渡って宮城に入るためには、橋を20回渡らなければならないという誤解や、「数符5じゅーのとー」は「塔」が50建っているという誤解を引き起こさないという保証はないからです。そういうわけですから、たとえそれが、およその数であったとしても「じゅー」はもとよりのこと「ひゃく」や「せん」の使用は慎重にしていただきたいのです。

 およその数の書き表し方の中で、解釈が分かれやすいのが重ね数字の問題です。第3章の第3節2.では、「およその数で数字が重なれば、それぞれに数符を前置して続けて書き表す。その重なった部分が一番大きな位や一番小さな位でない場合には、重なった部分の上の位をかなで書き表す。」と規定されています。「数符5数符6にち」とか、「数符2数符3にん」とか、「数符17数符8どる」などのように、数字が重なった部分にそれぞれ数符を前置して続けて書き表すのです。(1)の冒頭の部分で、数符を改めて書き表せば別の数字になると説明しています。この場合、数字を重ねたおよその数における別な数字とは何かという問題を考えておく必要があります。重なった二つの数字は、1から9までの数の系列で隣り合った数字で、実際に伝えたい数はその二つの数のどちらか、またはその中間にあるという意味でおよその数を表しているということができます。その意味では、「すー数符10にん」とか「数符10なんねん」などと同じたぐいに属すると考えられますから、これらの書き表し方も同じと考えることができます。

 もう一つ考えておかなければならないことは、これらの数字を重ねた部分と位取り記数法との関係です。つまり、数字を重ねた部分が最初にきたときは、最初の数字は一桁で、次の数符のあとは位取り記数法で書き表されており、しかも、最初に一桁の数字の位は、位取り記数法で書き表されている後半の数の最初の位と同じであるということです。これに対して、数字を重ねた部分が最後にきたときは、最初の部分が位取り記数法で書き表されており、最後の数符に続く一桁の数字は、前半の数の最後の位と同じ1の位であるということができます。この書き表し方は4桁以上の大きな数の場合でも同じです。そこで、「数符7数符8000ねん」、「数符5数符6000ねん」、「数符205数符6にん」、「数符1004数符5にん」、「数符2005数符6まんにん」などと書き表すことができます。

 この場合、最後の1の位におよその数を表す数字の重なった部分がくる場合には、「数符365数符6にち」、「数符1894数符5ねん」などというようにすべての位が有効数字である場合が出てくるので問題がありません。しかしながら、最初の位がおよその数を表す数字を重ねた部分であるときは、あとはその部分の位だけを表せばよいのですから、前に述べたおよその数にならって、かなでその部分の位だけを表せばよいということになります。つまり、数字を重ねている部分が一桁の有効数字で、あとは位取り記数法ではなく、かなで位だけを書き表せばよいということになります。そこで、「数符7数符8ぴゃくねん」、「数符5数符6せんにん」、「数符2数符3ぜんまんとん」などと書き表すこともできます。さらに、これに準じて、「すーひゃくにん」、「なんぜんぼん」、「すーひゃくまん」、「なんぜんまん」などと書き表すこともできます。ただ、「すー数符10まん」や「なん数符10つなぎ符(36の点)おくえん」などは「じゅー」を用いない方がよいように思われます。

 ところで、ここに一つ問題があります。一桁か二桁の数であれば、数字を重ねた部分は数の最初か最後の位にしかくることはありません。しかしながら、3桁以上の数になりますと、「その重なった部分が、一番大きな位や一番小さい位でない場合」が出てくるのです。その場合には、「重なった部分の上の位をかなで書き表す」ことになっています。そこで、「数符5まん(マスあけ)数符3ぜん(マスあけ)数符7数符800」とか、「数符2ひゃく(マスあけ)数符5数符60」などと書き表せばよいわけです。これは、前の単位を切り離してかなで書き表すことによって、数字の重なったおよその数の部分を一番先頭の位に出してやることになり、前に述べたほかの場合と全く同じ書き表し方ができるようにするためです。これによって、「数符1500数符5数符60」などと書いて、どこの位がおよその数であるのかが分からなくなるような苦しい表現をしなくてすむようになっているのです。

 先に引用した第3章の第3節2.の規定では、「重なった部分の上の位をかなで書き表す」とありますが、そのマスあけにつきましては明確には規定されていません。用例では一マスあけて示されていますが、これだけでは分かりにくいという批判をいただいております。そこで、なぜマスあけするかという理由につきまして、若干説明いたしておきます。

 日本語で大きな数を唱える場合には、一つ一つの位がそれぞれ独立して呼ばれています。そのため、漢数字では、命数通りそれぞれの位を表す特別の漢字を用意して、それを添えて書き表しています。この書き表し方は位取り記数法とは基本的に異なるもので、点字においてもかなで書き表す場合には、原則としてこの書き表し方に準じているわけです。そうであれば、一つ一つの位ごとに独立させる以上、数字を重ねたおよその数の場合のマスあけにつきましても、一つ一つの位ごとに区切るのが自然ということになります。ただ、二桁まではたまたま真ん中の位がないため、上の位を切り離す必要がないので、マスあけの問題には関係がないということができます。また、「万・億・兆」などの位はもともと区切ることになっていますから、問題はありません。

 そこで、「百」と「千」の位だけが問題となります。「数符2ひゃく(マスあけ)数符5数符60」と「数符2ひゃく(マスあけ)すー数符10」、「数符2せん(マスあけ)数符5数符600」あるいは「数符2せん(マスあけ)数符5数符6びゃく」と「数符2せん(マスあけ)なんびゃく」などは同じと考えてよいでしょう。さらに、「数符3ぜん(マスあけ)数符4ひゃく(マスあけ)数符5数符60」や「数符3ぜん(マスあけ)数符4ひゃく(マスあけ)すー数符10」の場合もあまり抵抗はありません。

 ただ、「せん(マスあけ)ひゃく(マスあけ)数符5数符60」とか「ひゃく(マスあけ)数符2数符30にん」などとなりますと、続けたくなるという意見が出てきます。しかしながら、それぞれの位が独立しており、その段階ごとに区切るという考え方に立つとすれば、これらの場合も、「数符1せん(マスあけ)数符1ぴゃく」の「1」の省略だと考えて原則通り区切る方が規則が明確になります。

 現在、点訳などに際して、これらの場合につきまして、4桁までの場合はすべてかなであっても続けるという方法も行われています。位取り記数法と異なっているので、続けなければならないという必然性はありませんし、ひとまとまりの数が長過ぎるのには多少問題もあります。しかしながら、ある場合は続けて、ある場合は離すというような複雑な規則を立てるよりは迷いを少なくする効果はあると思います。

 以上、数、助数詞およびその数の書き表し方について、日本点字委員会としての説明をしてまいりましたが、各施設などで実施されている規則や慣習あるいは考え方と多少異なることがあると思います。この課題は倫理的にもむずかしいものの一つですので、みなさま方からの御批判や御意見をいただければ幸いです。

 

出典:「日点委広報 日本の点字」第10号、pp.10-19、日本点字委員会、1982年12月.


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