ワンポイントアドバイス

ロービジョンのビデオ、カメラ

1 ロービジョン・エイドとしてのモニタ画面付きビデオ・カメラの活用

 シャープの液晶ビューカムの登場以来、モニタ画面付きビデオ・カメラが各社から販売されるようになった。ビデオカメラは、ズームやオートフォーカス等の機能があるため、単眼鏡と拡大読書機を兼ね合わせたような役割を果たしてくれる。また、モニタ画面を用いれば、より広い視野を確保できるので、中心暗点があるロービジョンの人にも適している。一般用なので操作性の面では問題もあるが、単眼鏡や拡大読書機にはない便利な使い方も可能である。例えば、録画機能である。ビデオテープをセットしておけば、記録しておきたい場面を簡単に録画できる。


モニタ画面付きビデオカメラの例(http://www.sharp.co.jp/sc/excite/viewcam/dv_index.htm)

 

 屋外では、遠景を楽しんだり、時刻表や乗り物の行き先表示を確認したりできる(時刻表等を書き写す必要がある場合には録画しておくと便利である)。また、デジタル方式のカメラだと、光学ズームの他にデジタルズーム機能(画像処理によるズーム)があるため、天体観測にも活用できる。さらに、接写レンズ等を用いれば、動植物の細部の観察にも利用できる。
 屋内では、研修や講義等で黒板等の表示を見たり、実習場面等で利用することが可能である。さらに、必要な場面を録画しておいて、事後学習に活用できるという利点もある。

2 デジタルカメラの活用

 デジタルカメラも便利なエイドである。従来のフィルム式と違って仕上がりをその場で確認できたり、撮り直しが簡単である。また、モニタ画面が付いているものが多く、ファインダ式と比べ、中心暗点のあるロービジョンの人にも使いやすくなっている。さらに、デジタルカメラの画像データはパソコンに取り込むことが簡単にでき、パソコン上で画像処理をし、見やすい画像を作ることが可能である。

 

3 テレビやビデオを活用する際の工夫

 テレビやビデオは重要な情報源であり、レクリエーションにもなる。テレビやビデオを視聴する際、ロービジョンの人にとって最も困るのは、画面に表示される文字等が小さすぎたり、コントラストが低かったり、提示される時間が短かったり、部分と全体の関係が捉えにくかったりする点である。これは、ロービジョンの時空間特性の低下によるもので、網膜像の拡大、コントラストや提示時間の調整を行う必要がある。これらの課題を解決する最も簡便な方法は、画面を一時停止し、時間をかけて、必要なら画面に目をより近づけて見ることである。

 

4 字幕を読む工夫と副音声の活用

 外国語の映画等を見る場合、字幕を読みとるのが大変だという問題もある。字幕を読むのが大変なので、日本語の映画か吹き替え版しか見ないというロービジョンの人もいるほどである。外国語の映画の場合、ストーリーをつかむためには、言葉の意味がわかる必要があるが、俳優自身の声も聞いてみたいという要望もある。従来のビデオテープのソフトは、字幕版か吹き替え版かを選択する必要があり、字幕を読みとるのが困難で外国語にも自信がない場合には、吹き替え版を選ばざるを得なかった。ところが、DVDやケーブルテレビ等では、音声も字幕も日本語/外国語の音切り替えが可能なソフトがあり、必要に応じて選択することができるようになった。ドラマ等で状況がつかみにくい場合、副音声を使った「音声解説」を利用するのも楽な方法である。

 

5 ディスプレイを選択する際の注意

(1) コントラストとグレアへの配慮

 テレビやビデオを選択するときに重要なのは、ディスプレイの選択である。最近はブラウン管以外に液晶のものや眼鏡のようにかけて使うヘッド・マウント・ディスプレイ(HMD)もある。ディスプレイを選択する際に重要なのは、コントラストである。見やすいコントラストが表示できるかどうかを確認する必要がある。なお、ディスプレイのコントラストは室内の照明環境でも変化するので注意が必要である。画面への映り込みがあったりするとコントラストは低下する。特に、まぶしさを感じたり、グレア・ディスアビリティがある人は、照明環境に注意が必要である。

(2) 視距離の調整

 ディスプレイを選択する際にもう一つ注意する必要があるのは、視距離である。ロービジョンの人にとっても最も簡便に網膜像を拡大する方法は、接近して見ることである。ディスプレイを選択する際、接近しやすいデザインのものを選ぶ必要がある。また、ディスプレイを設置する際にもこの点を考慮しなければならない。なお、最近、HMDが注目されているが、HMDの場合、視距離が固定されているため、通常の方法では網膜像を拡大することができないことに注意しなければならない。例えば、あるHMDの場合、2メートルの距離に62インチの像ができるようになっている。これは、視角で約45度に相当し、14インチのディスプレイを約45cmの距離で見ているのと同等ということになる。字幕の文字の大きさは14インチのディスプレイで1cm程度なので、前述のHMDの場合、1.3度程度の視角になる。つまり、字幕まで読みたい場合、1.3度程度の文字が読める視機能を有していなければ有効でないということになる。ちなみに、通常の14インチのディスプレイを想定した場合、視距離を20cmに近づけると画面上で1cmの字幕の文字は視角約2.8度、10cmだと視角約5.7度にまで拡大できる。

 


HMDの例「Eye-Trek」(http://www.olympus.co.jp/LineUp/HMD/fmd011f.html)

(3) ヘッド・マウント・ディスプレイ(HMD)を用いた拡大装置

 アメリカでは、HMDを用いた拡大装置が市販されている。Enhanced Vision Systems社(http://www.enhancedvision.com/)のMAXPORT(http://www.enhancedvision.com/p_maxport.html)や JORDY (http://www.enhancedvision.com/p_jordy.html)、Low Vision Enhancement System(LVES)(http://www.sunyopt.edu/suny/clinic/lowvision/lvesinfo.htm;http://www.sightsystems.com/elvis.htm)、Innoventions社(http://www.magnicam.com/)のMagni-Cam(http://www.magnicam.com/head.htm)等である。これらの製品はビデオカメラとHMDを組み合わせたもので、カメラのズーム機能によって網膜像を拡大することが可能であり、読書や歩行場面で用いられている(Geruschat, D.R. et.al 1); Ortiz, A. et al 2))。

 

文献

  1. Geruschat,D.R., Deremeik,J.T., and Whited,S.S. :Head-Mounted Displays - Are They Practical for School-Age Children?, Journal of Visual Impairment & Blindness, 485-497, 1999.
  2. Ortiz,A. Chung,S.T.L., Legge,G.E., and Jobling,J.T. : Reading with a Head-Mounted Video Magnifier, Optometry and Vision Science, Vol.76(11), 755-763, 1999.