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伊藤清三「ルベーグ積分」裳華房・数学選書4第35版p.136の補足


(2018/01/12):「実数の区間上で定義された有界変動関数が, 2つの非減少関数の差で書ける」ことは基礎解析でよく知られていて, そのことを表題の教科書の当該ページで用いています. ただ,教科書は,上記基本事項の証明で標準的に用いられる具体的な非減少関数 の性質もあとで使っていて,論理ギャップが生じています.

本webページは20年以上前から置いてあったページですが,20年たった最近になって 教科書上記のページに疑問を持つ複数の方々と出くわす経験をしました. 積極的に布教してないのに複数出くわすことは, この件で困る諸氏が常に無視できない人数おいでであることを意味する と推測したことと,自己解決されたかたが結論をまとめたブログを 書いて下さったので,リンクのため,久々に補足更新します.


(1996/12/20): 教科書(伊藤清三「ルベーグ積分」裳華房・数学選書4)第35版p.136の 論理ギャップを津田稔朗君が見つけました.

p.136 (19.4) だけでは関数 F_1, F_2 は一意に決まらないので, (19.5) の全変動は定義が確定していない.F_1, F_2 は,著者が p.134 で引用している一松信の教科書の該当個所で選ばれている関数にとらなければならない. 伊藤清三の教科書はその(短いとはいえない)定義を省略してしまったことになる. このことは, p.148 l.1-3 の Lebesgue-Stieltjes積分の定義の際に必要になる. 教科書は「容易にわかる」と書いているが,津田君と検討した範囲では, 間違ってはいないが容易ではない.

(20051007追記):伊藤清三に引用されている一松信の教科書は新版に 変わるにあたり内容を移動し減らしたため, 伊藤清三が引用している箇所が無くなった.

(20180112追記):一松信の旧版の教科書が手近に無かったため,内容補充を 怠っていたところ,複数の筋から,この箇所の疑問を聞きました. そのうちのお一人Gota morishitaさんが, 問題点と教科書の当該補助定理の主張の修正を検討されて ブログにまとめました

要点は,実数の区間[a,b]上で定義された有界変動関数f: [a,b]→Rに対して 部分区間[a,x]の全変動V(x)に よってV: [a,b]→Rを定義すると, VとV-fはともに非減少関数なので,伊藤清三の補助定理が(漠然と) fが2つの非減少関数の差で書ける,としているところを, 「f=V-(V-f)と書ける」 と明示的に置き換えれば,後々使う箇所で問題は起きない,ということです.

教科書当該ページの補助定理の主張は非減少関数とだけ書いてあるため, たとえば2つの非減少関数に同じ不連続非減少関数を加えると, 補助定理の主張を満たしているけれども, 元の有界変動関数が連続でも2つの非増加関数は不連続になり, 教科書の後で補助定理を使う際に支障が生じていました. 上記ブログの内容によってこの不備が解消しました.

補助定理の主張が不正確だった上に,有界変動関数が単調関数の差に書ける 事実を引用で済ませたところ,引用先教科書の改訂で有界変動関数の記述が消えた (紙の本の間のリンク切れ!)ために, 最近になってこの問題が勉強の支障になっている,ということかもしれません.


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