こころリソースブック編集会(編):ATACカンファレンス2000 テキスト「視点は始点」、pp.17-28.

視覚障害のある人のためのコンピュータ・アクセシビリティ

中野 泰志(慶應義塾大学)

e-mail : nakanoy@hc.cc.keio.ac.jp

HomePage : <http://www.econ.keio.ac.jp/staff/nakanoy>

園 順一(株式会社ディーエスピーリサーチ)

 

1 はじめに

 最近のコンピュータは、使いやすくて便利になってきたと言われますが、どういう点が使いやすくなったのでしょうか? 最も、変化したところは、画面を見ただけで、命令を覚えなくても操作ができるようになってきたところです。でも、ちょっと考えてみてください。画面を見ることが困難な視覚障害の人は、視覚的な表現を重視している今のコンピュータをどうやって使えばいいのでしょうか? ここでは、視覚障害の人がビジュアル(視覚的)な表現が多様してあるコンピュータシステム(ウインドウズとマッキントッシュ)にどのようにアクセスするかを紹介します。

 さて、コンピュータの話しに入る前に、視覚に障害があるといっても、その程度は様々だということを覚えておいてください。一般的には、視覚情報へのアクセスがまったくできない全盲(blind)の状態と不自由さはありながら視覚情報を活用できるロービジョン(low vision;弱視と呼ばれることもある)の状態に分けて考えられています(詳しくは本書の「視覚障害を理解するための疑似体験セミナー」を参照して下さい)。

 

2 視覚障害がある人はコンピュータを利用する際に何に困るのか?

(1) 画面表示が見づらい(画面表示のアクセシビリティ)

 視覚に障害を持つ人がコンピュータにアクセスする際、最初にバリア(障壁)となるのは、画面に表示された情報を読みとることです。全盲の人は画面に表示された情報を確認することはできないし、視力の低い人には表示される文字が小さくて読みにくかったりします。そのため、a) 画面に表示されている情報を聴覚や触覚等、視覚以外の感覚情報に変換したり、b) 文字や画面全体を拡大したり、配色を変更することで、視覚情報をより見やすく表示したりしなければなりません。

(2) マウスなどでポインターを動かすのが大変(操作のアクセシビリティ)

 視覚障害のある人のバリアは、画面表示だけではありません。最近のコンピュータ・システムで標準的になってきたGUI(Graphical User Interface)の特徴は、情報を視覚的に表示することでわかりやすくすると同時に、視覚的に表示された「もの」を「開いたり」「動かしたり」という日常生活の比喩(アナロジー)で「操作」できる点にあります。視覚障害がある人も、日常生活における具体物の操作については、触覚や匂い等、視覚以外の手がかりも使えるため比較的容易です。ところが、現在のところ、コンピュータ上での「もの」は視覚情報でバーチャルに表示してあるだけなので、視覚障害のあるユーザには扱いが困難です。

(3) 文章のレイアウトや絵・写真などのビジュアルな情報がわかりにくい(情報の表現方法に関するアクセシビリティ)

 最近は、絵や写真などのビジュアルな情報を使ってわかりやすく表現された情報が多くなってきました。しかし、ビジュアルな情報だけで表現された文章は、視覚障害のあるユーザには意味をなしません。また、章のタイトルや段落など文書の構造は、フォントを変えたり、字下げをしたりして、視覚的に表現されていることが多いようです。そのため、これらのレイアウト情報を利用できない視覚障害ユーザには文書の構造をすばやく把握するのが困難です。

 この問題を解決するためには、1つの情報を様々な感覚モダリティに訴えかけるように複数の形式で表現する必要があります。例えば、絵や写真には文章や音声でもわかるような説明が必要ですし、章のタイトルや段落の始まりなどの文書構造が確実に特定できるようになっていなければなりません。最近ではホームページやマニュアル等、電子化された情報が増えてきていますが、視覚だけに頼るような情報提示の方法がとられているケースが少なくありません。せっかくの電子データなのに、情報の表現方法が単一では利用できない場合があるのです。

 

3 視覚障害を持つ人の画面表示へのアクセス

3.1 画面を見ないで操作する(視覚情報を他の感覚情報に変換するシステム)

3.1.1 音声出力(スクリーン・リーダー)

 画面に表示される文字情報を音声化して出力する方法です。画面の中から音声化すべき情報を取り出し、文章構造や漢字の読み方を解析し、音声で読み上げてくれます。ウインドウズ(Win)対応のソフトとしては、2000reader(システム・ソリューション・センターとちぎ;http://www.ssct.co.jp/95reader/index.html)、PC-Talker(高知システム開発;http://www.aok-unet.ocn.ne.jp/text/pctalker.htm)、VDM100W-PC-Talker(アクセス・テクノロジー:http://accesstechnology.co.jp/)、outSPOKEN(富士通中部システムズ;http://www.tokaido.co.jp/fukushi/)等が市販されています。

3.1.2 点字ピン・ディスプレイ出力

 画面に表示される文字情報を点字ピン・ディスプレイに出力する方法です。点字ピン・ディスプレイとは、小さなピンを電気的にコントロールして、点字の凸点を表示する装置です。紙のいらない点字という意味で、ペーパー・レス・ブレイルと呼ばれることもあります。国内で入手できる点字ピン・ディスプレイには「ブレイルノート」シリーズ(ケージーエス;http://www.kgs-jpn.co.jp/piezo.html)や「アルバ・ブレイル・ターミナル」シリーズ(ジェイ・ティー・アール;http://www.aagi.com/aagi/aagi_home.html)等があります。なお、点字ピン・ディスプレイに点字を表示するためには、表示用のソフトが必要です。前述したスクリーン・リーダーの中には、点字ディスプレイにも対応しているものがありますので、音声を聞きながら、点字でも確認できるわけです。

 点字ピンディスプレイを備えた携帯型パソコン(視覚障害者用点字電子手帳)もあります。ワープロ、電卓、時計、カレンダー、ストップウォッチ、タイマー等の機能があります。BLAZIE ENGINEERING社のBraille Lite BLT2000(日本での販売元=アクセス・テクノロジー;http://accesstechnology.co.jp/blt2000.html)やブレイルメモ BM16(ケージーエス株式会社;http://www.kgs-jpn.co.jp/b_memo.html)等があります。

3.1.3 ホームページを音声で聞く(音声ブラウザ)

 ホームページは今や電話帳やテレビよりも便利な情報源です。このホームページを音声で確認しながら、使えるのが音声ブラウザです。ウインドウズ用の市販されている音声ブラウザには、ホームページ・リーダー(日本IBM;http://www.ibm.co.jp/accessibility/soft/hpr.html#top)、眼の助(富士通東北海道システムエンジニアリング ;http://www.netbeet.ne.jp/~feh001/package/gannosuke/index.htm)、ボイスサーフィン(アメディア;http://www.amedia.co.jp/product/vsurfing/index.htm)等があります。また、Windowsに標準で添付されているインターネットエクスプローラ(IE)を音声化したフリーソフトにVoiceExplorer2000(http://www.osakapref-sb.ed.jp/vips/ve2000.htm)があります。

3.1.4 点字で印刷する(点字プリンタ)

 点字プリンタは点字を紙に印字する装置です。国内で入手できる点字プリンタのリストは「こころWeb」(http://www.jeida.or.jp/document/kokoroweb/chap09/kkr09d1.html)に詳しく掲載されています。なお、点字プリンタによっては、点図を作成するためのグラフィック・モード(点字の点を使って図を印字する機能)を持っているものもあります(点図データをデータベース化して、利用できるようにした「点図図書館」サイトもあります;http://www.ricoh.co.jp/tenzu/)。また、日本の点字は諸外国と比較すると、点と点の間隔(点間)や文字と文字との間隔(マス間)が狭く設計されています。点字プリンタを選択する際には、この点字のサイズも注意する必要があります。

3.1.5 どんな画面も触って確認(触覚読書器:オプタコン)

 触覚で画面情報を確認する方法として、触覚読書器(オプタコン)があります。これは、点字よりも解像度の高い(細かい)図形等の情報を触知するためのもので、小型のカメラで印刷物の濃淡を判別し、細いピンの上下振動に変換する装置です。オプタコン(キヤノン・福祉機器事業室;http://www.canon.co.jp/Heartware/heart/01/fukusi/opta.htm)は、単独で動作するため、コンピュータの画面に限らず、どのような印刷物にも適応可能です。ただし、オプタコンを使いこなせるようになるためには、訓練が必要になります。

 

3.2 画面の表示を見やすくするシステム

 視力が低下したり、視野に制限があると、画面の文字や絵等の表示が小さくて読めなかったり、カーソルやマウス・ポインタ等を見失ってしまう等の不便さがパソコンを扱いにくくしています。現在、このような画面の見やすさを向上させるためには、a) OSそのものに用意された機能、b) OSを強化するための汎用画面拡大ユーティリティの機能、c) アプリケーションやハードウェアに備えられた機能を組み合わせて利用する方法があります。

3.2.1  お金をかけないで画面を見やすくする(OSの標準機能)

(1) 解像度の変更

 WinにしてもMacにしても、画面の解像度を変更できるようになっています。解像度とは、どれだけ細かい情報まで表示するかを示すもので、解像度を上げる程、1画面に表示される情報量が増えることになります。通常、解像度はパソコンの1画面を構成する点(ピクセル)の数で表現されています。例えば、「640×480」というのは幅が640ピクセル、高さが480ピクセルの点で画面を構成することを示しています。さて、最近のディスプレイは「640×480」「800×600」等、1台で複数の解像度を表現できるようになっています。同じサイズのモニタ・ディスプレイで解像度を変更するということは、例えば、同じ面積を「640×480」で分割するか、「800×600」で分割するかを変えることです。したがって、解像度を低下させる程、画面を構成する点の数が減少し、表示される情報量が減少しますが、その分、1つの構成単位の点のサイズが大きくなり、結果として文字や絵等が大きく表示されるようになります。つまり、画面全体を大きく表示したい場合には、解像度をできるだけ下げる方がよいということになります。解像度の変更はWinの場合は「画面のプロパティ」を、Macの場合はコントロールパネルの「モニタ」を選択すると設定できます。

(2) OS標準のアクセシビリティ機能

 Win(98, 2000, ME)やMacには標準で障害者のアクセシビリティを考慮した機能が用意されています。Winでは「ユーザ補助」、Macでは「フレンドリー・アクセス」と呼ばれる機能で、いずれのシステムにも標準で用意されています。

 Winの場合、「コントロール・パネル」の中にある「ユーザ補助」のプロパティを選択し、「画面」のタブを選ぶとロービジョン用の各種設定ができるようになっている(WinNTでは「画面」タブの設定ができませんのでご注意ください)。画面の文字やアイコンの大きさ、色(白黒反転もできます)、マウスポインタの見やすさ、スライドバーなどのエレメントの大きさ等が変更できます。なお、これらの設定を対話的に行う「ユーザ補助ウィザード」という機能もあり、とても便利です。いろいろな設定を試してみて、最も見やすい条件を探してください。さらに、上述の機能の他、「Microsoft拡大鏡」という虫眼鏡のような働きをする拡大ソフトも付属しています。拡大倍率は9倍までですが、拡大画面(レンズ)の大きさを変えたり、一瞬で白黒反転をしたりできるようになっています。

図1 マイクロソフト拡大鏡による画面拡大の例

 Win ME(ミレニアム・エディション)では、上述の機能の他、ポインタを見やすくするための機能が2つ追加されています。一つは、ポインタを見失ったときに見つけやすくする機能です。これは、「コントロール・パネル」の「マウス」のプロパティを選択すると設定できます。ポインタを見失ったときに、コントロールキーを押すと、ポインタの周りに池の小石を投げ込んだときのような波紋が出来て、ポインタの位置を見つけやすくしてくれます。もう一つはカーソル(ワープロなどで文章を書くときにI字型で点滅しているポインタ)を見やすくしてくれる(太さを変更できます)機能です。これは、「ユーザ補助のプロパティ」の「画面」の項目で設定できます。

 Win MEでは上記の設定を対話的に行う「ユーザ補助の設定ウィザード」(「プログラム」の中の「アクセサリ」にある「ユーザ補助」の中にあります)もかなり充実しています。

図2 マウスの見やすさを変える

図 ウインドウズMEの新機能:カーソルの太さの変更機能

図4 ウインドウズMEの新しい機能:マウスポインタを探しやすくする機能

図5 ウインドウズMEの新機能:使いやすくなったユーザ補助ウィザード

 Macでは、「アップルメニュー」から「コントロール・パネル」を選択し、その中から「アピアランス」を選ぶと文字の大きさや配色等を変更できます。また、OSの「特別付録」の中にある「クロース・ビュー」を「システム・フォルダ」にコピーすれば、拡大機能を追加できます。そうすると、倍率や白黒反転の有無等の設定ができるようになっています。

3.2.2 ロービジョン用の市販ツール(汎用画面拡大ユーティリティ)

 OSに標準で付属している画面拡大機能では物足りない方のためには、専用の拡大ソフトもあります。日本語環境でも問題なく動作する汎用の画面拡大ユーティリティとしては、WinではZoomText Xtra(ズームテキスト・エキストラ;日本電気:http://www.amuseplus.com/product/accessibility/zoomtext/)等が、Macではシステムに標準添付されているクロース・ビューの機能を強化したinLarge(ALVA:http://www.aagi.com/aagi/inlarge_products.html)があります。

図6 汎用画面拡大ユーティリティ

3.2.3 パソコンも拡大読書器も1つの画面に表示したい!

 原稿を見ながら、パソコンを操作するような場合、拡大読書器(CCTV)とパソコンの両方を使用しなければならないことがあります。このとき、CCTVとパソコンの両方にディスプレイ画面があると、場所を占めてしまうし、使い勝手がよくありません。パソコンのディスプレイ装置にCCTVの画面を表示したり、逆に、CCTVのディスプレイにパソコンの画面を表示したりできれば、スペースも使い勝手もよくなるはずです。CCTVとパソコンのディスプレイ装置が共有できないのは、画像を表示するための解像度とスキャン周波数が異なるためですが、最近では、テレビ画面を表示できるパソコンやパソコンの画面を表示できるテレビが増えてきたため、比較的簡単に併用ができるようになってきました。以下、ケース別にCCTVとパソコンの併用の方法を示します。

  1. CCTV用のテレビ・モニタにパソコンの画面を表示したいという場合:パソコンの画面を通常のテレビ・モニタ(NTSC方式のビデオ信号)に表示するためのスキャン・コンバータという装置を用意する必要があります。但し、この場合パソコンからの表示は解像度が落ちるため、画面が多少不鮮明になります。
  2. CCTVのビデオ信号もパソコンのデジタル信号の表示できる1台2役のディスプレイを用いる場合:CCTVとパソコンのモニタを共有したいだけならば、ビデオ入出力機能をもったデジタル・マルチスキャン・モニタを選択するのがよいでしょう。このタイプのモニタは、通常、スイッチを使ってTVやVTRの出力とパソコンの出力を切り替えて使えるようになっています。
  3. デジタル信号方式のCCTVを用いる場合:CCTVの中には最初からパソコンとの接続を前提にして開発されたものもあります。「Aladdin Genie Pro」(Telesensory製;http://www.telesensory.com/)はその一つです。なお、「Aladdin Genie Pro」は、SVGA、S映像、NTSCの3種類のビデオ出力が選択できます。
  4. パソコンの画面にCCTVの画像を表示し、CCTVの画面を見ながら表計算をしたり、CCTVの画像をコピーしてワープロに貼り付けたりしたい場合:ビデオ・キャプチャー機能があるパソコンを用いるか、パソコンにビデオ・キャプチャー・ボードを増設する必要があります。AVパソコンと呼ばれている、テレビやビデオ等の入出力機能のある機種は、この機能を標準で搭載しているものです。このようなパソコンであれば、パソコン本体のビデオ端子にCCTVをケーブルでつなぎ、ビデオ表示用のソフトを起動すれば、CCTVの画面がパソコン上に表示されます。画面を分割して、例えば、右上にCCTVの画面を表示させながら、ワープロを打ったりすることが可能となります。また、CCTVの画面をコピーして、ワープロ等に貼り付けることも可能です。さらに、動画を記録することもできます。なお、最近ではデジタル・ビデオ(DV)の編集機能を持つパソコンがありますが、CCTVのビデオ信号は現状ではアナログが多いので注意が必要です。デジタル信号をアナログに変換するためのメディア・コンバータ(http://www.sony.co.jp/sd/ProductsPark/Models/Current/DVMC-MS1_J_1/index.html)が必要になります。

 

4 マウスを使わないで操作する(操作に関するアクセシビリティ)

 前述したようにGUIを採用しているOSは、コンピュータの「操作」を具体物を扱うのと同じような比喩(持つ、移動する、開く等)で表現するという特徴を持っています。しかし、視覚障害のあるユーザにとっては、バーチャルに視覚表示されている「もの」(オブジェクト)をマウスなどで操作するのは困難です。将来的にオブジェクトの表示や操作がマルチ・モーダル(様々な感覚に訴えるもの)になり、例えば、触覚のバーチャル・リアリティが標準装備されるようになれば、この問題は解決できるはずですが、現状では実験段階と言わざるを得ません(振動するマウスなどが市販されつつありますが)。そこで、現状のGUIシステムの操作を補うための一般的な方法を以下に示します。

4.1 キーボード・ショートカット

 WinやMacには一連のポインタ操作をキーボード操作でショートカットできる機能があります。また、新たなショートカットを登録することも可能です。これらのショートカット機能を活用すれば、マウスを使わなくても、ソフトの操作ができます(ただし、すべての操作をキーボードで行えるわけではないし、音声フィードバックだけでショートカットを登録するのが不便であるという問題も残されていますが)。なお、音声や拡大表示を行う視覚障害ユーザ用のソフトでは、テンキーに特定のナビゲーション機能を持たせることで、操作性を向上させているソフトもあります。

4.2 スクリプトによる操作

 キーボード・ショートカットによる操作の限界を補うのが、スクリプト言語です。スクリプト言語は、DOSのバッチ機能を強化したようなもので、複雑な手順の操作もまとめて実行できます。OS標準のスクリプト言語としては、Winのウインドウズ・スクリプティング・ホスト(WSH)(マイクロソフト;http://www.microsoft.com/japan/developer/scripting/)、Macのアップル・スクリプト(アップル;http://www.apple.co.jp/applescript/)があります。

4.3 点字タイプライタ方式による文字入力

 点字のタイプに慣れたユーザは、文字入力の際に、点字タイプライタの入力方式を好む場合があります。そのような場合、通常のキーボードから点字入力を行えるようにするドライバ・ソフトが活用できます。ドライバ・ソフトについては、こころWeb(http://www.jeida.or.jp/document/kokoroweb/chap10/kkr10d1.html)等で紹介されています。また、点字入力が可能か否かをチェックするソフト「BR-KEYCHECK」(日本ライトハウス点字情報技術センター;http://www.oadg.or.jp/accessibility/index.htm#brkey)も公開されています。

4.4 音声による操作

 日本IBMの「ViaVoice(ヴィア・ヴォイス)」(http://www.ibm.co.jp/voiceland/)の普及に触発されて、日本語音声認識技術への期待が高まっている。音声認識技術の精度が高まれば、マウス等のポインタ・ディバイスやキーボードによる操作を音声で指示できるようになります。例えば、高知システム開発では、スクリーン・リーダーと組み合わせて利用できる「ボイスマネージャ」(http://www.aok-unet.ocn.ne.jp/text/voicem.htm)を製品化しています。

4.5 専用ボタンによる操作

 パソコン本体やリモコンのボタンに一連の操作を登録することが可能な装置もあります。例えば、ワープロを使うときには1のボタン、メールを書くときには2のボタンという風に登録しておいて、利用するものです。

 

5 わかりやすい電子情報とは(情報表現のアクセシビリティ)

5.1 電子化された文書や書籍

a) 電子メディアの増加

 最近では、フロッピー、CD-ROM、インターネット等の電子メディアで本(情報)が供給される場合が増えてきました。これらの電子化された書籍は、事実上、いくつかの標準的な形式にまとまりつつあります。ソニー株式会社の電子ブック(http://www.ebxa.gr.jp/index.html)、株式会社ボイジャーのエキスパンド・ブック(http://www.voyager.co.jp/eb.html)、EPWINGコンソーシアムによるEPWING形式(http://www.epwing.or.jp/epwing/)、アドビ・システムズのPDF(Portable Document Format)(http://www.adobe.co.jp/products/acrobat/main.html)等が代表例です。これらの電子形式に対応した電子出版も増えており、小説だけでなく、各種辞書類、地図等があります。これら電子化された書籍は、上述のスクリーン・リーダーや画面拡大ユーティリティで音声や点字にすることが可能です。

b) 読書用ブラウザ

 電子化の普及に伴い、印刷物ではなく、パソコンを使って読書をするためのブラウジングソフトも出てきています。例えば、株式会社ボイジャーの「T-Time」(http://www.voyager.co.jp/T-Time/index.html)や???等です。これらの読書用ソフトは、情報の表示機能に重点が置いてあり、文字サイズやフォントの変更はもちろんのこと、行間隔、文字間隔、段組みが変更できます。また、縦書きへの対応、ルビ、そして、付箋の機能もあり、ロービジョンのユーザには便利です。なお、これらの多くはインターネットで標準となっているHTML(Hyper Text Markup Language)形式に対応しているため、ホームページを自分の好きな形式で表示させることも可能なわけです。

図7 読書用のブラウジング(閲覧)ソフトの例

c) 電子出版

 アドビ・システムズがポストスクリプト技術を基盤に開発したPDF(Portable Document Format)は、HTMLよりもレイアウト情報の制御を詳細に行うことが可能な文書頒布用のファイル形式で、電子出版の標準になりつつあります。PDFファイルを表示させるソフトであるアドビ・アクロバット・リーダー(Adobe Acrobat Reader)は、無料で配布されており(雑誌の付録やホームページhttp://www.adobe.co.jp/で入手可能)、WinでもMacでも表示・印刷が可能です。すでに、ソフトのマニュアルや小説等がPDFファイルとして提供されています。PDFファイルの表示ソフトであるアクロバット・リーダーには、拡大機能が標準で用意されていますし、テキスト部分だけを取り出すことも可能で、音声での読み上げを併用する場合にも便利です。

5.2 音声や拡大でも読みやすい文章とは?

a) 見た目のレイアウトから構造の記述へ

 ワープロなどで文章を作成する際、多くの人は、どのように印刷されるかを念頭に置きながら、レイアウトをしていることと思います。「タイトルはセンタリングして、太字を使って目立たせよう」だとか、「章のタイトルの前後は1行空けて、頭に番号をつけよう」だとか、「箇条書きで表現するときには、字下げをして、中黒点(・)を先頭につけよう」などと自分なりに読みやすさを追求しているはずです。

 重要な部分を目立つようにしておけば、相手に読んでもらいやすくなりますし、読者にとっても、自分にとって必要な情報を探す際に便利です。例えば、章のタイトルに色をつけたり、前後に空白を空けておくと、その部分が目につきやすいので、必要な章を見つけだすのが簡単なのです。しかし、この見た目に依存したレイアウト方法は、視覚障害のある人には意味をなさない場合が少なくありません。では、視覚に障害のある人にもアピールできるレイアウトはどのようにすればよいのでしょうか?

 見た目のレイアウトの問題点は、文書の構造を文字サイズや色などの視覚情報だけで表現しているところにあります。そこで、視覚以外でも文章の構造がわかるように表現されていればよいわけです。例えば、章のタイトルや強調したい箇所に音声でも確認できるような印がついていればいいわけです。このように文章の構造を印をつけて記述することを可能にしたのが、マークアップ(markup)方式の文書形式です。

b) 文書の構造を記録できるマークアップ方式

 マークアップ(markup)とは、原稿校正の際の赤入れ(この部分をゴシック体にするとか、左寄せにするとかの指示)と同じような作業を、コンピュータのテキストファイルに対して行うことです。ホームページの記述言語として有名になったHTML(Hyper Text Markup Language)はマークアップ方式の代表例です。HTMLを例にとると、タイトルは<TITLE>という印(タグ)と</TITLE>というタグの間に書くようになっています。また、文字を太字にしたい場合には、「<B>太字</B>」というように太字にしたい範囲を<B>と</B>で囲むだけです。このように、決められたタグを使って、文章の各箇所に意味づけを行っていくわけです。ここで使われるタグは、どんなコンピュータでも互換性があるように標準的なテキストです。したがって、<TITLE>というタグがどこにあるかを探せば、タイトルが何であるかがすぐにわかるというわけです。

 タグで表現された文章は構造が明確になっているわけですが、見た目はわかりやすくはありません。しかし、このタグでマークされた文章を専用の表示ソフト(ブラウザ)で表示すると、タイトルは大きな文字でセンタリングされて表示され、<B>タグで指定された箇所は太字で表示されるようになっています。つまり、文章の構造と見た目を別々に扱っているわけです。このようになっていれば、章のタイトルだけを読み上げさせたり、作者が強調したい部分を音声でわかりやすく表現することが可能になります。また、文字の大きさや色を直接指定しているわけではないので、ロービジョンの人が見るときに、表示する文字サイズや色を自由に変更できる可能性が開けてくるわけです。

 マークアップ方式は、ホームページの記述言語として有名になったHTMLのみではありません。構造化言語を記述するための国際標準規格(ISO8879)として認定されているSGML(Standard Generalized Markup Language)、SGMLの利点を受け継ぎながらHTMLの簡便さも取り入れたXML(eXtensible Markup Language)、数学の表記に優れたTeX(テフ、テック)などがあります。最近では、ワープロなどのファイル形式にもHTMLやXMLが採用されるようになってきています。

c) アクセシブルな文書のデザインの必要性

 上述のマークアップ方式のデータ形式は、いずれも文書の構造が明示されており、なおかつ、特定のシステムや機種に依存せず使用できるという特徴があります。しかし、WWWのホームページ作成で普及したHTMLのように、構造の記述よりも視覚的な効果を優先してデザインされるケースが出てくる可能性は否めません。また、図や写真などのビジュアルな表現には必ず文章での説明も併記して欲しいわけですが、そうなっていない場合が少なくありません。そこで、アクセシブルなWEBデザインについて(http://www.jeida.or.jp/document/kokoroweb/tips/part1-1.html)注意が喚起されています。

 

6 電子化された情報の活用

a) インターネットは電子化された情報の宝庫

 印刷された情報は、視覚障害のある人にとってアクセスしにくいものが少なくありません。これに対して、電子化された情報は各自が自分の見え方に応じて加工することが可能です。電子化された情報は、バリアフリー電子図書(http://www.tokaido.co.jp/fukushi/fdbook/intro.htm)、光文社(http://www.kobunsha.com/kappa/)、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)、Barnes & Noble( http://www.barnesandnoble.com/)、パピレス(http://www.papy.co.jp/)、HONYA (http://www.honya.co.jp/index.shtml)、デジタルキヨスク(http://www.digitalkiosk.gr.jp/)等で入手することが可能です。例えば、青空文庫は、著作権が切れた作家の作品をボランティアが電子化し、インターネット等で公開しているものであり、文学作品等を無料で楽しむことができます。

 電子化された情報は、従来、標準テキスト情報だけのものか、もしくは、あるシステムに独自のものでした。これに対して最近、電子書籍の標準規格を策定しようとする試みがあります。電子書籍コンソーシアムの「eBook」(http://www.ebj.gr.jp/)やOpen eBook(http://www.openebook.org/)等です。

b) 電子化されていないメディアへのアクセス

 電子化されていないメディアへのアクセス方法としては、OCR(光学的文字認識装置)が有効です。視覚障害がある人のユーザ・インターフェースを考慮したものが、こころWEBにまとめて掲載されているので参考にしてください(http://www.jeida.or.jp/document/kokoroweb/chap14/kkr14p03.html)。

 

7 パソコンの操作をいかにして学習するか?

 視覚障害の人が新たにパソコンの使い方を学習したい場合にどうすればよいのでしょうか? 視力障害センターや視覚障害リハビリテーションセンター等の公的機関の他に、ボランティアでパソコン教室を開催している団体もあります。例えば、日本サスティナブル・コミュニティ・センターの「視覚障害者のためのインターネット講座」(http://www.sccj.com)、京都福祉情報ネットワーク(Tel:075-257-7675)、SPAN(視覚障害者・パソコン・アシスト・ネットワーク)(http://www.eastech.co.jp/span/)、目の不自由な人たちによる目の不自由な方々のためのパソコン教室「スラッシュ」(http://www.slash.win.ne.jp/index.html)、日本ライトハウス盲人情報文化センターを拠点にして活動している「ボイスネット」(http://home.inet-osaka.or.jp/~jyobun/)、新潟視覚障害者パソコンサポートボランティアの会(http://www.normanet.ne.jp/~pniigata/)等があります。また、日本障害者協議会(JD;http://www.jdnet.gr.jp/)は、パソコンボランティア支援センター(http://www.psv.gr.jp/)を開設しています。

 パソコン教室に参加したり、買い物に出かけたりするのに自信がない場合には、地域のボランティアセンター等に誘導を依頼することが可能です。詳しくは、JBOS(全国視覚障害者外出支援連絡会)(http://www.jp.ibm.com/accessibility/ayumi/guide.html)を参考にしてください。

 最後に、視覚障害に関する総合的な情報を提供しているホームページとして、中村 典嗣氏による「視覚障害に関するガイドページ」(http://www2s.biglobe.ne.jp/~Nori/chime/vision.html)、小田浩一氏による「視覚障害リソース・ネットワークVIRN」(http://www.twcu.ac.jp/~k-oda/VIRN/)を紹介しておきます。